人魚姫シナリオ版

  人魚姫25c   最終版       
キャスト 人魚姫:  
     娘たち:  悪魔: 
     難民の女:     難民:  
     船員:   
     7人の小人:
     舞踏会の男女:
     ナレ−タ−:

幕前 プロロ−グ
<効果:自動車騒音、街頭のざわめき、英語ニュ−スなど 静かな海の渚の音>
ナレ−ション:多人数で
 昔、愚かな種族がこの世界を覆っていた。その数およそ90億。
 その世界では汗水たらすことなく麦が実り、草を与える事なしに鉄の馬が走った。
 全てを覆う目に見えない網からは言葉と光が溢れ出た。
 しかし、彼らの魔術は燃える水と石の蕩尽と共に終わり、
 彼らの世界は自らが招き寄せた海によって沈んだ。
 それから数百年の歳月が流れた。  

     <幕開く>

第1幕 人魚のお城。
@人魚の娘の夢
<音楽:「恋を期待する歌」にあわせて踊りながら演技>  
女王:「おまえたちは、もう15の歳になりました。今日から海の上に浮かび上がって暮らすのです。海の上は青い空が広がり、緑の島があり、とても綺麗で明るいところです。そこで若く逞しい人魚の若者を見付けて結婚し、子供たちを産みなさい。」
7人の人魚:「はい。」「は−い。」7人の人魚たちは素直に返事をしました。

A襲いかかる網、助けてくれたクジラ
<音楽:突然切り替わる。戦闘シ−ンにふさわしいもの>
<演技:大きな網が上から降りてくる。人魚の女王は、網を切ろうと暴れる。>
<集団:魚の群れ、逃げ惑う。>
7人の人魚:「女王様!」
女王:「私にかまわず海の上に行きなさい。今日は旅立ちの日、皆さんの命の輝きはあと僅かです。素敵な人魚の若者と出会い立派な赤ちゃんを産むのですよ。」
<演技:人魚の女王は網に絡めとられて捕まってしまう。>
<演技:網は人魚達にも迫ってくる。そこに大きな鯨があらわれ、網を破り人魚の娘たちを助ける。>
<音楽:終わり>
クジラ:「さあ、おいき、明るい世界へ。この網は人間が仕掛けたものだ。人間は海の生きものを次々捕まえて殺す。決して人間に近寄ってはならない。俺は今から女王様を助けにいく。」
<演技:鯨静かに去る。>


第2幕 大海原を行く華麗な王子の船
@王子の船
<音楽:静かな波の音>
ナレ−タ−:人魚姫たちは生き延び一人づつ美しい青い空と緑の島の間に浮かび上がりました。そして、若者の人魚と出会い恋をしました。でもいちばん下の人魚姫は、大きな船の前に浮かび上がってしまいました。
<大道具:輝く船出現。帆柱や窓はランプで飾られている。>
<演技:人魚姫、船に近付く>
難民1: 「おれたちゃ、幸せだ。王子様の国に住めるんだものな。」
難民2: 「王子様の国にや、なんてったって飢えも寒さもないもんな。」
難民女: 「ああ、もう子供たちを死なせることもないのよ。」
難民1: 「国中明かりが灯っているそうな。」
難民女: 「国中食物が溢れているそうよ。」
難民1: 「おお、王子さま。御機嫌うるわしゅうございます。」
難民女: 「この度は我々のようなものをお国に入れて頂けるとのこと。これ以上の光栄はありませぬ。」
<演技:着飾った美しい王子あらわれる。>
<演技:人魚姫、うっとりと王子をみつめる。>
王子: 「頭をあげなさい。そんな仰々しい真似はいらないよ。この国では全てが自由です。好きな仕事でがんばればそれで良いのです。どうぞ楽しく暮らして下さい。」
難民一同: 「ありがとうございます。王子さま」
人魚姫:「ああ、なんて素敵な王子さま。この人が、悪いことをするはずはないわ。あの人たち、あんなに喜んでいるのだもの。きっと何かの誤解なのよ。」
船員一同: 「さあ、一緒に歌おう。今日からおれ達の仲間だ。」
<演技:船員たち、難民と肩を組んで歌いはじめる。> 
<合唱、舞踏:船員、難民>
−この国にや、税取り役人はいない。皆王子様のおかげだ。
−この国にや、いつも豊かで楽しい暮らし。皆王子様のおかげだ。
−今日もレンガのお城にランプが輝く。明るい光はおれたちの国の誇り。

