最終幻想ーファイナルファンタジー

シナリオ素案「最終幻想ーファイナル・ファンタジ−ー」

第1幕  <過去>
 二人の若者バドとミームは恋をした。ミームは森を守る魔女の孫娘。
 畑で働く村人達。バドとミームもそのなかで汗を流す。
 「さあて、今日はもうおわりににしようか。」
 バド、ミーム抜け出して森の奥へ走る。
 二人で山に登る。大きな樹がある。
 「うわ−やっと頂上。暑いわね。」
ミーム、上着を脱ぐ。バド少しどぎまぎする。
「きれいな眺めね。それにあの上に見えるのは氷河?」
 「そうだよ。川が凍って融けなくて、流れがとまっちゃうから、ただの小川があんなに おっきくなってるんだ。」「バドって物知りね」
 寄り添う二人。
 「登ってきた記念にこの樹に名前、彫りましょう。」
 「木がかわいそうだよ。この岩に彫ろう。」
 「そんなことできるの?」
 「見ててご覧」バドは巧みに石を打合せて石のナイフをつくり、鋭い刃先で二人の名前を岩に刻む。
 「うわ−、バド上手。それにやさしいのね。」

 森の奥に住む魔女のところに、麓の村人がやってくる。要求は、もっと鉄を打ち、もっと畑を広げ、冬暖かに暮らすために森の木を切らせて欲しいとのこと。
 魔女は拒否。村の若者の一人が言う。「この村の爺は皆腰がまがって若くして死んでいく。もっと鉄があれば農作業はずっと楽になる。皆長生きできる。」
 魔女は拒否。村の若者達、暴れる。魔女の棚にあった薬を床に叩きつけようとする。
「それはだめじゃ。」魔女は言うが、若者は耳を貸さない。魔女は羽交い締めにされる。魔女は魔法を唱え、若者を吹き飛ばし、魔法の剣を取りだし、若者に投げ付ける。
バド、若者をかばって剣を受け傷つき倒れる。
「あ−−」叫ぶミーム。
「このやろう!」もう一人の若者が叫び、魔女に斬り掛かる。
魔女の孫のミーム、「止めて!」と言いながら飛び出し、斬られる。
 孫を傷つけられた魔女ぶち切れる。呪文を唱えて若者の動きを止め、魔法の薬を取り上げ、秘伝の大魔法カオルマを薬に掛ける。
「だめ、おばあちゃあん、それだけはだめ。」
息絶え絶えミームがつぶやくが、魔女は言うことを聴かず、壜の蓋をとり、息を吹き掛ける。

何も起こらない。
「おい、それだけかよ。」若者は嘲笑う。
「やっちまえよ。こっちはバドをやられたんだ。」
矢の一斉射撃。矢が次々魔女に突きささる。
魔女、不気味に笑う。
「欲望は解き放たれた。無知が知となり、知は無知となり、カオルマの混乱と破壊が大地を覆うのだ。」魔女倒れる。
「やった、これで畑を広げられる。これで冬の寒さに凍えずにすむ。」
「なんだか心が軽いぞ。なんでもできる気がするな。」
「俺は鉄を打つぞ。」
「おれは畑を広げるぞ。」

ミーム、最後の力を振り絞って、バドのところに這い寄る。
「ごめん、バド、大丈夫?じゃないよね。二人とももうだめみたい。でも、あの魔法は世界を滅ぼすの。なんとかしないと。ねえ、お願い私と一緒に来て、それしかないの。」
「え、何?」
「二人とももう助からないわ。でも、最後の力を振り絞って私、転生の魔法を唱える。そうすれば、いつかどこかでもう一度逢えるかもしれない。そして、もし逢えて、多分記憶は無くしてるだろうけど、それでも思い出すことができたら・・・・・」
「二人が逢えたらどうしたらいいんだい、ミームの願いならぼくはなんでもするよ。」
「その時、今おばあちゃんが掛けたカオルマの魔法を解きたいの。あの魔法は人々の欲望を解き放ち、知性を狂わす最強の黒魔法。これは今はもう解けない。でも400年後の日食の時、二つの命を捧げれば魔法は解けると言われている。」
「わかった。ミーム、だから泣かないで。」
「目をつぶって、手を握って、心を一つにして。」
「我らの命と記憶と引き替えに、我らにもう一度の命を与えよ。我らに転生を!」
バドとミーム死ぬ。

