OCEANの『野望』
 
 

  何も望まない人間がいる。

  その人間は薄ら笑いを浮かべ、何を見ているのかもわからないその暗い瞳で世界を射抜く。射抜かれた世界は解体し、それぞれのパーツに無意味に分離する。分離したパーツはやがて消滅する。

  野望はないのか?  野望を持たない人間など人間とは呼べない。

  何も望まない人間に人はそう訴える。

  望みを持つのが人間だ。希望でも野望でもいい。とにかく望みを持て。

  だが、何も望まない人間にはそんな言葉は届かない。

  無意味だからだ。無意味だ。無意味だ。何もない。

  自分には野望があるという人間に、何も望まない人間が聞いた。野望を達成したあとはどうするのだ。野望が最終目標の時はそれでいいだろう。そのあとはどうするのだ。

  新たな野望を持つ?  いたちごっこだ。考えていない?  明確なビジョンは何もないというわけか。何も望まない人間は笑った。

  目標に至ること自体が目標で、それを野望というらしい。

  無意味だ。無意味だ。

  何も望まない人間は、生きることを望むこともやがてやめてしまうだろう。

 

  そしていなくなる。

 

  野望を持つこと。

  それは生きることなのである。

 

 
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