8/30 thu. 東京ドーム
東京ドームの帰り、池袋のJR線きっぷ売り場で突然声をかけられた。「あ、あの〜横浜まで行きたいんですけど〜」、もっさりした少し障害でもありそうな男だった。一瞬体に走る戦慄を抑え、「困ったな、あんまり電車くわしくないんだよな、駅員さんに聞いてあげようかな」と思ったとき、男は続けた「電車賃を貸してください」と。僕は少し激情して、まるで犬でも追っ払うように、シッシッとやってしまった。さっきの親切心はどこへいったのか、180度傾く感情が滑稽だ。この変化は、もちろん「金額」による「痛み」だと思うが、きっと10円でも同じだったと思う。しかも、「あんな野郎と接点を持ちたくない」のが理由だと、言い訳の場所も確保しただろう。
僕の親切は、いくらくらいなのだろう。
その電車の中で、「塩狩峠」を読み終えた。2度目の読破だった。15年ほど前呼んだときは、泣くに泣いた覚えがあるが、一体どこで泣いたのか、それすら思い出せない事がショックだった。テーマには「犠牲」があるが、きっとそこでも、まして「宗教」でもなく、ふじ子の事を思って泣いたんだろうと、15年前の自分まで鼻先で笑い飛ばす今の自分だった。「死」は決して美しいものじゃない。自ら絶つ命を正当化する事はありえないと思う。少しの犠牲でも、横浜までの電車賃を、あんなみすぼらしい男には払えない、「俺なら歩く!」こんな僕に、文句があるか。
世の中に怖い物って本当になくなったような気がする。 |