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   響く槌音、どんどん大きくなる家、建物、ビル、忙しく動き回る人々。
         舞台は華やかな音楽と共に近未来へと転換。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第2幕  <未来>
 アルプスのハイキングコ−スで二人の若者が出会う。
「うわ−、きれい。」
「本当にきれいだね。ねえ、君一人旅?スイスは初めて?」
「そうよ、それが何か?ナンパならあとにして。」
「いや、そうじゃなくて、なんだかど−しても君に話し掛けないといけけない気がして。」
「それをナンパって言うんじゃない。」
「え−っと、あの、この景色きれいだね。」
「あんたバカじゃないの」
「いや、ただ、この景色、初めて来たはずなのに氷河の風景、どっかで見たような気がして。」
「・・・・・・・・・・・私も・・・私もそう。でも、ちょっと変。」
「そりゃ変だよな。出会ったばかりの二人が、見たばかりの景色をどっかで見た気がするなんて、仲良く二人で言ってんだから。」

「少し一緒に歩こうか。」
「そうね。さっきの、ちょっと変っていうのはね、前に見たような気がするっていうのはそうなんだけど、少し記憶と違うのよ。記憶の中の氷河はもっと大きいの。」
「・・・・・・・・・・僕も・・そう思う。」
二人は山を登っていく。
急に視界が開ける。一面の白骨化した枯れた木。
「うわ−、やっと頂上ね。」京子は上着を脱ぐ。
どぎまぎする耕一。
「きれいな眺めね。あの上に見えるのはさっきの氷河?」
「そうだよ。さっきよりずっと良く見えるね。川が凍って融けなくて、流れがとまっちゃうから、ただの小川があんなに おっきくなってるんだ。」
 寄り添う二人。
「なんだかなつかしい気がするわ。私あなたを好きになりそう。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まもなく二人は愛し合い、結ばれ、子供ができた。
 二人は大きくなった子供を連れて、思い出のスイスアルプスにバカンスにやってきた。

「登ってみましょうか。あの場所。」
「そうだね」
またあの頂に登ってくる。白骨化した木々のうち、何本かは既に倒れている。
「何度見てもきれいな眺めね。あ、でも氷河、小さくなってる。こないだ来たときは、あの小屋のところまであったのに・・・」
「この木も、これ酸性雨って言うんでしょ。樹が枯れていくの。」
「ほんとだ、前来たときはそんなもんかって思ったけど、一面枯れ木なんておかしいものね。」
「そうよ、ここ、昔は緑の林だったのよ。」
子供の智恵は、景色なんか見ずに、土を棒でつついて遊んでいる。
「あ、見て、この岩、何か彫ってある。」 
「みーむ、ぱど?」
「なんだか懐かしい」
「このあいだは景色ばかり見ていて気付かなかったんだ。」
突然、智恵の近くの大木が倒れ始める。身が竦んで動けない智恵。
京子は無意識のうちに呪文を唱える。
 その瞬間倒れかけた樹の動きが止まる。智恵助かる。目を見合わせる二人。
 「これ、何?わたしたがやったの?」
 「信じられないけど、ちょっと試してみよう。」
 耕一、小さな石を転がす。京子、手を使わず呪文で石を止める。
 「思い出した!わたし魔女だったんだ。あなたは、」
 「パド・・・・」「君は」
 「ミーム」
 二人は手を取り合い抱き合う。
 「逢えたのね。本当にまた逢えたのね。おまけに子供まで、・・・・・・・・・・・・・・・・なんだか恥ずかしい」

 「昔見た氷河はもっと大きかったから気づかなかったんだ。」
 「そうだったわ、あの小屋どころか、そこの麓の谷のとこまで大きな氷が覆ってた。とっても雄大で・・・でも融けていったのね。」
 「温暖化か・・・」
 「やらなければいけないことも思い出したわ。」
 「世界を・・・・救うこと?」
 「ええ、そのためにこの命を・・・」
 「何バカ言ってるんだ。このままで幸せじゃないか。忘れちまおうよ。」
 「本当にそう思うの?私今何もかも見えるのよ。どこへでも心を飛ばすことができてしまうの。お願い手を、手を繋いで。」

