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スノー・トレッキング・ツアー体験記
2003.3.16
主催 宮城県栗原郡栗駒町くりこま高原自然学校
栗駒のどっしりとした山容を背後に感じながらブナ林に入っていく。夏場は,笹や灌木でとても入っていけないという斜面も1メートル以上積もった圧雪の上は,スノーシューなどの道具の力を借りれば快適にトレッキングできる。沢も埋まりアップダウンが少ないから楽だ。 白い,でも身に暗緑色,暗灰色の苔をまとって空高くすっと延びたブナや自然の力によって荒々しい樹形になったミズナラが,春めいた青空に枝を広げている。ブナの中には,昨年落実した残りの殻斗がたわわについている個体もある。豊作年ではなかったようだが,何割かの樹木が相当量を結実させることでこの森の住人達を養っているのだろう。 ブナのように白い樹幹だが枝の分岐が少なく太いのは,ホオだ。冬芽は大きくすっと空に向け尖っている。大きな芽でビロードのような細かい毛で覆われているのは,こぶし。 ガイドが形はうさぎなのに亀と言われているを知っていますかと,謎解きのように問う。 後でおおかめのきの冬芽の形がうさぎの頭のようになっているのを教えてくれた。 積もった雪の上には,ホンドリスやノウサギ,カモシカ,ホンドキツネ,テンなどの足跡が至る所に残っている。新しい足跡があれば,その後を追跡してみる。ノウサギの足跡が灌木のしたで交錯していれば,その上には,冬芽を食害された樹木の枝先が鋭利に切断されている。蝶のような形をしたホンドリスの足跡は,立派な樹木の幹と積雪の間にできた雪洞へと消え,その後にテンの足跡が続いている。いつだかの夜に生死をかけたドラマが繰り広げられていたに違いない。
幹廻りの立派なブナの脇でガイドがスコップをふるい造ってくれた雪のテーブルセットでランチタイム。ガスバーナーでお湯を沸かし,インスタントラーメンやコーヒーをいただいた。 身体が暖まったところでゴール目指して山を下っていく。ブナ林をぬけるとドウダンツツジやウラジロヨウラクの多い低木林帯に入る。この辺りは,戦後大陸から帰還した人の開拓村があったそうで,その頃切り開かれたブナ林の跡だと教えてくれる。国の政策で大陸に渡った人達が,国の戦争で命を縮め,ようやく帰国できた後も身よりがなければここのような厳しい環境で生きることを強いられた。その人生は,我々高度経済成長期以降に生を受けた人間には想像を絶するものがある。 ガイドによれば当時の開拓村の住民のほとんどが山を下り,現在残っているのは一軒のみだという。 開拓された跡だという緩やかな雪原を下って自然学校に到着。このツアーが無事終了した。
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