北海道夏の旅

2004.6.22-25 北海道 道北
何か僕は台風と縁が有るのかも知れません。沖縄に行った時も台風に見舞われるし、今回も北海道の6月には何年も来たことがないと言うのに、昨年の6月、そして今年の6月もぶつかるなんて、台風が僕を狙っているとしか考えられません。天売島へ渡ろうかなと計画していたのですが羽幌で2日間足止めになりました。雨の降っているときは羽幌温泉にゆっくり浸かりのんびりしました。雨が止むと、サロベツ原野に行き夏鳥と花を探しに奥深く入りました。サロベツ原野に昨年からタンチョウの番が入り今年は繁殖活動に入り、現在抱卵中とのことで嬉しい話もビジターセンターで話を聞きました。大切に見守ってあげたいですね。
3日目台風は過ぎ去ったのですが波のうねりが強く台風がきている時よりも強く、フエリーの事務所に問い合わせたら朝1便は出航するとのことで、これ以上待てないので乗り込みました。最近船酔いは自信がないのですが、案の定下船の時、危なく戻すところでした。羽幌で食べたウニを海に捨ててしまうところでしたが、何とかくい止めました。この辺が僕のアニマル的な離れ業だと思います。天売島に着くと、I民宿のバスが待っていました。お客様は台風で全員キャンセルされたそうで、お客は僕一人でした。帰る日まで僕一人でしたのでこのバスが赤岩や観音崎まで行ってくれて本当にここのご主人の運転手に心から悪いなと思いながらバスのお世話になりました。台風の後も風が強く、島を一周しても藪のなかでノゴマが鳴いているくらいで小鳥は表に姿をみせることもありませんでした。仕方なく宿に戻り、老夫婦の宿の普請の手伝いをしました。障子の開け閉めが固いので、すべるようにしたり、入り口の戸の車の動きが悪いので、取り替えたりしているうちに僕はここの宿の息子のような気がしてきました。事実うまく修理ができると、なんでもやって上げたくなるものです。「もっと、何か普段困っていることは有りませんか?」調子の良いのも困りものです。
しかしその夜から大好きなウニが多くなったことはこの調子の良いところが大きな要因かもしれません。食事は6時に済ませていよいよウトウの撮影のために赤岩まで宿のバスに一人乗り込みました。宿の主人の運転は凄い飛ばし方で細い道をブレーキをかけながら飛ばします。島は殆ど一方通行ですから対向車はないのですが左側は断崖絶壁のところが多く、僕はカメラと三脚を思わず何回も握り締めたほどです。風が強いのに濃霧が張り出し視界も悪く、バスは何処を走っているのか分かりません。
スピードを上げてきたために、だいぶ早く島の最西部の赤岩に到着しました。絶壁にたどり着く斜面には至る所にオオセグロカモメやカラスがウトウの餌を運んでくる帰巣を待ち焦がれておりました。彼らはウトウが嘴で運んでくるイワシやオウナゴを奪い取るために巣穴のところで待っているのです。ギャアギャア啼き叫び今や遅しと宴が開かれるのを待っておりました。空が暗くなり始めるとウトウがポツリポツリと戻って来るのが認めれました。そして突然ゴーっと大風の大きく唸るような声がしました。ウトウの大群の帰巣です。次から次へと海上から渡っているようです。懐中電灯で夜空を照らしますと、沢山のウトウが山の斜面の上部の方へ向かっている姿が浮かび上がりました。足元を見るとカモメたちがウトウを追っておおりました。ウトウはカモメたちに咥えている何匹もの小魚を奪え捕られる前に、待っている雛たちの口に運ぶため死に物狂いでその巣穴に体当たりで入り込みます。殆ど闇の中でカモメとウトウが動いているので良く自体がはっきりしませんでした。カモメが動いた時、そこにウトウがいることが分かりそれが分かったときはもう遅く、カモメがウトウを追っている後姿だけしかありません。あのウトウが沢山小魚を嘴で挟んでくる姿を撮影しようと思っていたのですが、この暗闇の中の餌の奪い合いの凄まじさ、壮絶な戦いは闇夜も手伝い、ただただ撮影しようと言う気持ちより驚愕の連続の方が大きく、カメラを持つ手が震えてくる程です。まして海よりの風が強く、濃霧が霧雨に変わり、カメラレンズが濡れ、水滴が流れ落ちてくるくる始末です。今眼下にあるのは生存競争の地獄絵ではないでしょうか?ウトウの動きは生易しいものではありません。地面に着地したら、それこそ鼠より早く駆け抜け、自分の雛の待っている穴の中に駆け込まなければなりません。このすばしこい速さと闇夜の世界の中で初日はシャッターを全く切れませんでした。懐中電灯で姿を見つけ、カメラのピンを素早く合わせ
シャッタを切るだけなのですが、この懐中電灯の扱い方が実に難しいのです。強力なヘッドランプがあれば多少助かったのでしょうが完敗でした。宿の主人に電話をしてバスで迎えに来ていただきました。「写真を撮る方は何年もきていますよ」ご主人の慰めとも取れる言葉もうわの空でした。僕みたいに始めて来た者は無理だととも受け取れますが、明日は必ず撮影してやろうと雑草魂みたいなフアイトが悔しい感情ととともに湧き出てきました。だいたい本日はウトウの帰巣のとき嘴に小魚を咥えてくるウトウの割合が1割にも満たないことをご主人に話しをすると海が荒れていてウトウにとっても不漁ではなかったのかと言うのがご主人の意見でした。だから餌の争奪戦が激しかったのかと理解できたような気がしました。オオセグロカモメ、カラスに混ざって自分の仲間の餌を取れなかったウトウが餌を横取りしようと奪い合いに入り込んだのですから、如何に壮絶な戦いであったかお分かりいただけるのではないかと思います。
