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(アオリイカーその2) ともかく、休憩時間にはさっそくこの女性を捜し求めて、話しかけてみました。 下された名刺をうやうやしく拝見してみますと、なんとこの方もオーストラリアから来ておられる。東部のさる大学の日本研究科主任教授で、一見、三十二、三。その若さにもかかわらず博士号の肩書きさえ持っておられる。お話を聞けば聞くほど、言葉を交わせば交わすほど、その魅力、いや増しに増してくる感じでな。その後の講演の時には自らこの教授の隣に座り込みまして、小声で話しかけました。なに、変な下心なぞありゃせん。学問ひとすじ。 「もしもし、あなた」 「しーっ」 白魚のような指を口に当てられる。ソフィアローレンのお色気じゃ。 「先程ちょっと聞きそびれたんですが」 「しーっ」 花弁のごとき唇に指をもっていかれる。マリリンモンローのあどけなさと言えばよろしいかのう。 「貴女様、今夜のご予定はどんなふうになっておりますかな」 「、、、、、」 恥ずかしげに返事もなし。オードリーヘップバーンの清純さ。 「シンガポールには日本レストランがぎょうさんあるということじゃが」 「、、、、、」 返事なし。どうも様子が変じゃな。 「日本料理店探訪というのも一興あると、、、」 いた、た、た、た。 このお方、吾が輩の左足をいやというほど踏んずけましたがな。 いや、こりゃ親近感がこもっておりますわ。勝手な解釈をしまして、勇気りんりん最後の詰め。 「おさしみ、お寿司、てんぷらなどご一緒にいかが?」 カッ、カッ。ハイヒールの二段廻し蹴りが左脚に飛んできました。 「ギャー、いててっ」 思わず声も出る。前列の数人がいっせいに振り向きまして、恐ろしい形相で睨みましたわ。 私しゃあきらめきれずにその夜パースの愚妻に国際電話を入れました。 「おい、美人教授と知り合いになったぞ。うん、美人じゃ。いや、なに、その、あてつけ言うとるのやない。おまえもきれい、、、じゃった」 心にもないことを言わされるはめになりました。 それでその美人、うん、豪州小町じゃ、その教授に弟子入りして学究生活に入ろうと思う。うん、うん、真面目な話。指導教官になっていただいて博士号でも取ろうと思うとる。一家あげて東部に移住するというのはどうじゃ」 こう申しますとな、 「あなたが、その歳で、その頭で、ホッホッホ、学究生活に、ヒャッハッハ」 家内の側には息子もいるとみえて、 「悪い冗談はやめろよ、とうさん、ママが笑いころげてブッブッとおならまでもらしているじゃないか」と、叫んでいるのも聞こえてくる。 私しゃくさりましたぞ、あれには。 我が家のものどもは家長の尊厳というものをいかに考えておるんじゃろ。 ともかく、一週間の学会は終り、オーストラリア国民の血税を無駄遣いしたことを深く反省しながら帰途につきました。 2002年03月01日 13時02分32秒 |