今日あった悪夢が、まるで無かったかのように、夜は静まり返っていた。 小林俊介は、一人ウナギ沼のほとりで、得意のハーモニカを吹いていた。 それが、ウナギに対して自分ができるせめてもの鎮魂歌だったのであろう。 スナオと名づけられたウナギは、首を切断されあまりにも早く、小林の前から姿を消してしまった。 小林は、激しい後悔に襲われていた。 もし、自分がもっと油断することなくウナギを上手く使いこなせていれば、スナオは死なずに済んだんだと… 「ごめんな…おまえの旦那さん、俺が殺したも当然なんだ。」 ハーモニカを吹くのを止め、小林は近寄ってきたウナギに話しかけた。 ウナギは、小林を悲しげに見つめている。 「はは、優しいな…おまえはさ。俺を逆に慰めてくれるってのか?」 「へぇ…すごいね。ウナギの区別がつくんだね。」 美咲が話しかけた。 「ああ…なにか用?」 「どこ探しても、いないからさ。ひょっとして逃げたのかなって。」 「俺には、行く宛なんてないさ。」 「あっごめん。そんなこと言いたかったんじゃないんだ。あのさ・・・ さっきはごめんね。いい過ぎたよ… 」 美咲は顔を真っ赤にして謝った。 「別にいいさ。分かってくれたらさ。」 小林は、ウナギの頭を撫でながら言った。 「ずっと、宇宙で人が死ぬところばっか見てきたから… 兄貴の消息も分からないままだし… ウナギも生きてるんだよね。私達と同じように…大切なこと忘れてた。」 「お兄さん…きっと生きてるさ。」 小林は、少しでも美咲が希望を持てるように励ました。 「私もそう思ってる。だから新型のMEを早く開発して待っててあげるんだ。 ねぇ、そういえばそのウナギの腹が膨れてるね?食べすぎかな?」 「いや、赤ちゃんがもうすぐ生まれるみたいだぜ。」 小林は、嬉しそうに微笑みながら言った。 「えっそうなんだ…新しい命が生まれるんだね。」 「俺が父親になってやるさ!こいつの本当の父親は、俺が殺したも当然なんだ…」 「そんなこと言わないでよ!あんたがいなかったら、早乙女さんだけじゃなくて、他の みんなもやられてたかも知れないんだから…あなたは、ニュータイプの素質があるんだよ。 それもかなり強力のね。」 「そっそうなのかな。」 小林は、頭をかきながら照れた。 「この子たちも優しい目ができるんだね。 昼に化け物とか言っちゃったことを反省しないとね…」 最初は、近寄るだけでも、嫌悪感を抱いていた美咲は、自らウナギに手を伸ばし 頭を撫でていた。 「見かけだけで判断することが、いかに愚かかって分かるだろ?」 「そうだね…もっとお互いのことを理解し合えることが出きれば、戦争なんて起きなかったんだよね… そうだ!ひとつ聞いてもいいかな?」 「なに?」 「俊介って民間人だよね?どうしてウナギ連合に参加してるの?」 「成り行きだよ。ここに来たのだって池田さんとヨユさんを送るだけの予定だったし…」 でも俺は許せないよ。あいつらがここに侵略しに来なければ、家族や高校の仲間とも 別れ離れにならなかったし…なにより大切な仲間を殺されたんだ!!! これ以上、人もウナギも殺されてたまるかってんだ!」 「へぇ…それが戦う理由なんだ。」 「おかしいかよ?」 「ううん、立派な理由だと思うよ。うん!」 美咲の屈託の無い笑顔に小林は、赤面しながら空を見上げた。 空には綺麗な満月が出ている。 SNPであるこのウナギ沼周辺は空気も澄んでいるのか、星もとても綺麗に見える。 しかし、この幻想的な世界とは裏腹に、宇宙では地球圏とは比べ物にならないくらい 多くの悲劇が繰り返されているのである。 コセ―の悲劇から始まったこのウオーラル戦争が終るにはまだ時間がかかりそうである… To be contined…