(アオリイカーその5)

エギ(餌木)を追うアオリイカ

ひところは、二人の釣り仲間と一緒によくイカ釣りに出かけました。
一人は「I産業」の駐在事務所長、T氏。今一人は「K物産」事務所長のH氏(お二人とも現在は他に転勤)。T氏は神戸、H氏は小生と同郷、岐阜のお方じゃ。
パースのアオリイカは秋口から冬にかけてが最盛期です。かなり冷えますから、着膨れしてそのうえスミよけの雨がっぱやライフジャケットを着込んでいます。水筒に入れたジョニ赤の回し飲みなども致して、顔は真っ赤。だるまさんが三人といった風情で、正直申しまして、バス釣りのようなカッコ良さはありません。
ルアー竿を各自二本。一本は軟調子。曳き型ルアーをつけて二十メートル前後投げ、置き竿にしておきます。
もう一本は多少堅めの竿で、これにはシャクリ型ルアー。船端から下に落として、底近くをしゃくっていきます。
潮が澄んでいる時には二匹、三匹、四匹、とイカが一定の距離を保って船の後を追いかけてくるのが見えますが、これはうまく釣れません。
置き竿にして後方で泳がせてある曳き型ルアーに集中的にあたるのはたいていこんな時です。

同じような条件で釣っていても、誰か一人だけどうしても釣れないこともあります。あなたも経験がおありでしょう。こんな時、Hさんという方はうるそうおましたな。釣りに来ると、よそゆきの言葉がひっこんで、岐阜弁になる。
「おっかしいなあ、どうしてぼくだけ釣れへんのやろ。Tさんも、ブランコさんもたんと釣れとるのに。あっ、また釣れたの。ルアーの色は?ピンク。Tさんの方は?オレンジ。ほんなら、ぼくも赤系統の色に替えてみよ。ルアーかえたがね。
おかしいな、おかあさん、釣れへんがね。竿の調子が堅すぎるんやろか?あせるな。また、ブランコさん釣ったがね。色は?ブルー。ほんなら、ぼくも青系統に替えんならんがね。さっきまで、ぼく、使っとった色やがね。釣れへんわ。うちでかあちゃんと子供二人、口あけてイカサシ待っとるがな。糸が太すぎるんやろか。うわー、かあさーん、イカやー、、、れれれ、引かへんぞ、あかんがな、オーストラリア釣ってしまったがね、根がかりややがね、うわー、糸切れた、十五ドルのイカエギがパーやがね、もと取らんならんがね、イカ十杯釣らなもと取れへん。えらいこっちゃ。あせるがね、
うわー、きたぞー、わわわわ、、、、変な引き方するぞ、なんやこいつ、特大のフグがエギくわえてきたがね、ひゃー、ステンレスの針をクチャクチャに噛んどるがね。十五ドルのエギがまたパーやがね。イカ二十杯釣らなもと取れへん。二十杯釣らな、今夜、かあちゃんの蒲団に入れてもらえへんがな。えらいこっちゃ。うわー、Tさん、また釣った。Tさん、おたく、内緒でコマセでも流してるのとちがう?あっ、そのイカ、小さいがね、リリースサイズや、かわいそうやがね。うわー、ほんとにリリースしたの。おしかったな、もらっとけばよかった」
まわりの者は気疲れしましたなあ。

深場のイカ釣りなどでは、「スルメイカがぐっと乗ってきたのが手に伝わる」などと言いますが、足もとのシャクリに来る大型のアオリイカはとてもそんなものではありません。ガクーンという衝撃とともに水中にぱっとスミが広がり、グーン、グーンと竿がひん曲がります。粘液性のスミは瞬時にしてイカと同じぐらいの大きさにかたまり、ぽっかりと水面に浮かび上がってきます。外敵がこのスミのかたまりをイカと見間違えて、気をとられているすきに、イカは体色を周囲の色に同化させてとんずらするのだそうですな(一方、タコのスミはさらさらしていて水中に広がり煙幕の働きをします)。
最初の強烈な引きには、さわがず、あわてず、あやします。強引に引き寄せると、肉が裂けてばらします。

アオリイカが釣れるのは通常、水深二メートルから四メートル、底が海草で覆われた潮通しのよい場所。サヨリやカマスがよく釣れるところが一つの目安でもあります。砂地や岩礁地帯が海草のなかに点在する個所に船が流されると、コウイカがまざってきます。
三、四百メートル流して、もとの場所にもどるパターンを繰り返しますが、釣れなくなれば
二、三十メートル横にずらして流します。それでもだめな時はずっと離れた別のポイントに移動します。
一人の竿にイカが当たると、まわりのイカもにわかに食い気づいて他の竿にもバタバタ来ることはめずらしくありません。こうなると、船の上も騒々しくなりますな。
「やや、来ました、今日の一匹めは僕がいただきや。さいさきヨロシわ」
「痩せ馬の先駆け、後続かず、、、、、うわー、かあさん、やったあ、僕の方にもイカ様がお越しくださいました」
「敵もサルもの、ひっかくもの、と褒めてあげたいとこやが、僕の方は二匹めでっせ。今夜はイカ刺しで一杯、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ありゃ、シモタ、バラした、スッポ抜けやがな」
「すっぽ抜けたるコンドーさん、私のチxチx小さすぎ、ギャハハハ、しっかりしなあかんがね。うわー、かあさーん、喜べ、二匹めや、どうやTさん、まいったかあ」
「そうはイカの金玉やがな。こっちは置き竿にも来てますわ。こりゃ、大きいでっせ」
「おたくのイカ金、インキン、タムシやがね。こっちも置き竿にきた、きた、きたぞ、弥次さん、喜多さん、ギャア、スミかけられたあ」
下品なること、きわまりない。

まあ、こんなわけで、パースの釣りは肩イカらせず、肘張らず、のんびり、おおらかにやるということになっております。これぞ、わが理想とする釣りでもあります。
釣り天国、パース、あなたも一度お越しくだされや。お待ちもうしておりますぞ。 2002年03月01日 19時31分30秒

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