翌日早朝、天売島を一周する船に乗り込みました。オロロン鳥(ウミガラス)とケイマフリの撮影が目的でしたが波のうねりが激しく漁港を出る前からガイドさんに船酔いはしないほうですか?と聞かれた。オロロンがでれば船酔いなぞしている暇はないよと強がりを言いましたが、自信はまるでありませんでした。ケイマフリは簡単に見ることができるが、オロロンのほうは運が良ければ見ることができるとのガイドの言葉に不安を感じましたが、しかし20分後その不安は一掃されました。オロロンが波の間から3羽餌を探している姿が確認できました。船は更に進み、オロロンも全くこちらを意識していないようで距離10Mから更にこちらに向かってくるではありませんか。大きい波の上下に揺られるオロロンをこちらも揺れる船からレンズのピンを合わせる難しさ、ご想像ください。更に更にオロロンはこちらに向かってきて2−3Mの距離になりました。オイオイ、もっと向こうに行ってくれないか。こんなに近くては貴方の綺麗な黒と白の姿が映らない!僕は500ミリ装着のカメラを投げ出し、バックの中にしまいこんでいた小型のデジカメで2Mちかくまで接近してきたオロロンの姿を撮影しました。オロロンは天売島だけに生息する数も十数羽のみの絶滅危惧種であるがこの幸運な出会い、僕には
大きなツキがあることを感じざるをえませんでした。大きな波のうねりに翻弄される小船に乗ってもオロロンを前にすると船酔えなどは全く忘れてしまいました。ケイマフリのほうが簡単にみることが出来るといっていたガイドの言葉とは逆にケイマフリは遠くに見えるだけで撮影するには少し距離がありました。
翌日の朝、もう一度この船に乗り込みましたが、海はウソのように静かで、ウニを採る漁師が朝早くから沢山海に出ているためオロロンの姿は何処にもありませんでした。やはり言われるように難しい海鳥だとそのとき悟りましたが、改めて昨日の幸運な出会いをかみ締めました。
その夜、再びウトウの撮影に大きなバスに乗って出かけました。
勿論、乗者は僕一人でした。帰りは徒歩で帰宅すると言ってもご主人は気にしないで気にしないで待っているからと野球の中継にスイッチを合わせておりました。
今回は作戦を昨夜と違って変えました。よくウトウの動きを観察して撮影は極力避けるようにしました。ウトウの動きがよく分からなくては撮影どころではありません。それにウトウを見にくる沢山の旅行者の方で身近にいる方にお願いをしました。「僕はカメラマンでウトウの撮影をするものですが餌を嘴で運んでくるウトウを見つけたら教えて頂けませんか」
僕一人で沢山のウトウの中から餌を運ぶウトウを探すよりも沢山の方に見てもらって探してもらったほうが早いと思ったからです。
確かに僕の予測は当たりました。ウトウを見にきてくれた沢山の方が「あっ今飛んできたウトウが此処に下りた。今穴に入って行った。」とかひとつひと教えてくれるようになった。そのうち飛来してどちらに着地してどの方向にいくものが多いかよく分析して教えてくれる人もおりました。一番良かったのは「この壁側にはカモメが一羽もいません。従ってウトウもゆっつくり餌を運ぶことがあります」と助言してくれた方がありました。確かにそこの場所で待っているとウトウが餌を運ぶ姿を見ることができました。カメラに電源を入れてやっと最初の一枚のカットがそこで撮れました。今夜は海も静かでウトウが魚を捕ってくる姿も昨夜よりは比較にならないくらい多いように見えました。40万羽のウトウの帰巣、この迫力残念ながら夜の闇の中の出来事で映像での再現はとてもできません。
しかし何羽か僕の身体に当たってしまったこと、そして帰途のバスが道路上に沢山のウトウがうじゃうじゃいて容易に動けないこと等を述べればご想像できるのではないかと思います。ブウブウとバスのクラックションを鳴らしてもなかなか動こうとはしませんでした。雛に餌を与えた親鳥たちはいたるところで休憩しておりました。 
「良かったね。撮影できて。」
「ラッキーラッキー」
帰宅のバスは心も軽かった。
「親爺さん今夜はビールでも飲もうか。」
「そうですね。お客さんに昼間手伝って頂いたからご馳走しますよ。」
「いやいや僕の感謝の気持ちで、乾杯しましょう。」



 ウトウ
上嘴基部に上を向いた淡黄褐色の突起部があり、これで土の中に穴をあけ巣をつくる。ウトウより大きいカモメ類は入ることができない。写真のように頭を上げていることは稀で脱兎のごとく我が子の待っている巣穴に飛び込んでしまう。


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