A沈む船
<効果:激しい風と波の音>
<演技:船員、難民、あたりを見回す。王子は船員を指揮し波と戦う。>
<大道具:波が高くなる。鯨があらわれる。>
<演技:人魚姫、クジラに声をかけようとするが、クジラは気付かない。>
<大道具:鯨は船に向かっていき、船にぶつかり、船は軋み、折れて沈む。>
<効果:鈍い激突音、船が軋み、折れる音。>
人魚姫: 「あ、王子さまも沈んでしまう。」
<演技:人魚姫、王子のところへ泳いでいき、波と戦いながら王子をかかえ続ける。>
<効果:波の音、静かな渚の音に切り替え。>
<演技:人魚姫、王子を浜辺に下ろし、息を確かめる。人魚姫、後ろ髪を引かれつつ海に戻る。>

第3幕 魔女の館
<効果:ピチャン、ピチャンというおどろおどろしい水音。>
人魚姫:「魔法使いさん、どうぞ私を人間にして下さい。」
魔女:「ほう、人間にか。なんともまあ粋狂な。そんなものになってどうするね。」
人魚姫:「好きな王子さまと一緒になりたいの。」
魔女:「おまえは頭がおかしいのかい。人間が何をしているのか知らないのかい。」
人魚姫:「女王さまやクジラから聞きました。でも、でもあの王子さまがそんな人の筈はありません。」
魔女:「まあ、よろしい、薬をあげよう。これを飲めばしっぽは縮み足が生え、おまえの短い人魚の寿命は人間のように長くなる。だが、歩くたびにナイフで刺されるように痛むがそれで良いか。そうそう、代金代わりに、お前の舌を抜いて可愛い声を頂くぞ。それでもええかえ。」
人魚姫:「はい、人間になれるのなら、なんでも耐えます。」
魔女:「さあ、薬ができた。」
<演技:人魚姫、薬を飲む。舌を抜かれる。倒れる>

第4幕 王子のお城
@目覚める人魚姫
<音楽:落ち着いた音楽>
<演技:人魚姫、ふかふかのイスの上で目覚める。隣に王子が立っている。>
王子:「あなたは、今朝、浜辺に流れついて城の者に助けられたのです。どこから来たのですか、名前はなんですか。」
<演技:人魚姫は答えられない。>
王子:「かわいそうに、口がきけないのですね。」
王子:「じゃあ、ここに書いて下さい。」
<演技:人魚姫はくびをふる。>
王子:「海の中を漂っていたとき、私の体を誰かが支えてくれた気がしました。その時の仄かな香は、おお、あたなのその髪の香と同じだ。ああ、あなたが私を一晩中抱き締めて浮かんでいてくれたのですね。」
<演技:人魚姫、こっくり頷く。>
王子:「何はともあれ、あなたは私の恩人です。どうかここで暫らく暮らして下さい。」<演技:人魚姫はにっこり笑って大きく頷きました。>

A舞踏会
<効果:華やかにライトアップ>
<音楽:華麗な恋の成就の歌、全員合唱>
<演技:城の人たち、船員、小人たちによる大舞踏会がはじまる。>
<演技:人魚姫、痛みに耐えながら王子と踊る。>
<効果:暗転(幕は閉めずに一旦照明を消す。)>

