惑星運動
天体の運動の基本となるのは、惑星運動に関するケプラーの法則である。
ケプラーは、当時最大の天文観測家であったチコ・ブラーエの16年間に渡る火星の観測データにより惑星運動に関する3つの法則を発見した。
第1法則と第2法則は1609年に出版された『新天文学』、第3法則は1619年に出版された『世界の調和』の中に記されている。
第1法則(楕円運動の法則
惑星の軌道は太陽を焦点とする楕円である。
第2法則(面積速度の法則)
惑星と太陽とを結ぶ動径の描く面積速度は一定である。
第3法則(調和法則)
諸惑星の公転周期の2乗は、太陽からの平均距離の3乗に比例する(比が一定)。
太陽から遠い惑星ほど、距離の2/3乗に比例して公転周期が長くなる。
惑星の楕円軌道の上で太陽に最も近い点を近日点といい、最も遠い点を遠日点という。 遠日点距離と近日点距離の平均値が楕円の半長径であり、太陽と惑星の平均距離である。
第1法則は、惑星が太陽をその一つの焦点に持つ楕円軌道上を運動することを示している。
ケプラー以前のすべての天体運動論において、天体の軌道として円軌道以外は考えられたことがないことから見ても、ケプラーが第1法則で楕円軌道を示したことの意義は大きい。
惑星の軌道の離心率は0.1(円の離心率は0)より小さい場合が多い。これは楕円の半短径が半長径より0.5パーセント短いだけてある。
その形は円とほとんど同じであり、見分けるのが難しい。冥王星と水星以外は離心率が非常に小さい。
各惑星の離心率は次の通りである。
水星0.2056、金星0.0068、地球0.0167、火星0.0934、木星0.0485、土星0.0555、天王星0.0463、海王星0.0090、冥王星0.2490。
第2法則は、惑星が太陽を公転するとき、太陽と惑星を結ぶ動径が一定の時間には一定の面積を描くことを示している。
円運動の速度は等速でよかったが、楕円軌道であれば、楕円を周航する速度がどのように表わされるかが問題であった。
ケプラーは面積速度という新しい速度を考えだした。
惑星が軌道上のどこにあっても等しい時間には等しい面積をおおうというのがこの法則の内容である。
面積速度の法則はケプラーの発見であるが、その力学的意味を明らかにしたのはニュートンである。
そして面積速度の法則は、惑星の力が太陽に向かうことを示している。逆に、太陽に向かう力が惑星に働けば、惑星の運動は面積速度の法則に従うのである。
惑星に働く力が太陽に向かうとき、面積速度の法則が成り立つと同時に、惑星の運動は太陽を含む一つの平面内で起こることになる。
各惑星の軌道傾斜は次の通りである。
水星7.0度、金星3.4度、地球0度、火星1.9度、木星1.3度、土星2.5度、天王星0.8度、海王星1.8度、冥王星17度。
冥王星以外は傾斜角度が小さい。
各惑星の軌道面は黄道面で代表してよく、黄道面を太陽系の広がりの平面とみなすことができる。
ケプラーの第ゼロ法則
惑星の軌道面が太陽を通る平面であることは、ケプラーの第ゼロ法則と呼ばれることがある。
第1法則は惑星の軌道が太陽を焦点とする楕円であることを主張している。
楕円は平面曲線であるから、この主張の中に軌道の平面性は含まれているわけである。
論理的にいえば軌道の平面性を使って軌道が楕円であることが導かれるのである。
第ゼロ法則と第2法則とが同一の原因「太陽に向かう引力」によるわけであって、まとめて角運動量の保存の法則と呼ばれている。
第3法則は、諸惑星の相互に異なるケプラー運動を統一する法則であるために調和の法則と言われている。
調和の法則は、惑星の平均距離(楕円軌道の半長径)の3乗を公転周期の2乗で割った値が全ての惑星について同じになることを意味している。
各惑星の公転周期(a・天文単位)と平均距離(P・年)の関係は、各数値の常用対数(log a, log P)をとりグラフに表わすと、これらの関係は見事に一直線となり調和の法則が成立していることがわかる。
調和の法則により計算をすると、地球の赤道を円軌道とする人工衛星の速度は、毎秒7.90kmになる、これを「第一宇宙速度」という。
地上から物体を打ち上げた場合、物体がこの速度に達しないと地上に落下する。
人工衛星となるためには第一宇宙速度以上で打ち上げられることが必要である。
