ギリシャ神話の神々
20話〜21話
黄金の羊をめぐる冒険
20話、イアソンと魔女メディア
イオルコスという国の王に、イアソンという王子がうまれました。
ある日、叔父ペリアスに、イコルコスの国は、襲われてしまいます。
危機を感じたイオルコスの王は、イアソンをいち早く逃がし
ケンタウロス族の賢者ケイロンに、イアソンを預けました。
ケイロンの元には、ほかにも神々や英雄の子たちが、預けられていました。
やがて、大きくなったイアソンは、父の国だったイオルコスを、ぺリアスから
取り戻そうと、ケイロンから旅立ちます。
そこで、ケイロンは、イアソンにこう告げるのでした。
ケイロン「これから出会う者には、だれであろうと乱暴な口は聞かぬこと。
それから、口に出したことばは、必ず守ること。」
そうして、イアソンは、旅に出ました。
途中、流れの激しい川で、老婆が川を渡れずにこまっていました。
そこで、イアソンは、老婆を背負って川を渡ります。
ところが、老婆は、服がぬれたことを怒りだしたのです。
イアソンは、ケイロンのことばを思いだし、がまんしました。
その老婆とは、実は、女神ヘラが変身していた姿だったのです。
ヘラは、「困ったときは、助けてあげましょう」と言って消えました。
その時、イアソンは、川を渡った時にサンダルを片方なくしてしまいました。
一方、イオルコスの王ぺリアスは、「片方のサンダルしか履いていない男が
おまえに災いをもたらす」という神託を受けていました。
ぺリアスは、やってきた片サンダルしか履いていないイアソンを見て
ぺリアス「コルキスという国にある、黄金の毛皮を持ってきたら
王位を譲ろう」と言葉巧みに約束させたのでした。
イアソンは、コルキスまで行く勇気ある戦士を50人ほどあつめ、
船作りの名人アルゴルの名をとって、アルゴー号と名づけ、
船の先端に、ヘラの像を立て、航海にでます。
イアソンたちは、あちこちの島に、立ち寄りながら、数々の冒険をしながら、
そうして、コルキスの国にたどりつきました。
コルキス王は、竜の兵士と戦って、見事倒したら、「黄金の毛皮」を与えると
約束しました。
コルキス王の娘、魔女メデイアは、イアソンを助けます。
イアソンは、メデイアの力を借りて竜の兵士を倒しましたが、
「黄金の毛皮」を渡したくないコルキス王はアルゴー号を襲おうとします。
それに気付いた魔女メデイアは、イアソンを道案内して、「黄金の羊」を
取りに、森へ入っていき、オルぺウスの竪琴で、羊を守っていた竜を眠らせ
黄金の羊を、手にいれました。
ところが、これに怒ったコルキス王は、必死でアルゴー号を追いかけ
追いつかれると思ったメデイアは、いっしょに付いてきていた幼い弟の
首をはねてしまいました。
コルキス王は、追うのをやめ、自分の息子の亡骸を、必死で拾い集めました。
アルゴー号は、こうして、無事、コルキスを離れることができましたが、
メデイアの行為は、ゼウスの怒りにふれ、船は、何日も嵐に翻弄され続けました。
しかし、航海には、メデイアの力が必要だというお告げで、魔女キルケによって、
メデイアの罪は、許されます。
こうして、いろいろな困難を、メデイアに救われながら、イアソンは、イオルコスの
国に、黄金の羊をもって、帰ってきます。
ところが、ぺリアスは、「王位を譲る」という約束を、守ろうとしませんでした。
イアソンの父は、館に捕らえられていて、苦労を重ねたために、すっかり、
老人になっていました。
そこで、魔女メデイアは、イアソンの父を、呪文で若返らせます。
それを見ていたぺリアスも、自分も若返ろうとして
ぺリアスの娘たちに、殺されてしまいました。
メデイアは、呪文を、ぺリアスの娘たちに、半分しか教えていなかったのです。
イアソンとメディアは、その後、コリントスへ行き、クレオン王の館に
身をよせました。
イアソンとメディアには、やがて、ふたりの子供ができましたが、
その頃から、気性の激しいメディアと違って、やさしさに満ちたクレオン王の娘と
イアソンは、愛しあうようになりました。
これに怒ったメディアは、クレオン王の娘を殺し、自分の二人の子供まで
殺してしまいます。
メディアは、イアソンの命までは、奪えませんでしたが、竜の戦車に乗って、
去っていきました。
ひとり、残されたイアソンは、船の中で、何日も漂って、そのうち、死んでしまいます。
アルゴー号は、消え去りました。
しかし、偉大な冒険家イアソンとその仲間の航海は、いつまでも、海を渡る
ギリシャの人々の心の支えとなったのです。
21話、トロイア戦争
不和の女神エリスが投げ込んだ「黄金のりんご」をめぐって、