舞台照明消え、客席周囲にスポットライト。
・・・飢える人々、銃弾に倒れる人々、奪いあい殺しあう人々、殺される子供たち・・
・・・ひび割れ乾いた大地、燃える熱帯林、崩れ落ちる氷河・・・・
・・・同じこの世界で同時に起こっているのに見えていなかったものがそこに展開する・
 「これが、同じこの世界?途上国にはこんなにかわいそうな人たちもいるんだ。」
 「違うわ、さっき食べたのは何?」
 「えびのコキ−ル」
 「その海老は、ほら、あそこで畑にしがみついてる人に僅かなお金を渡して引き剥がし、養殖してるのよ。そして数年で養殖池は薬と汚物にまみれてもう何も育たなくなるの。私たち毎日何してるの?食べて寝て机にむかって仕事して。何も作ってないじゃない。限られた世界の中で、何も作らないなら、飢えて死ぬのよ。
 ガソリンで動く車があれば馬の世話はいらない。耕耘機があれば、腰を曲げて耕す必要はない。多くの人が泥にまみれるしんどい仕事から離れて夢のような暮らしができてしまう。キ−ボ−ド叩くだけでお金が手に入り、汗水たらして食物をつくらなくても生きていけるこの世界、これこそファンタジ−よ。石油は尽きる。鉱石も尽きる。大気は二酸化炭素で満たされ、灼熱の中で都市は海に沈む。夢はいつかは醒めるの。多分、この子が生きているうちに。これはファイナルファンタジ−、最終幻想。見えるのよ。この子も死ぬの。私、見えてしまったの。こんなのもう耐えられない。こんな今の私に幸せはないわ。」
 「分かった。でもこの子はどうなるんだい、なんにもできないこの子を置いていけるわけないだろう。生きるすべなんか、おれだって何もしらないんだから。
 ・・あ、俺も思い出した。木の切り方、麦の育て方、石のナイフの作り方、肥料の作り方、水路の掘り方・・・・よし、教えよう、この子に何もかも。生きる術の全てを!それが終わった時・・」
「その時・・二人で唱えよう。最後の呪文を。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「調べたんだけど、日食は3年後だな。あと3年、がんばるぞ。」
「今日仕事やめたわ、マンションも売って田舎に小さな畑を買いましょ。」
「うん、早く引っ越そう。」
 田舎の家にやってきた3人、
 大変なスパルタ教育が続く。腕立て、まき割り、鍬使い・・・・。
 川で洗濯、機織り、繕い・・・・
 幼く甘えん坊だった子は逞しく成長した。
 3年たったその日。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第3幕 <光>
 「明日からパパとママはお仕事で遠くに出掛けるからね。」
 「随分帰らないかもしれないけど、留守番しっかりね。」
 「畑の世話を忘れるなよ。火の始末に気をつけろよ。」
 「大丈夫よ。私もう9才なんだもの。なんでも自分でできるわ。」

 翌朝、二人が起きると、朝食の用意ができている。
 「朝一人で山で鳥を捕ったの。一人で火を起こしたんだよ。料理だって大丈夫。ほら、おいしいよ。しっかり食べてお仕事がんばってね。お弁当も作ったよ。持っていって!」
 おもいきり子供を抱き締める二人。涙の止まらないふたり。

 山の頂に登る。
 一人娘が作ってくれたお弁当。最後の食事。3人で力を合わせて耕して収穫した米。一粒一粒慈しみながら食べる。

二人は手を繋ぐ。声をそろえて呪文を唱える。
 「一つに結ばれた二つの心、一つに結ばれた二つの命。この全てを今カオルマに捧ぐ。
呪いよ解けよ! 欲望に秩序の枷を、知性に復活の翼を。・・・・・・!」
 二人は抱き合いながら崩れるように倒れる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人々はキ−ボ−ドから手を離し、画面を見つめるのをやめ、立ち上がる。
「この列車は次の駅で運行を停止します。」
「浜岡、駿河、東海の各原子力発電所は順次停止モ−ドに入りました。」
「原子力潜水艦ノ−チラスから入電、最寄りの港に入港。核発射装置に封印して全機能を停止するそうです。ネバタICBMサイロから緊急連絡、回線開きます。」
「こちら、ネバタサイロ433。今核弾頭を取り外し、全要員の退避後、入り口を爆破した。ハハッハ爽快だな。」

