6/6 thu. [ 優しい気持ち ]
少しぐずぐずしていて、家を出るのが5分遅くなった。こんな時に限って、エレベーターが各駅停車だったりする。8階で乗ってきたおじいちゃんは、僕に丁寧な朝のあいさつをしてくれた.。しかし僕は各階に止まるエレベーターにむっとしていて、きちんとあいさつを返すことが出来なかった。エレベーターのドアが閉まりかけた瞬間、おじいちゃんは「開」のボタンを押し、ドアを開け戻した。「今、伊東さんがちらっと見えたから」小走りになって伊東さんがエレベーターへ駆け込んでくる。急いでいる僕はさらに不機嫌になった。***おじいちゃんが誰にでも優しい人だというのは分かっているつもりだが、状況によって僕は、おじいちゃんの思いやりを煩わしく思ったりする。分かっているなら消せそうな思いだが、状況は状況であり、事実おじいちゃんのせいで、エレベーターが1階に付くのは遅れる。「そんなの数秒でしょ」と言うのも分かる。しかし「数秒」でも、遅刻は遅刻だ。「僕はそんなおじいちゃんを良い人だと思うので、部長も僕の遅刻を優しい気持ちで受け止めて下さい」などとさらり言ってのけるのが、立派な人のすることなのだろうか。「立派な人は早起きして5分遅くなったりしない」、いやいや、だって人間だものと、あいだみつおも言っているではないか。***いらついて、弾き出すようにエレベーターを飛び出した。いつもと見える景色が違う。・・・メガネを忘れていた。 |