2002/8/11 sun.

祖母谷地獄
H E L L S P A B A B A D A N I

富山県の観光ガイドが、真っ黒になるほどの電話番号で埋め尽くされていた。

先日納入したばかりの商品が、よりにもよって、連休の初日に動かなくなったというのだ。果てしなく落ちるような現実を、僕は金沢の野球場で聞かされた。

納入したのは特種な商品である。距離や時間の問題を考慮しなくても、お手上げな結末が訪れることは容易に想像できた。僕が戻ってどうにかなるなら、速攻で戻り策を打つところだが、あいにく僕は、販売を担当するだけの営業マン。僕が戻ったところで、メカニックが休んでいては、どうすることも出来ない。


104で心当たりのある業者の電話番号を片っ端から聞きだし、動かなくなった商品の代替品の手配を試みた。

埼玉だけではなく、東京の業者も全て当たった。しかし、当たり前だが、どこの業者も連休に入ってしまっていて、代替品を手配する事は出来なかった。上司と連絡をとってから、僕は先方の担当者に 「どうする事も出来ない」 旨を伝え、ただひたすら頭を下げた。

本当にどうすることも出来なかった。
営業マンとして出来る限りのことはしたのだと、僕は自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えようとした。ここは宇奈月温泉駅なのだ。これ以上引きずっていては、自分にとっても無駄に損害を出すだけになる。

しかし、代替品への望みは捨てきれなかった。

トロッコ電車に乗ってしまえば、携帯電話が圏外ゾーンに入ってしまうかもしれない。僕はどうしても切符を買う事が出来なかった。
折り返しの電話を待ちながら、僕は宇奈月ダムの周辺を散策した。早朝の宇奈月ダムには、僕以外の誰もいなかった。ガラスの中に突然現れたピチョン君が、水力発電の素晴らしさを、僕だけにそっと教えてくれた。

だんだん楽しくなってきた。
それでも、猿やカモシカが現れたなら、八つ当たりのストレートを、膝下いっぱいにお見舞いしてやった事だろう。

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