B城の裏で
<演技:人魚姫、お城の裏で大きなクジラが引きずられているのを見つけ驚く。>
船員1:「今日は大漁だ。この大鯨を見てみろよ。ランプの油が山ほどとれるぜ。」
船員2:「こいつが王子の船を沈めた。おれの友達もあの時死んだんだ。」
船員3:「この野郎、苦しめ。苦しみながら死んでいけ。」
<演技:船員たち、まだ生きているクジラに斧を振るい、油を絞り始める。>
船員1「殺せ殺せクジラを殺せ。」
船員2「たっぷり油を搾り取れ。」
船員全員「売った油で大儲け。麦でも鉄でも何でも買える。」
船員全員「汗水垂らして耕すよりも、汗水垂らして木を植えるより、
 クジラ捕りは気楽なものよ。一匹殺せば寝て暮らせ、10匹殺せば城が建つ。」
<演技:人魚姫とクジラ、目があう。>
ナレ−タ−:鯨は最初は驚き、そしてすぐにとても悲しい目をしました。人魚は思わず目を伏せてしまいました。
<演技:船員:大きな斧を振り下ろす。>
<演技:人魚姫、もう一度鯨を見る。鯨はもう死んでいる。>
<大道具:大きな網が運ばれている。網の中に捕らえられているのは人魚のお姉さま。>
<音楽:船員、難民全員合唱>
−人魚が獲れたぞ。
−高く売れるぞ。見せ物だ。
−珍しさは世界一。
−売った人魚で大儲け。麦でも鉄でも何でも買える。
−汗水垂らして耕すよりも、汗水垂らして木を植えるより、
−人魚捕りは気楽なものよ。一匹捕れば寝て暮らせ、10匹捕れば城が建つ。
<演技:人魚姫、なにか叫ぼうとするが、声は出ない。
<演技:人魚姫とお姉さん、目があう。お姉さんは最初は驚き、そしてすぐにとても悲し
い目をする。人魚姫、思わず目を伏せる。人魚姫、もう一度目を開くと、お姉さまはもうどこかへ運び去られてる。>
ナレ−タ−: 人魚姫の心は張り裂けるように痛みました。クジラや女王様が忠告してくれていたことは本当だったのです。綺麗だと思っていたお城や船を飾るランプの油は鯨を殺してとっていたのです。王子さまのお陰で皆楽しそうに思えたこの国は、鯨を殺してとった油や捕まえた人魚をまわりの国に売って楽な暮らしを得ていたのです。


C沈む人魚姫
<演技:人魚姫、泣いている。>
王子:「どうしたんだい、姫。いったい何があったんだい。私がなにかしたのなら謝るよ。いったい何を悲しんでいるんだい。さっきはあんなに楽しく二人で踊ったのに。」
<演技:王子、仕方なく一人で寝室に戻る。>
<演技:人魚姫が一人淋しく海を見つめている。>
<演技:5人の姉さん達の声がする。短刀がテラスに投げ込まれる。>
人魚たち:「このナイフで王子を殺して。そうすれば、魔法は解けてあなたは人魚に戻れるわ。女王様やお姉さまを捕らえ、くじらを殺した人間なんて八つ裂きにすればいいのよ。」<演技:人魚姫、ナイフを持って王子の寝室に向かう。>


