伊賀ギフチョウネットワーク発足 背景クルミ
1999年1月30日(土) 絶滅の危機にある伊賀のギフチョウを守るために本ネットワークを発足させました。
当日、午前中は発生地の下草刈りを行い午後1時から上野市予野のJA伊賀北部花垣支店の会議室で結成集会を行いました。 自然を愛好する約25名が参加しました。
★ 保護活動のキャッチフレーズの決定
We love ギフチョウ
Live with ギフチョウ
Lovely luehdorfia (愛しのギフチョウ)
(注) luehdorfia(ルードルフィア)はギフチョウの学名
Lively luehdorfia (生き生きしたギフチョウ)
★ 行動目標(活動の合言葉)の決定
ギフチョウを調べよう!
ギフチョウを育てよう!
ギフチョウを守ろう!
◎ 調査活動 ◎ 採集自粛要請活動 ◎ 陳情活動 ◎ 下草刈り活動
◎ 地域活動 ◎ 教育普及活動 ◎ 飼育・復活活動 ◎
●調査活動
まず過去の文献と照らしながら,ヒメカンアオイの分布産卵調査,成虫の飛翔調査を行い,正確な現状把握に努めたところ,針葉樹の植林,農業形態や生活形態の変革による里山林の荒廃,宅地化ゴルフ場開発等で,かなりの数の生息地からギフチョウが消滅し,残っている生息地もその数が著しく減少していることを再確認しました.
よく知られている生息地には,採集者が来ていることも確認しましたし,このような場所に限って,翌年の4月には成虫に出会うことが困難になり,産卵数も非常に少ないことがわかりました.
生息地で採集者に出会ったとき現状を説明し,しばらくの採集自粛の要請活動を行いました.
しかし残念なことに,採集者には“風前の灯火となりつつある命”という認識は有りませんでした.わざわざ遠くから採集に来たからには1匹は採って帰らねばという固い意志が見てとれました.
中には「たくさん標本を作って手元に置いておきたい.」と言う人や,食草を車いっぱい抜き取っていく業者らしき人もいました.
採集者と私たちとは,ギフチョウの現状に対する認識は大きく違いますが,善良な採集者とはより良き接点を見いだす努力をする必要があるでしょう.
ギフチョウを守るためには,地域指定して採集を禁止する必要がありますが,啓発と保護のための次善の策として,名張市,上野市両市に「市の天然記念物指定」の要望書を提出し,ギフチョウの保護策を立てるよう陳情しました.
わずかに残ったギフチョウ(消えずに残った灯火)が生き続けていく(燃え続ける)ためには生息環境(燃料と空気)が必要です.調査活動の項で述べたように,雑木林の林床が今は人の管理の手が入らないためにブッシュ化し,幼虫の食草ヒメカンアオイの生育状態が劣悪になっていますので,下草刈りを私達クラブ員で実行しました.
また,広く市民にも協力を呼びかけ,多くの方々がボランティア活動に参加して下さいました.
その作業は大変辛いものでしたが,これは1回ですむものではなく,今後は経常的に実行することが肝腎で,土地所有者や地域の人々の理解が必要です.
草刈り活動するにあたり,土地の所有者や地域の了解を得て実施しましたが,所有者にとって今の時代は薪を必要とせず,柴刈りをする人手も時間もなく,放置されているのが現状です.下草刈り活動は地域にとっても有難迷惑ではないようです.
これを経常的に続行するには,保護クラブ員だけの活動では限界があり,地域活動として地元と付近の方々の協力体制を作ることが今後の課題と思われます.地域の会議が開催される機会をとらえてギフチョウ保護の意義と大切さを説明してきましたが,これこそが重要な活動です.
ある生息地に道路が建設されると聞き,地域の会議に出向いてギフチョウを守ること,すなわち“ふるさと”を守ることの大切さを説明し,市や県の担当課へ陳情したところ,生息地を迂回すべく検討されているようです.
ギフチョウを守ろうと訴え始めて,最も生き生きと目を輝かしたのは子ども達でした.
ある小学校やガ−ルスカウトに呼びかけ観察会を実施したところ,小学生はヒメカンアオイの葉の裏に産み付けられた卵の美しさに感動し,学校で飼育に取り組むこととなりました.ガ−ルスカウトの子ども達は育てたギフチョウの羽化を観察し,そのときの感動文を寄せてくれました.
大人には現状を知ってもらうため観察会を開催,新聞等に記事が載せられ少なくともギフチョウなるものの存在をアピールすることが出来ました.
採集者に対しては看板を設置し,ギフチョウ保護活動への理解と採集を控えるよう協力を訴えました.
採集自粛要請活動も陳情活動もなかなか前進しない状態で,手をこまねいているわけにもいきません.ギフチョウ伊賀種を絶やさないために,経験者の指導のもと人工飼育をすることとなりました.
ほとんどの保護クラブ員は飼育経験がなかったので,うまく育つか否か当初は非常に心配しました.結果は,幼虫の食草ヒメカンアオイや,蛹化および越夏越冬の場所さえ確保できれば意外と簡単でした.はじめての飼育にかかわらず,たくさん蛹を野外へ放すことができました.
調査活動で産卵が認められなくなった,緑が丘北側の山地(夏秋地区)に,クラブ員が飼育した蛹約50匹を,ガールスカウトの子ども達などと一緒に放しました.その後の追跡調査でたくさんのギフチョウの飛翔を確認し,子ども達の協力を得て綿密な産卵調査を実施したところ,予想を越える産卵を確認しました.
来年はこの産地が復活発信地となって生息が周辺へ拡がることを期待するとともに,マーキングによる移動調査を実施し,ギフチョウ盛衰の実態が究明出来たらと考えています.
さらに本格的な生息復活を誘導するためには,健全なギフチョウ伊賀種の確保管理の行き届いた雑木林の維持のほかに成虫の蜜源植物の確保を確実なものとしなければなりません.私たちは蜜源植物として景観植物にもなるレンゲの栽培を考えています.