目次

ごあいさつ

基調講演

市民・企業・行政からの意見発表

分科会報告

 第1分科会

 第2分科会

 第3分科会

 第4分科会

 第5分科会

 第6分科会

 

基調講演

テーマ;「大学と環境―持続可能な社会を目指して−」

日本大学副総長・生産工学部学部長 大谷 利勝氏

 おはようございます。

 環境シンポジウム2002千葉会議の開催でこれが冒頭の基調講演でございます。私は環境の専門家で はございませんが、開催校であること、参加者が私どもが参加している学会とは異なり、一般の方も参加されるということで、お引き受けした次第です。 これから話す内容が適切でない点もあろうかと存じますが、環境問題に関心と理解を深めるのに役立てば幸いです。  水、大気、土壌汚染項目が分かれておりますが、これらは相互に関連があり、話が入り乱れる場合があると思いますお許しいただきたいと存じます。

1.水   

 地球は、太陽系の惑星の一つであり水があります。地球の半径が約6300kmで、太平洋を越えて成田からロスアンゼルスまで約8000km、太平洋の深さが平均約4000mと言われております。千葉県も海に面しており、眺めると太平洋は広大であり、「海は広いな大きいな・・・」という歌もあります。太平洋を直径80cmのテーブルに例えますと、太平洋の水の厚さは0.4mmとなります。テーブルの上にお茶をこぼしても水滴の厚さは1〜2mmあるのではないでしょうか。したがって、太平洋の水深はテーブルにこぼした水滴より薄いということになります。こぼしたお茶でも半日もすると乾いてなくなっていることが多いでしょう。これらから水は蒸発と平均1000mm/年という降雨との微妙なバランスの上に成り立っており、これが崩れると地球の水もなくなり、他の惑星のようになる恐れがあります。

 このところ異常気象が報じられています。アラスカでは島周辺の氷が融けて、海岸の浸食が始ま り、護岸工事をするより島民を移住させた方が安価であるとして、全島放棄して住民は移住しまし た。千葉県でも海面が上昇すれば、大きな被害が出るでしょう。本キャンパスの桜も毎年4月の第2 土曜日に近隣住民に開放して花見を行って来ましたが、本年は開花が早く3月中に実施しました。 日本は水に恵まれた国とされていますが、関西では夏の渇水対策は古くから行われています。日本 でもガソリンより高価な飲料水が大量に販売されています。

  中国では昔から「水を治める者は国を治む」という言葉があり、「う」が水を治めて帝王になった 例もあり、治水は大変重要な課題でありました。最近では、北京の水不足が報じられ、地下水の水 位が低下し、黄河上流域での砂漠化が進んでいることも伝えられております。

 2.大気

 地球の平均気温は15℃と言われており、これは太陽からの入射と地表からの放射とのバランス の結果であります。もし大気がなければ、もっと放射が大きくなり気温が下がるとされています。最近温暖化が問題となっていますが、これが最も早期に影響が及ぶとされています。

  温室効果の最も大きいのは水蒸気であり、温室効果ガスは水蒸気との相互作用で温室化が進むと考えられています。温暖化ガスは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)等で、この他オゾン層を破壊するフロン類が問題となっています。京都議定書は先進国が気候変動を緩和するために行う「数量化された温室効果ガスの排出抑制または削減の約束」を書いた法的文書であり、日本もこれを守ることを約束しました。

  オゾン層についても多くの報告がありますが、酸素分子と酸素原子の結合により生じるオゾン層は地上10000m〜50000mの成層圏に存在するオゾン濃度の高い領域があり、地球に入射した紫外線(UV−B)の大部分がこの分解によって吸収され地表に届かなかったものが、フロン類等の人工的物質によりオゾン層が破壊されて紫外線が地表に到達し、皮膚ガンや白内障になり易くなるという問題であります。このため、冷媒やスプレー等に使用されていたこれらの物質の使用を禁止し、それに代わる無害な物質を用いて解決をはかるものであります。

