自給自足のエコロジー

 近代農業の限界が世界各地で露呈してきています。そして化学肥料・農薬等に依存し
ない環境に優しい生態系農業・有機農業が日本でも大きな流れとなってきています。
 現在の地球環境問題の中には、砂漠化や土壌塩類化のように、農業の中での誤った農
地管理に起因する土地生産力の退化現象が、主として工業に起因する温暖化や酸性雨な
どと並んでリストアップされています。このことは、持続性に欠ける農業はそれ自体が
環境問題の一つであることを示しており、農業の持続性を高めることが、即地球の環境
を守ることにつながるのであるといえるでしょう。
 食料の需給を見てみると、1960年から1990年までの30年間に、1.6倍の
人口増加に対し、穀物生産量は倍増し、食料需給は好転しました。これは、化学肥料・
農薬・農業機械の多量投入による近代農法の技術進歩によるところが大きいと思われま
す。しかし、この反動として、土壌侵食、地下水汚染、地下水枯渇等の問題が発生し、
現在では土地・水資源の生産力は低下しつつあります。近い将来において安定的な食料
の確保ができないかもしれないのです。
 このようななかで日本では、農産物市場開放、円高等により、農産物輸入量は大幅に
増加しました。そして食料自給率は42%にまで低下しています。それなのに私たちの
多くは、飽食を謳歌しており、食料の安定確保に関してほとんど不安を抱いていないの
が現状です。はたしてこれで大丈夫なのでしょうか。
 今、世界では、「低投入持続的農業」が行われつつあります。これはどのようなもの
かというと、農薬や化学肥料の投入を最大限に抑えることによって、地球資源と環境を
保全し、一定の生産力と収益を確保し、より安全な食料生産をすることを狙いとしてい
ます。具体的には、総合防除や複合経営を組み合わせ、環境と農業を調和させ、長期的
に利益を得るようにするのです。身近な水田で考えて見ましょう。水田の中には無数の
生命が生息しています。例えば、日本人の大好きな赤トンボは田圃で生まれ、田圃で育
ちます。水田を多様な生態系として捉え、環境としての水田を最大限に守りながら、生
産とのバランスをとる、これも環境と調和した農業です。また、使用する肥料も化学肥
料のほかに畜産で発生する屎尿をできる限り利用することにより、土壌の疲弊を防ぐこ
とができます。持続的な農業というのはつまり自給自足の農業であり、これを実行する
ことで環境も保全できるエコロジーな農業なのです。そうしてできた作物を、自分や周
りの人々で食べ、また作り食べていく。自らの手で育てたものを食べるということは、
なにものにも代えがたい歓びであると私は思います。それは、この過程で自分が自然の
一部であると実感できるからです。植物を虫・草食動物が食べ、それを肉食動物や人が
食べ、その死骸やし尿は微生物が分解し、分解されたものが植物を育てる。この自然の
輪の中に人がいる。まさに自分は生きているということを実感できる行為だと思いま
す。
 今すぐ自給自足のエコロジーな農業にすべて切り替えるのは無理でしょうが、私たち
の世代が農業を引き継ぐときに一人一人が実践していくことを忘れないようにしなけれ
ばなりません。21世紀を生きる人たちのために、そして私たちを含むすべての生きる
もののために。

最近考えていたことをちょっと偉そうに書いてみました。

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