3人の女神ヘラ、アフロディテ、アテナが争います。
なぜなら、りんごには、「一番、美しい女神へ」と書かれていたからです。
そして美の判定者に選ばれたのが、トロイア王子パリスです。
パリスは、世界一美しい女性を妻にできると聞かされ
美の女神アフロディテを選びます。
アフロディテは喜び、世界一美しいのは、スパルタ王妃ヘレネと告げるのでした。
この時から、ヘラとアテナは、パリスとトロイアの一族を憎むようになり、
このパリスの審判は、のちに10年にもわたるトロイア戦争を
引き起こすことになるのです。
一般に、トロイア戦争は、神々の戦争と言われる由縁です。
トロイア王子パリスは、スパルタの国に行き、そのあまりの美しさに
心を奪われてしまい、王妃であるへレネを奪ったのでした。
それに、激怒したスパルタ王メネラケスは、ミュケナイ王アガメムノン、
イタカ島の王オデュッセウス、プティア王子アキレウスによびかけ、
トロイア遠征にむかうことになりました。
ギリシャ軍は、いけにえの鹿をもやすと、大蛇があらわれ、
この戦争は9年続き、10年目に、トロイアはギリシャ軍に落ちるだろうという
お告げを聞きます。しかし、いけにえにした鹿は、女神アルテミスの鹿だったため、
アルテミスは怒って、アガメムノンの娘イビゲネイアを、いけにえに捧げるよう
命じたのでした。
イビゲネイアは、母国のために、いけにえになることを承諾します。
そのけなげな心が、アルテミスの心を動かし、イビゲネイアは、アルテミスの
祭司になりました。
やがて、トロイア対ギリシャの激しい戦争が、9年続きました。
10年目。ギリシャ軍の勇士アキレウスの猛攻も、トロイアの厚い城壁に
歯がたたずに、困っていました。しかも、この戦いは、それぞれの軍に
神々も味方して戦っていました。
ギリシャ軍には、ヘラ、アテナ、ポセイドン、へパイストス、ヘルメス
トロイア軍には、アレス、アフロデイテ、アポロン、アルテミス・・
トロイアの王子へクトルは、ギリシャの勇士アキレウスと、勇敢に戦い
命を落としました。
しかし、名将へクトルがしんでも、堅固なトロイアは、なかなか落ちませんでした。
ギリシャ軍アキレウスも、唯一の弱点のかかとをねらわれ、しんでしまいます。
トロイア軍は、アマゾン族、エチオピア軍の応援も頼み、
壮絶な戦いをしましたが、ギリシャ軍トロイア軍共に、名だたる名将が、
たくさん、命を落としました。
しかし、トロイア王子パリスが、矢で倒れてから、トロイア軍は、城壁に
立てこもるようになりました。
それでも、固い城壁を、ギリシャ軍は、破ることは、どうしてもできなかったのです。
そこで、ギリシャ軍は、浜辺に大きな木馬を作り、ギリシャ軍が、撤退したように
見せかけました。
そして、わざと捕らえられたギリシャ兵は、トロイア王にこう言ったのでした。
ギリシャ兵「この木馬を、神聖な物として、神に捧げたほうが勝ち、
木馬に不敬を働いたほうが、負けというギリシャの言い伝えがあるのです
ギリシャ人は、きっとトロイア軍が、この木馬を焼き払うだろうと
考え、ここに、残したのです。」
トロイア王「なぜ、こんな大きな木馬を作ったのだ?」
ギリシャ兵「トロイアの城内に運ぶことができないようにするためです。
もし、運ばれたら、トロイアは木馬に守られ、ギリシャは
2度と手がだせなくなるからです」
そこで、トロイアの王は、木馬を城内にいれて、神に捧げることにしました。
やがて、木馬を、トロイアの城内に引きいれると・・・
木馬の中に隠れていたギリシャの兵士たちは、手引きして、岩かげにかくれていた
ギリシャ兵たちを手引きしました。
トロイアの町は、1夜のうちに焼け落ちました。
一方、わずかに生き延びたアイネイアス・トロイア一族は、
イタリアに渡り新しい町を建設しました。
その後、その町から分かれたローマという都市は、やがて、ローマ帝国へ
発展しました。そして、アイネイアスは、ローマの建国の祖とよばれるように
なりました。
アガメムノンは、やがて、無事にギリシャに帰りつきますが、
連れかえったトロイア王女カサンドラと共に、妻といとこに殺されてしまいます。
オデュッセウスは、さまざまな危険にあいながら、それから、10年後
たったひとりで、ふるさとのイタカ島につきました。
やがて、廃墟となったトロイアの城跡は、土に埋もれて行ったので、
そこに、かつて、町があったということを想像することなど、できませんでした。
しかし、19世紀後半、ドイツ人シュリーマンが
トロイアの城跡を掘り当てて、みんなを驚かせたのでした。
ずっと昔に書かれたこの物語が、本当のことを元にしているとわかったからでした。
(終わり)