「現在世界各地で交通機関の運行、発電所工場等の運転が一斉に停止しつつあります。残された水力発電電力は消防、警察、医療機関に優先供給されます・この放送はただ今より終了します。ありがとうございました。」
「管制塔、管制塔、こちらGA433便、本機は経路途中ですが、緊急着陸します。滑走路使用を許可願います。理由は・・・」
「こちら管制塔、理由は解っている・・着陸したいからだろう。あはは。許可する。」

 テレビが消える。車が止まる。行き交う人々の動きが止まる。喧騒が止む。

 全てが静寂に包まれた世界。
 突然人々の心のなかに明るい少女の声が響く。
「私の名前は智恵。今朝、両親を亡くしたばかりの9才の少女です。驚かないで聴いて下さい。今、私は皆さんの心のなかに直接呼び掛けています。
 全ての産業が停止しようとしています。途方に暮れている人も多いでしょう。何がなんだかわからない人も多いでしょう。でも、私は、今、何が起っているのか、これから皆さんがどうしたらいいかを知っています。
 皆さんの心は、今から400年前に掛けられた黒魔法、カオルマの力で闇に閉ざされていました。欲望が解き放たれ、知性が曇らされ見るべきものが見えなくなっていました。そのために、多くの人々が奪い合い、争い、血を流してきました。限りない欲望は大地の富を掘り起こして消費することを豊かさだと錯覚するようになりました。
 でも、その闇は今吹き飛ばされたのです。今停止を始めているのは持続不可能な産業だけです。世界は終わろうとしているのではありません。全てがこれから始まるのです。部屋の中にいる人は外に出てみましょう。そして明るい空を見上げて下さい。闇が取り払われ、研ぎ澄まされた心には、希望の光が見つかる筈です。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 全員歌いながら舞台に集まってくる。手に手に鍬を、篭を持っている。歌いながら耕す男たち、落穂を集め、機を織る女たち。
           これで、演劇ファイナルファンタジ−を終わります。

 

第4幕 <闇>
 突然照明消える。舞台中央には耕一と京子。
京子、ゆっくり眠りから醒める。
「あ、私夢を見てたんだ。高校の文化祭。魔法が解けて世界が救われていくお話。主人公はあなたと私。あの頃は楽しかったな、徹夜で劇の練習して、帰りにタコ焼き食べて、応援団でバカやって。私たち、この劇がきっかけでお互い意識し始めて・・・
 それからあなたに恋をして、修学旅行の南の島のヤシの木陰でファ−ストキス。最高の最高の高校生活。大学を出るとすぐ結婚したのに、なかなか子供はできなくて、やっと生まれた私の智恵。」ク−ファンに寝ている人形をいとおしそうに抱き締める京子。

スポットライト、耕一だけを照らす。
「ぼく達の一人娘、智恵は本当はあそこに眠っている。(舞台隅の小さな十字架にスポット)3年前にがりがりに痩せて、最後に「智恵、ぱぱとままに逢えて楽しかったよ。でも、もうだめみたい。ごめんね。」って言って。・・・・・
 こうやって、20年も前の文化祭の夢を見て、幸せな高校時代を思い出して微睡み、また眠りに就く京子。あの日からずっと心は眠ったまま。何度も何度も同じ夢ばかり見続けている京子。もう僕の手では起こすことはできない。その日から・・ずっと。
 現実の世界は最悪だ。人口80億、不足する水、食糧、資源。温暖化で水没する平地。もう希望はどこにもない。なんでも機械がやってくれる、なんでもコンピュ−タがやってくれる。そしていつのまにか資源は尽きていく。そんな誰も何もつくらない世界なんて、やっぱりファンタジ−だったんだ。潰れるのは当然だったのに、そんな当たり前のことさえ気付かなかったんだから・・・・自業自得ってやつかな。」

「ただ今、温暖化で溶けた南極の氷床全域が太平洋に崩れ落ちました。大型の津波が日本に来襲します。大阪での波の高さの予測は40メ−トルです。高台に避難して下さい。繰り返します。高台に至急避難して下さい。」映りの悪いテレビのキャスターがわめく。

「ああ、この僕の悪夢も、京子のファンタジ−も終わるんだ。さようなら、京子、さようならみんな、さようなら楽しかったこの世界。さようなら智恵!」

                  ・・終・・




HPに戻る

作品館に戻る