ディオンの『結びの神』
 
 

 暑い、ひたすら暑い 

・・・・・・ともかく徹底的に暑い

近くではミンミンとセミが 自分の存在を主張してやまない

さらに近くでは旧式のクーラーが轟音を立てて、

自分の存在価値を主張するのに懸命だ

なぁ クーラーの存在価値は部屋を冷やす事にあるのであって

その音にあるわけじゃないだろ?

そんな事を考えて オレは唇の片端を持ち上げた

 

 

今から仕事をしなければいけない

それはわかっている

いつも 締め切りギリギリなのだ

わかっている

それもわかってる

だが、それはいいとして

さっきから強迫観念めいて迫ってくる 

この一言はなんだ 

頭の中で深く浅く繰り返されるたった一言

曰く

 「ハヤク ヤクサネバ・・・」

まるで呪文だ

昨日の夕方から、オレは専門書の英文を訳していた

夕食をとりながらも訳した

訳しながらの夜食

夜、眠気覚ましとその現実の逃避の為 

ついつい杯を重ねたアイスコーヒ

ついに夜を費やし、朝日を横目に見ながら訳しに訳したる専門書の英文

そして 今日の昼の発表でそれはやっと片付いたはずだ

しかし、その切迫感だけはまだ残っていたりする

あぁ それにしても暑い

雨の1つでも降ってくれぬものだろうか?

聞けば、今年は雨の量が少なく 渇水の恐れもあると言う

雨が待たれている

雨を・・・・・・

心まで癒すような雨を

切望の雨

そういえば今朝 突然、大粒の雨がまるでスコールのように

空からパラパラと落ちてきた

降った瞬間は 「陰陽師」の恵みの雨のシーンや

レOOO オO Oナの1シーンをとっさに思い出してしまったが

ハッとする間もあればこそパッタリやんでしまい それからはまるで

「雨? そんなの降りましたっけ?」

と言わんばかりだ

示しがたいその時間を単位を使って表現すると 

およそ3分間といったところだろう

便利だが 味気ない表現だと思う

街は陽炎に僅かに烟って(けぶって)いる

 

オレは呟く

「OCEANの奴 何を考えてるんだ・・・・」

今回のタイトルが告げられたのは先週の事

彼は高らかに次の課題を宣言した

次の課題は「結びの神」

告げられた時 ともやとオレは顔を見合した

(いや これは単なる言葉の綾であって 

実際に顔を見合わせていた訳ではない)

ともや 「ねぇ 結びの神って 縁結びの神って事?」

ディオン「そうじゃない?」

ともや「・・・・・・・・」

ディオン「・・・・・・・・・」

二人の意見は同じである

「今回の御題は OCEANらしくないっ」

いや もしかしたら 

結びの神とは必ずしも縁結びの神を指すのではないのかも知れない

そう ここは冷静に考えよう

いや そうだ そうに違いない

OCEANという奴は 「結びの神」と言われて

単純に縁結びの神をテーマに書いてくる僕らを軽く笑うに違いない

そうだ そうに違いない

 

オレは知らず知らずのうちに わずかに笑っている

ハッハッハ 面白い 

こうなったら意地でも変えてやろうではないか

オレは いそいそと小学館の国語大辞典を収録した電子辞書「BOOK SHELF」

のCDを取り出し パソコンに放り込む

やがて、CDドライブの静かな音の高まりとともに電子辞書が起動した

それによるとこうだ

「結びの神とは確かに 人と人の縁を結び、親しくさせる神である

つまり、縁結びの神の事である

であるが、むすひ(産霊)の神を後世「むすびの神」と解して

結びの神に当てたもの という意味合いもある

産霊の神とは天地・万物を生み出す神であり。

高皇御産霊神(たかみむすひのかみ)

神皇産霊神(かみむすひのかみ)

等の神々を指す」

しかし たかむすひのかみは無情だった

いやいや 神が無情ではなく僕が無知であるの間違いである

・・・これは困った

今から そのたかむすひのかみのうんたらを調べ

書くのも無論、できなくはない 

しかし・・・・  しかし、NOである

何故かここはそれもNOと言わなければならぬ気がしてきた

何故なら・・・・・ 面白くない

困った

こりは困った

困り果てた俺はオレは 無意識のまま 机の端に手を伸ばす

しかし、机の端にソレはなかった

Peaceである 僕が探していたものは  

・・・・・Peaceは煙草である

それも、数ある煙草の中でも最強、最悪の一品であり

そして もっとも誇り高いを一品である

オレはPeaceが好きだ

深いブルーのパッケージに金色でPeaceのロゴ

トリが何かの草を咥えている簡潔な図柄

その鳥は鳩であり 咥えているのはオリーブの葉である

この図柄が意味するのは、聖書の有名なあのノアの箱舟の1シーンであり

鳩がPeace・平和の象徴として扱われるのもそこに起源する

実に縁起がよろしく

そして、何より・・・・ まずかっこいいのである

・・・・・・そんな事はこの際 今はどうでもいい(笑)

僕はPeaceの火をつけると 紫煙をくゆらしている

指に挟んだ煙草から立ち昇る紫煙は 

まろやかな流れを作って静かにゆっくりと渦を捲こうとしている

そして 何も考えずにその流れを目で追っている自分がいる

・・・なんとも心地よい

最近は どこに行っても紫煙には皆が煩い、愛煙家は肩身が狭くなる一方である

だがこの穏やかな流れとリズムを全く解し得ないのは悲しいのではないか?

・・・・愛煙家ゆえの僻みか?(笑)

 

外では 暗くなってきたにも関わらず

まだ 強烈にセミが鳴いている

・・・・飽きぬものだ

煩い、セミなどいなくなればいい

とはやはり言えない

彼らは短い夏をそんな風にしか過ごせないのだ

短い時間 精一杯に自分を主張しつづけて

夏も気がつけば翳って(かげって)ゆく

暑い最中の人間には長い季節に感じるのだが

やはり 確実に夏という季節も少しづつ翳ってきて

セミ達に、許される時間も確実に少なくなってきている

力尽きたセミを最近よく見る

学校の廊下で 道端で、 教室で

精一杯に自分の役目を果たしたセミ達の抜け殻を見る

時には 弱ってもう満足には飛べなくなっていてもがいているセミも見かける

彼らは 全ての役割をきちんと果たしただろうか?

短い夏をちゃんと 子孫に伝える事ができたのだろうか?

ふと そんな事を思いついて

オレはセミ達にもちゃんと結びの神が来るように願ってやった

 

 
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〜〜〜後書き〜〜〜

この物語は一部フィクションです(笑)

何がどう違うとは言いませんが1つだけ言っておきます 

・・・ディオンは煙草を吸いません(笑)

英訳でクラクラする頭で3時間ほどで書き上げました

僕にしては ハイペースです 

あとお気づきだと思いますが

普段と ちょっと文体を変えています