環境税って何?
Q.最近、「環境税」という言葉を聞くことがあるのですが、どんなものなのでしょうか?
A.「環境税」とは、環境に対して悪影響を及ぼす物質の排出等に対して税金をかけることで、市場メカニズムを通じて環境保全を実現しようという政策手法です。欧米諸国では二酸化炭素排出削減のため90年代以降、「炭素税」等の導入が進められてきました。我が国でもようやく導入に向けて議論が高まりつつありますが、同時に、地方自治体の中には独自の環境税の導入を検討しているところもあります。
我が国では環境問題に対する対策として、これまで主に「規制」という手法が用いられてきました。SOxやNOx、排水に対する各種排出規制などがこの典型的な例です。しかし、高度成長期の産業公害のように、原因が特定の工場など少数であった時にはこうした規制にも十分な効果があったのですが、現在問題となっている温暖化等の地球環境問題に対する対策としては十分な効果が期待できないことが多くなっています。なぜなら、温暖化や廃棄物、自然破壊など、今日私たちが直面している環境問題は、その原因を少数の特定企業や人々に帰することができず、いわば我々一人一人のライフスタイルや文明のあり方そのものが原因となって生じているからです。こうした問題に対して「規制」を行ったとしても、それが実際に守られているかどうかを監視することは非常に難しいでしょう。また、たとえ監視が可能であってもそのための行政コストは莫大なものになってしまいます。こうしたことが背景となって、近年環境問題への対応方策として、「環境税」を始めとする市場メカニズムを利用した経済的手法が注目されるようになってきたのです。
「環境税」の仕組みを理解するためには、そもそも何故公害や環境問題が起きるのかということを理解することが必要です。経済学の理論によれば、資本主義経済のもとでは価格メカニズムによって需要と供給が調整され、財やサービスは市場で最適に配分されるはずです。ところが、実際には市場を経由しないため、価格づけが行われないような現象も存在します。これを、経済学では外部経済または外部不経済と呼びます。環境問題も、製品やサービスの価格に環境汚染・破壊のコスト(外部費用)が含まれていないために引き起こされると考えられることから、この外部不経済の典型的な例だと言えます。こうした外部不経済による問題を解決する一つの方法は、それぞれの財やサービスの価格に、環境を汚染・破壊のコストを税金の形、すなわち「環境税」として上乗せすることです。こうすることによって、特に規制や監視を行わなくても市場メカニズムによって環境汚染を防ぐことが出来るようになるわけです。「環境税」は、こうした仕組みを持っているため、不特定多数の主体が原因となっているような環境問題に対しては、行政コストが安く済むという大きなメリットがあります。また、汚染者が自らそのコストを負担すべきであるというPPP(汚染者負担原則)の考え方とも一致しています。そのほか、税を徴収されることを通じて市民に環境汚染に対するコスト意識を植え付けることができるというメリットもあります。なお、「環境税」のように市場メカニズムを活用した環境保全の方法には、他にも、補助金、排出権取引、デポジット制等があります。
近年先進各国でこの「環境税」の導入が進んでいる分野としては、地球温暖化問題が挙げられます。これは、温暖化問題の主な原因である二酸化炭素の発生源があらゆる経済活動に起因しているためです。1990年代の初頭に、まず北欧4ヶ国とオランダで「炭素税」が導入されました。また、1999年にはドイツとイタリアが導入を行い、イギリスとフランスでも導入に向けた検討が進められています。こうした事例の中には、当初は非環境目的で導入された租税を、環境税として活用すために税制改革を行っている場合もあります。こうした動きは「税制のグリーン化」とも呼ばれます。また、「環境税」を設けると同時に、その税収分だけ法人税や所得税などを減税するということも行われています。すなわち、環境に悪影響のあるもの(バッズ)には課税し、良いもの(グッズ)に対しては減税するという考え方です。こうすることによって、環境の保全と同時に雇用創出にもつながるという2つのメリットが生まれるのです。
わが国においても、今年に入り「環境税」、特に二酸化炭素排出削減を狙った炭素税導入に向けた議論が活発化してきました。しかし、我が国の場合、こうした国の動きと平行して、地方自治体において各種の「環境税」が先行的に導入されようとしていることが注目されます(表参照)。これは、今年4月の地方分権整備法施行により、都道府県や市町村が独自に課税することができる「法定外目的税」という制度が創設されたためです。こうした地方自治体による環境税では、近年特に深刻となっている廃棄物に関するものが多いことが特徴と言えるでしょう。これまで、我が国では補助金を除いて、「環境税」等の経済的手法に対する経験はあまりありませんでした。しかし、これまでの規制による環境保全政策が行き詰まっていることも明らかです。「環境税」も決して万能薬ではありませんが、大切なことはそれぞれの政策手段が持つ利点と欠点をしっかりと理解し、政策目標にあわせて総合的な制度のデザインを行っていくことではないでしょうか。
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