羊を煮る、イアソンとメディア
イアソンの父が、若返る所を見たペイアスは、娘達にその方法を聞き出すように命じます。
メディアは、若返りの方法を教えるために、若い羊を煮えたぎる湯の中に、いれるのでした。
しかし、これは、ペリアスを殺す罠だったのです。
魔女メディア
イアソンに味方して、黄金の羊の皮獲得に手を貸したメディアでしたが、
のちには、かなり残酷なことを魔力を使ってしました。
こうした激しい性格の魔女としてのメディアは、芸術家の関心の的になってきました。

絵・ドラクロア
イアソンに裏切られ、
メディアが、わが子
二人を殺そうと
している場面
古代の船
人類最初の船は、丸太船と言われていますが、BC3000年前のエーゲ海の島々から発見された陶器には、たくさんのオールのついた船が
描かれています。
古代では、オールが一列に並んだ船がふつうでした。
こんな船で早く走るためには、細長くなり、横波には、非常にもろく、「アルゴー船」のような船で、黒海まで航海することは、非常に危険きわまりない行為だったのです。
ギリシャの武将アキレウス
プティア王ペレウスは、息子アキレウスを、半人半馬ケンタウロス族のケイロンに預けます。
ケイロンは、その後、彼をギリシャ一の勇者に育て上げました。
アキレウスは、トロイア戦争で大活躍することとなるのです
(写真:少年アキレウスに竪琴を教えるケイロン)

将棋をさすアキレウス(左)と
アイアス(右)

アキレウスのかかと
アキレウスは、母親の女神テティスが、冥界の泉の水につけたために、不死身になったといわれています。
しかし、彼女がつかんでいたかかとだけは、水がつからず、生身の部分として、残ってしまいました。
アキレウスは、このかかとの部分を傷つけられて死にましたが、かかとの上部をアキレス腱と呼ぶのは、アキレウスの神話に基づいています。
アガメムノン家の悲劇
アガメムノンは、トロイア戦争から
帰ってきて、妻といとこに殺されます。
これは、かつて、アガメムノンが、娘イピゲネイアをいけにえに、アルテミスに捧げようとしたことに怒った妻のしわざだと言われています。
そののち、アガメムノンの娘エレクトラは、母といとこを殺します。
この話しから、父を愛し、母を憎む気持ちを、エレクトラ・コンプレックスといいます。
神話の木馬をモデルに作られたトロイアの木馬

シュりーマンが発掘した
トロイアの遺跡