人工衛星の軌道は地球の中心を焦点とする楕円となる。
ケプラーの時代は、水星、金星、地球、火星、木星、土星の6惑星しか知られてなかったが、その後天王星、海王星、冥王星の3惑星が発見された。
当然のことであるが調和の法則がこれらの惑星にも成り立っている。
調和の法則は、力学的には太陽と惑星間の相互引力つまりニュートンの万有引力である。
万有引力は単に太陽と惑星の間に限らず、太陽の万有引力によって太陽を公転している全ての天体に適用される。
太陽系を遠く離れて、2個の恒星が相互の引力で共通重心のまわりを公転している連星という天体が多数発見されている。
連星を形成する2星の明るいほうを主星、暗いほうを伴星と呼ぶとすると、主星と伴星の間にも万有引力が働いていることが確認されている。
万有引力と呼ばれるのは、単に太陽と惑星の間に限らず、主星と伴星、人工衛星や惑星どうしの間、全てのものに働いているからである。
宇宙の全ての物質は互いに引力を及ぼしあっており、庭の小石にも万有引力が働いているのであるが、それは到底測定できないほど微小な値である。
ケプラーは自ら発見した法則の力学的意味を理解することはなかったが、半世紀以上後になってニュートンが万有引力として明らかにしたのである。
惑星が太陽を公転するのは太陽と惑星の間に働く万有引力のためで、この時ケプラーの惑星運動の法則が成立するわけである。
月や惑星の複雑な動きは、万有引力の法則によって、その規則性、不規則性もほぼ完全に説明される。
ニュートンによってギリシャ以来の幾何学的な太陽系モデルは、力学的なモデルとなったのである。
万有引力は自然界における基本定数の一つである。
2つの物体に作用する万有引力は、その2物体の質量の積に比例し、2物体の距離の2乗に反比例する(逆2乗法則)。
楕円運動の近日点と遠日点における惑星の加速度は、それぞれ近日点距離、遠日点距離の2乗に反比例する。
万有引力は「瞬間力」という一つの特色がある。
惑星に働く万有引力は、その瞬間の太陽と惑星の相互配置できまる。
このことは太陽と惑星が共通の時刻を持つことを意味している。
ニュートンが偉大であったのは、地球がりんごを引っぱる力も、地球が月に作用している力も、太陽と惑星の間に作用している力も、すべて同じ力であると考えたことである。
月に地球からの引力が作用していなければ、月が地球のまわりをまわり続けることはない。
落下の法則
落下の運動はガリレオによって研究されたものであり、地上の物体はその材質、形、大きさ、重さによらず、共通にG(万有引力定数)の加速度で落下することを発見し、実験によって落下の法則を導出したのである。
慣性の法則
物体に力が働かなければ等速直線運動を行う、というこの法則もガリレオの発見になるものである。
落下する物体は直線運動であるが、地球の重力が働いているので等速ではない。
等速円運動の法則
等速円運動の加速度は、速度の二乗を円の半径で割った値になる。これを等速円運動の法則という。
等速円運動は等速であるが、直線運動でないので何かの力が働いているのである。
物体に力が働けばその方向の加速度をもつ、運動する物体の質量が問題とならない場合には、力と加速度を混同して使用するのが便利である。
円運動が等速でない時、例えば速度が減少していれば速度の方向と反対方向に力が働くことになる、これを接線加速度という。
等速円運動を行う物体が、ある点で円軌道を行うための加速度は円の中心方向に向かう力であり、これを法線加速度という。
惑星の楕円運動は不等速円運動であるが、楕円の近日点や遠日点前後の惑星の運動は等速円運動とみなすことができる。
惑星が近日点や遠日点において、太陽の方向に向かう加速度は、等速円運動の法線加速度を求めると同じ方法で求めることができる。
等速円運動を適用した楕円運動の、近日点と遠日点における加速度はそれぞれ近日点距離、遠日点距離の2乗に反比例することがわかる。
楕円運動における“エネルギー保存”の法則
惑星がある速度で運動している時、この速度を2乗した値の半分を単位質量当たりの運動エネルギーという。
動径によりポテンシャルエネルギーを持つことになる。両エネルギーの和を惑星の単位質量当たりの力学的エネルギーという。
楕円の任意の場所において力学的エネルギーは同一の値を保有している。