 3.砂漠化と植林   

 国際農業国際機構(FAO)のデータによりますと、世界の森林面積は1億3400万ku、陸地の28.9%、日本の森林は25万kuで陸地の67%となっています。  1980年から1995年の間に先進国では森林が20万ku増加しましたが、途上国では200万kuの森林が減少し、差し引き180万kuの森林が地球上から消失したことになります。日本の木材輸入量は世界1位となっていますが、製紙会社が中心となって海外で植林につとめ、2000年末までに2780kuの植林を行いました。  最近、上述の黄河上流の砂漠化が問題となっております。

4.廃棄物対策、土壌汚染

   人類の生産過程において生じた有害物質があります。カドミウム、鉛、砒素、水銀等の重金属、ベンゼン、クロロホルム、トルエン、エーテル等の有機溶剤、塩化ビニル、アクリルアミド等のプラスチック原料、有機リン酸殺虫剤、除草剤等の農薬さらにはアスベストくず等が問題となっています。これらは大気、水、土壌を通して人間の体内に入り害を及ぼすとされています。   環境ホルモンは人や生物の内分泌作用を阻害し、体の正常な作用を妨げるとされています。ダイオキシンは環境ホルモンの仲間ですが、意図的に生産されたものでなく、燃焼やその他の産業の副産物として生じるとされています。これらについては排出低減、生成および排出を抑制する対策がとられています。

 5.産業界の取組み

  ほとんどの企業が環境問題に取り組んでいますが、3つの業界の例について紹介します。

 (1)鉄鋼    
 鉄鋼業はエネルギー多量消費型の産業と言われ、11%のエネルギーを鉄鋼業界で消費しているとされています。その78%は石炭エネルギーであるとされていますが、省エネ、排気ガス対策等に技術開発を積み重ねた結果、世界一低いエネルギーで鉄が生産されています。したがって、他の問題を無視すれば、世界で日本の鉄を使用することが最も環境対策上好ましいということになります。   また、最近では廃プラスチックを高炉に吹き込み燃料、還元剤として活用するとともに、産業廃棄物処理に貢献しています。

 (2)電力
  日本は水力中心の発電から、太平洋戦争後、火力発電へと移行し、高度経済成長を支えました。 その後は原子力、石油以外の燃料による発電が加わり、現在世界第3位の発電量となっています。   原子力発電は、日本は世界の第3位であり、東京電力の柏崎・刈羽発電所は世界最大出力の原  子力発電所となっています。東京電力の約43%は原子力によるものです。二酸化炭素対策には原 子力発電は好ましい発電です。
 石油以外の火力発電としては、東京電力富津発電所の天然ガス(NLG)による高効率発電と 中部電力碧南発電所の石炭を粉末にして燃焼させる高効率発電が将来方向を示しているように思 います。

 (3)自動車
 燃費向上、二酸化炭素低減は各メーカーが取り組んでいる課題であり、成果も上がりつつある。 ハイブリッド車、電気自動車についても技術開発が進んできました。 日本では、ディーゼル車を規制しようとする傾向にありますが、二酸化炭素対策にはディーゼル車の方が有利であり、欧州ではディーゼル車の普及を推進しようとしており、一考を要すると考えます。

 6.資源、エネルギー、リサイクル

  資源は有限と考えられていますが、固定した有限ではなく、その時代の技術、経済状態によって変化します。100年前は資源でなかったものが、現在資源として利用されている例が多くみられます。 また、まだ未利用の海底の資源、北米のオイルシェイル等は将来資源となる可能性があります。

 太陽光、風力等による新エネルギーもその比率を高めることが期待されますが、安全面に万全の留意をはらった原子力の利用も重要であると考えます。

  リサイクルについては、最近市民の協力と技術開発が重ねられて、大いに改善されたと思います。アルミ缶の回収率が80%を越える等すぐれた成果も見られますが、まだ未解決の課題も残されています。

  20世紀が終わり、100年間の種々のデータが発表されました。人口、県民平均所得等でみると、千葉県の躍進はすばらしいものがあります。本キャンパス近郊の明治8年(1876年)の地図をみると、成田街道と東金街道に沿って人家が散在しているのみで、今日の発展とは雲泥の差があります。その反面、環境問題も生じました。千葉県は大企業と中小企業、工業と農業、漁業とのバランスのとれた発展を成し遂げました。環境面においても大きく改善が進みつつあります。さらなる努力と協力により、環境とバランスのとれた発展を望む次第です。