朝になると、鳥の声が五月蝿いくらいに鳴きはじめ、彼らの鳴き声は
十分に目覚まし時計の変わりになってくれる。
しかし、それはまだ鳥の声もしない早朝のことであった。
「ふぁあ…朝の4時かぁ…まだ訓練まで寝られるね…むにゃむにゃ…」
やや寝ぼけながら美咲は再び寝入ろうとしていた。
ドンドンドン!!!!!
やたらにうるさくドアを叩くのに気がつくと、美咲はドアを開けた。TOP少佐だった。
「おい、早乙女を知らないか!!!!」
「私は今、起きたばかりだし知らないですよ。早乙女さんになにかあったんですか?」
「ああ、あいつの訓練は、朝の四時から始めるんだけどな。あいつの部屋に行ってもどこにもいないんだよ。
あいつを探すのを手伝ってくれないか?」
「はい…了解です。」
TOPに起こされると美咲は、着換えを早めに済ますし外に早乙女を探しに出かけた。
「あっ俊介!」
「よぉ・・・おはようございますだぜぇ…おまえも早乙女さんを探しているのか?」
ウナギ沼の前で小林も早乙女探しをしていた。リヴァイアも小林にくっつきながら眠たそうにしている。
「他のみんなも早乙女さんを探せって、TOPさんに起こされてさ…いい迷惑だよなぁ…」
「うん…じゃあ手分けして探したほうがいいよね。私は、MS倉庫の方を見てくるよ。」
「了解…じゃあ俺は、イ―ルアーガマの方見てくるぜ…」
二人はそう言うと、再び早乙女探しを再開した。
先に早乙女を見つけたのは、美咲だった。
「ちょっと早乙女さん〜ザゴールに乗ってなにしようとしてるのよ〜!!!」
コクピットに乗り込もうとしていた早乙女を見つけると、美咲は急いで早乙女の腕を引っ張った。
「わっ美咲ちゃん。離してくれよ!!!僕をほっといてくれ…」
「そんなことできるわけないでしょう・・・」
「きゃっ…!!!」
「美咲ちゃん!!!
コクピットから真逆さまに美咲は、落とされる形になった。
「あっあ・・・リヴァイア…ありがとう…」
間一髪、リヴァイアが美咲の軍服をつかみ彼女は、怪我をしなくてすんだ。
「美咲〜!!!ふー間一髪だったな!なんか急にリヴァイアがそっちに行き出したからさ。」
小林も慌ててかけつけた。
「そっか…リヴァイアのおかげだね…」
美咲は笑みを浮かべながら、リヴァイアを撫でた。
「ごめん…僕のせいで怪我をさせちゃうとこだった…」
早乙女は、コクピットから降り美咲に謝った。
「そのことは、いいけど…どうして逃げようとしちゃったの?
TOPさんの訓練が厳しすぎるから? 」
「確かに厳しすぎるよ…風船爆弾ゲームしようっていったら本当の風船爆弾使ってくるし
ドッチボールしようと言えば、弾が爆弾だし…人間ボーリングもコードレスバンジ―も、もうたくさんだ…!!!」
「早乙女さん…」
パンパンに晴れあがった顔が訓練の厳しさを物語っており、二人は早乙女がなんだか可愛そうに見えた。
「なぁ…わりぃけど早乙女さんは軍隊には向かないんじゃないか?」
小林は、つい思っていたことを口にしてしまった。
「…」
「あっわるい…」
「いや、いいんだ。無理もないですよね…僕がなんでこんなとこにいるのか話すよ…」
小林が謝るのを聞くと無口になっていた早乙女は、再び口を動かし始めた。
「ある日、中央公園に散歩してたときにENKOと地球連邦がどんぱちしてたんだ。
それで僕の目の前で、MSが落ちてきてさ。俺は無我夢中で、そのMSに乗り込んでENKOの連中をいつのまにか撃退してたんだ。」
「へぇ…すげぇな…」
「小林君の方がすごかったと思うけどね…それで僕は、その時、戦っていたTOPさんに連れていかれてνタイプ適正検査を受けさせられたんだ。
そこで、僕はハーフニュータイプという検査結果がでたんだ。」
「ハーフνタイプ?」
「普段は、普通の人間なんだけどね。自分に命の危険が迫るとνタイプと同じような戦闘能力を発揮できるらしいんだ…
だけど小林君達も知っての通リ、いつもできるわけじゃなくてね。デンドロウナギで戦ったときみたいに足手まといになっちゃってさ…」
「そっか…少しでもνタイプとしての能力をコントロールできるように、他の兵士よりも辛い訓練をさせられてたんだね…」
美咲は、早乙女少尉の訓練が厳しいのが、ただの戦力の底上げでないことを、理解した。
「ああ…僕にはなにより金が必要だったんだ…美咲ちゃんと同じくらいの年の妹がいてね。
僕が兵士になる代わりに、妹は安全な国のスイスの一流の高校に入学させてもらったんだ…だけど…けど… 」
「まさか早乙女さん、ザゴールでスイスに行こうとしたの!?」
「ああ、そうさ。昨日の夕食の時に池田少尉の話を聞いてさ…妹に電話しても連絡がつかないんだ…だから」
「意気地なし…」
早乙女の話を聞いてると美咲は、つぶやいた。
「なんでさ…妹を助けたいんだよ…美咲ちゃん!?」
美咲の顔は、自然と涙がこぼれていた。
「私の兄貴もね…行方不明なんだ…知ってるでしょ?
今井中尉が、宇宙に帰っちゃったとき、私も一緒に宇宙に戻って
兄貴を探したかった。だけど、それじゃあ、その分、ここのみんなや地球に
住んでる罪もない人たちが殺されちゃう…
そう考えて私は、ここで兄貴が来るのを待つことにしたんだよ…」
「美咲ちゃん…」
「早乙女さんが、一人でもかけちゃったらここは、大変なことになっちゃうんだよ?
早乙女さんが、デンドロウナギをうまく乗りこなすことが、妹さんの安全にも
つながっていくんだと思う…」
「俺の両親も行方不明なんだ。だけど俺は死んだなんて思ってないぜ。
絶対どこかで生きてるって信じてる。」
小林もリヴァイアを抱きながら下を向いて言った。
「みんな…ごめん…僕、TOP少佐の訓練に行ってくるよ…」
「早乙女さん!?」
「僕も信じるよ。妹が無事であることをね。そしてデンドロウナギを使いこなして
必ず平和な世の中にする…」
早乙女は、情けなかった。二人は自分よりも年下で本来なら、楽しい学校生活を送ってる
はずなのに家族と離れ離れになり、それでも弱音を吐かずに戦っていることに…
外に出るとすぐ、早乙女はTOP少佐と鉢合わせになった。
「早乙女!!!!よくも逃亡しようとしてくれたな!!!訓練100倍じゃああ!!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
まだ暗く朝日が昇る前の静けさの中で、早乙女の断末魔のような叫び声がウナギ沼全体に響いていた。
TO BE CONTINED