D終焉
<演技:人魚姫、王子と向き合い、ナイフを構え王子に向かっていく。しかし、最後の瞬間、立ち止まり、正面を向き、自分の胸にナイフを突き立てる。>
<演技: 魔女が現われる。>
魔女:「どうやら間に合わなかったようだね。王子とやら、その娘がなにか知っているのかい。おまえが恋したのは人魚の娘だよ。クジラの友達の人魚の娘だよ。おお、私が奪い取った声が戻ってきたぞ。ほら、命の尽きるその前にしっぽが生えてきただろう。おまえが見せ物に売っている、その人魚の娘だよ。」
王子:「しかし、魔女よ、私は国の民のことを精一杯考えてきた。民が豊かに暮らせるよう思ってきた。そのためには鯨の油も人魚売りも仕方なかったのだ。」
魔女:「本当にそうかい。今、命の消えゆく、おまえを愛した人魚姫の前で、本当に心からそう言えるのかい。なぜこの世界が海ばかりになったのか、王子、お前なら知っておろう。愚かな国々の王達も、民のことを思い、豊かな暮らしを求め、燃える水と石に手を出したと伝えられておる。汗水垂らすことなく麦が実れば民は喜ぼう。草刈りの苦労なしに馬が走れば民は喜ぼう。しかし、物は使えばなくなっていく。鯨を人魚を取って売る日々をいつまで続けられると思っていたのか。おまえは本当は民からの称賛が欲しかっただけではなかったのか。」
魔女:「私の僅かばかりの魔力でお前の心にいいものを見せてやろう。ほら、見えるかえ、これは今消えていく人魚姫の記憶だよ。人魚姫がどんなに必死でお前を助けようとしたか。
どんな決意で人間になったのか。どんな思いで切り殺されるクジラを見たのか。どんな気持ちで捉われて人魚を見たのか。」
王子:「間違っていたのは私だ。鯨も人魚も捕れば尽きる。僅かな間にしか見ることのできぬ幻想の豊かさを示し民を騙したのは私だ。クジラを殺し、人魚を売り、優しいこの子の心を引き裂いたのは私だ。私は私の存在を許すことができない。姫、好きだった。誰よりも愛していたよ。私も今、そこへ行こう。決して一人にはさせない。」
魔女:「それでお前は死ぬのか!そうして逃げるのか!」
<演技:王子、振り上げた剣を自らに突き刺さそうとするがやめる。>
王子:「じゃあどうすればいいんだ。」
魔女:「生きてこの国を変えてみろ。おまえが死んで、姫が喜こぶと思うのか。」
王子:「・・・・・・・・・・・・お願いがあるんだ。どうか、あたなの魔法の力で最後に一度だけ姫と話をさせてもらえないものだろうか。」
魔女:「いいだろう。そのかわりお前は全ての富を失うが、それでも良いか。」
<演技:王子、深く頷く。>
<演技:歌声の中、頭に輪を頂いた人魚姫が立ち上がる。人魚姫と王子は向かい合い、手をとる。>
<音声:ティンカ−ベルのような魔法の音>
人魚姫:「魔女さん、ありがとう。私、死ぬ前にこうしてあなたと話せてよかった。ずっと人間のままだったら、あなたと話すことはできなかったのだもの。」
王子:「何もかも私のせいだ。あたなの心を死に至るほど傷つけたなんて。」
人魚姫:「私、許せなかった。あこがれていたあなたがクジラさんや女王様を殺し、姉さんを捕らえた張本人だったんですもの。だから、あのナイフで本気であなたを殺そうとした。でも、その時、あなたと出会ってからの思い出が頭の中を駆け巡ったの。そして、豪華な船に、綺麗な明かりに、綺麗な服に、惹かれたのは私だったってことがわかった。くじらさんの油で燃える光に憧れていたのは私だったのよ。私、そんな自分が許せなかった。綺麗な服を頂いて踊って、幸せだった。その自分が・・・。あなたはみんなの夢を叶えようとしただけなのよ・・・・・・・。」
王子:「君にもう一度逢えてよかった。私は必ず新しい世界の幕を開いてみせる。」
人魚姫:「それはどんな世界かしら。」
王子:「皆で力をあわせて働くすばらしい世界をこの腕で汗を流して作り上げたい。だから、どうか天から見守っていて欲しい。」
唱和:「明るいランプはいらなかった。」 <大道具:城のランプ全て消える。>
  :「豪華なお城はいらなかった。」  <大道具:城、消える。>
  :「綺麗な服はいらなかった。」   <演技:二人、豪華な衣裳を脱ぐ。>
  :「大切なもの、それは皆で力をあ  <演技:人魚姫の背中に羽があらわれる。>
    わせて働くことだったのだ。」  <演技:抱き合う二人。そして幕。>
      
************カ−テンコ−ル*********
<音楽:明るい音楽。>
<照明:舞台明るく。>
<演技:手に手に鍬や鋤を持ち、大地を耕す人々。王子ら全員並んだその列の中央に、天使の輪と羽をつけた人魚姫があらわれる。>
王子:「これが私が姫と夢見た新しい世界への階段だ。」
全員:「ありがとうございました。」          

                                           −−−終−−−


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