いまデンマークの風力は投資格付け「a」ランク



風力発電や廃棄物発電、バイオガス等の再生可能エネルギー利用を世界に先駆け積極的に進めるデンマーク。その中でも特に世界から注目されているのが、風力発電である。現在、風力はデンマークの国内電力消費量の約10%を担うエネルギー源にまで成長し、2030年までにこれを50%まで高める計画が進められている。なぜデンマークで、これほどまでに風力発電が普及したのか。それは、風力発電が儲かるからなのだという。今回は、こうしたデンマークの風力発電の最新動向とその普及の背景について現地に取材した。


■加速する風力発電
デンマークが風力発電大国であることは、良く知られている。特に、近年我が国でもデンマークを始めとする諸外国の風力発電が盛んに紹介されるようになってきた。しかし、デンマークでなぜこれほどまでに風力発電が普及しているのかという理由については、あまり知られていないように思う。
デンマークの風力発電の設備容量は1999年3月末には1,560MWに達し、風力は国内電力消費量の約10%を担う重要なエネルギー源となっている。1997年末には、1,148MWであったことを考えると、この2年あまりの間だけでも実に36%も増加したということになる。さらに、国民一人当たりの風力発電容量を見ると、いかにデンマークが風力発電大国かということがはっきりする。現在、最も風力発電施設を保有している国はドイツ。デンマークは第三位だ。ところが、国民一人当たりに換算すると、デンマークは国民一人当たり約300Wとダントツに多い。一方、日本はわずか0.4Wであるから800倍以上もの開きがあることになる。さらに、デンマークでは今後も風力発電の大幅な増設を図るため、沿岸の4カ所に2030年までに4,000MWのウィンドファームを建設する計画に取り組んでいる。これは沿岸から数km離れた洋上に、1基あたり1500KW以上の大型の風車(現在最も一般的なものは700kWのタイプ)を、毎年80〜100基ずつ建設しようという壮大な計画だ。この計画が実現すると、国内電力消費量の実に50%を風力でまかなうことができる計算になる。
デンマークで、なぜこれほどまでに風力発電が普及したのか。もちろん、日本と異なり、山らしい山がなく、大きな河川もないデンマークでは、中世のころから風車が利用されてきたという歴史がある。しかし、本当の理由は、実は純粋に経済的なものなのだという。デンマークで環境・エネルギー政策に関する研修施設を運営するステファン・スズキさんは、「現在デンマークでは、風力発電への投資は、税引き後の利回りで5%から6%を確保できる非常に良い案件なのです。このため、風力の建設許可願いは増加の一途をたどっているのです。」とその実状を語る。我が国では、風力発電などの再生可能エネルギーは、地球環境にいいことは分かっていても、コストが高いから普及しないと言う考え方がまだまだ根強い。では、なぜデンマークでは風力発電が儲かるのだろうか。これには、デンマークの再生可能エネルギーに対する政策とそれを実現するための制度に秘密がある。

■エネルギー自給政策が背景に
デンマークがそもそも風力等の再生可能エネルギーに力を入れるようになったきっかけは、1970年代の石油ショックにさかのぼることができる。当時、デンマークではエネルギーのほとんどを輸入原油に頼っていた。しかし、石油ショック後の度重なる原油価格の高騰から、エネルギー源の分散化と自給率の向上を積極的に図る道を選ぶ。原子力発電を導入しなかったデンマークでは、1979年の第二次石油危機を契機として作られた「エネルギー政策1981」で、自然エネルギーの中でも特に風力発電施設の設置に重点を置いた。さらに、その促進を図るために、風力発電の建設に補助金を導入する。この補助制度は、当初風力発電施設建設費の30%が支給されるものであったが、徐々に引き下げられ、1989年には廃止されている。しかし、この補助制度のおかげで、デンマークにおける風力発電は離陸する。1987年に国連の「開発と環境に関する世界委員会」で持続的発展の理念が提唱されると、今度はこれを受け「エネルギー計画2000」を策定する。この計画には、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素排出量を2000年までに1988年の水準から20%削減すること、そのために火力発電を減らす一方で再生エネルギーの中で最も採算性の高い風力発電を増設し、2005年まで国内電力消費量の10%をまかなうことが明記された。さらに、この目標を実現するために、1995年には炭素税が導入される。炭素税は1KWhあたりの電力消費量に対し、0.1クローネ(約2円)の割合で徴収される目的税で、風力発電、バイオガス発電など二酸化炭素を排出しない発電への売電価格の補助に使われている。この他にも、電気税の一部が売電補助金として使わるなど、常に風力発電が儲かる仕組みが作られている。このように、国の風力発電導入に対する確固たる意志と、それを支える経済的な制度があったからこそ、20年あまりで風力は国内電力消費量の10%を担うまでに成長したのである。このあいだには、もちろん風力発電施設に関する技術的な進歩もあった。特に顕著なのが、一基あたりの発電容量の大型化だ。1980年代初頭には、一基あたり20KW程度であったものが、80年代の終わりには200KWとなり、最近では700KW程度が標準となっている。このような大型化によって、発電コストは大幅に削減されたのだ。

■風力が地域を豊かにする
デンマークにおける風力発電には、もう一つの見逃せない特徴がある。それは、個人や協同組合によって所有される割合が圧倒的に多いという点だ。デンマークで風力発電を所有するのは85%が個人や協同組合で、電力会社が保有するのは残りの15%に過ぎない。このため、売電収入は即地域住民の収入増につながる。例えばユトランド半島北西部のVestervigという町。ここは、人口が1万2千人に対して風力発電施設が150基ある。この結果、この地域では発電量が地域の消費電力を上回り、売電収入によって地域が豊かになったのだという。
国土政策の観点からもこうしたことは重要なのだと、ステファン・スズキさんはこう指摘する。「地域が豊かにならないと都市への一極集中が進んでしまう。だからデンマークでは、地方に移ってきても最低2年住まないと風力発電を持つことができない制度を作って、地域の人達のエネルギーを守っているのです。」

■日本ではどうなるのか
我が国でも、絶対量ではまだまだ少ないものの、昨年あたりから風力発電施設の建設がブームと言っていいほど盛り上がりを見せている。特に、北海道や東北、沖縄などでは計画が目白押しだ。これは、風力発電がもともと太陽光発電などに比べコスト面での優位性を持っていたことに加え、国による施設への補助制度や電力会社への長期売電契約等が行われるようになったことが大きな要因である。しかし、我が国における風力発電の導入には、まだまだ課題も多い。特に、風力発電と既存の電力系統との連携が一番やっかいな問題なのだという。また、自然公園に指定されているため建設できなかったり、道路の整備状況が悪いため建設費が高くなってしまうケースもあるという。今後、我が国で風力発電がどの程度普及するのかは、こうした様々な点を含めた事業環境の整備やそれを支える国のエネルギー政策によって大きく変わるだろう。とはいえ、当面は我が国でも風力発電ブームは続きそうである。
さて、デンマークの再生可能エネルギーのもう一つの注目株であるバイオガス。次号では、このデンマークのバイオガス利用の最新動向についてレポートしたいと思う。

■謝辞
この記事は、デンマークの環境政策・エネルギー政策に関する研修施設「風のがっこう」を運営するステファン・スズキ氏へのインタビューや資料を元に執筆したものです。この場をお借りして御礼申し上げます。

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