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農薬や化学肥料の投入を最大限に抑えることによって、地域資源と環境を保全しつ
つ、一定の生産力と収益性を確保し、より安全な食料生産に寄与することを狙いとした 農業の体系。
〈背景〉
@環境問題・食品の安全性についての関心の高まり
A従来の石油エネルギー・化学肥料・農薬を多用する農法への反省
〈主な特徴〉
1.有機的な作付体系
2.総合防除の推進
3.土壌と水の保全
4.耕種と畜産の有機的結合による複合経営
5.環境と農業を調和させ、長期的利益を得ること
〈経緯〉
1980年代後半にアメリカで農業の新しい考え方として起こり、1990年アメリカ農業法
の中に、この考え方はある程度取り入れられました。
同様の動きがヨーロッパ諸国においては、農産物過剰問題と環境問題を背景として、
環境保全型農業への転換という形で現れています。
これは農薬利用の削減、農用地の森林・牧草地への転用、山間部の条件不利地域農業
の保全などを狙いとしています。
近代農業の限界が世界各地で露呈してきています。そして化学肥料・農薬等に依存し
ない環境に優しい生態系農業・有機農業が日本でも大きな流れとなってきています。カ ンボジアにおいて、農薬使用はそのまま生活全般の毒物汚染・蓄積につながります。水 田・畑・果樹園から流れ出す残留農薬は、水路や池の水となって人々や家畜の飲料水に 入り込み、その中に住む魚・貝・えび・水草等を人々は食べます。家畜も食べます。化 学肥料は土を疲弊させ、より病虫害を発生しやすくし、農薬のニーズを高めます。農 薬・化学肥料に頼らない持続的農業が求められています。
お米を作るための水田の中には無数の生命が生息しています。例えば、日本人の大好
きな赤トンボは田圃で生まれ、田圃で育ちます。水田を多様な生態系として捉え、環境 としての水田を最大限に守りながら、生産とのバランスをとることが大切なのではない でしょうか。
〈備考〉
@ FAOのプロダクション・イヤブック(農業生産年報)の最新版(1995年)による
と、世界の就業人口の48%ほどが農業に携わっており、世界の陸地面積の37%ほど が農牧的利用に供されている。 現在の地球環境問題の中には、砂漠化や土壌塩類化の ように、農業の中での誤った農地管理に起因する土地生産力の退化現象が、主として工 業に起因する温暖化や酸性雨などと並んでリストアップされている。このことは、持続 性に欠ける農業はそれ自体が環境問題の一つであることを示しており、それ故に農業の 持続性を高めることが、即地球の環境を守ることにつながるのである。
A FAOが最近発表した世界食料農業白書1998年(SOFA98)によると、開
発途上国における栄養不足人口は、1990―92年の8億2,200万人から199 4―96年の8億2,800万人にわずかながら増加した。一方、開発途上国における 栄養不足人口は、同期間中に20%から19%にわずかながら減少した。しかし、顕著 な事実は、開発途上国全体の傾向に反して、最貧困国では、1969―71年以降栄養 不足人口数及び割合ともに減少傾向が見られないことである。
(FAO Press release 98/69,NES&Highlights,26 Nov.1998)
世界人口は、現在、推計では58億5千万人で、西暦2050年には、94億人に達す
ると予測されている。毎年1億人弱の人口増加が予測されることになるが、この人口増 加に対応して、安定的食料供給の可能性が危惧されている。19600年から1990 年までの30年間に、1.6倍の人口増加に対し、穀物生産量は倍増し、食料需給は好 転した。これは、化学肥料・農薬・農業機械の多量投入による近代農法の技術進歩によ るところが大きい。しかしながら、この反動として、土壌侵食、地下水汚染、地下水枯 渇等により、土地・水資源の生産力が低下しつつある。農業生産に本源的な資源の質的 低下・枯渇が発生しており、将来における安定的食料確保に疑問符が投げ掛けられてい る。一方、我が国では、農産物市場開放、円高等により、農産物輸入量は大幅に増加し ており、カロリー・ベースで見た食料自給率は42%にまで低下している。しかしなが ら、国民の多くは、飽食を謳歌しており、食料の安定確保に関して一抹の不安を抱いて いないのが現状である。このような社会背景により、「農業の存在価値」の理由とし て、水源涵養機能、洪水防止機能、緑の景観等の公益的機能が上位にランクされ、安定 的食料供給が下位ランクに移行しつつある感を否めない。前者の公益機能も、安定的食 糧確保が可能であってこそ、意味を持つものであることを、忘れてはならない。通常、 食料は市場経済システムを通じて取引きされる財と言われているが、食料供給が安定的 セに確保されているという「安心感」あるいは「信頼感」は、国民に対する一種の「公 共的サービス」と考えることができる。前回の米不足時には、米以外の食料は豊富にあ り、わずかな米不足程度では、国民の生存が脅かされるといった危険性がないにもかか わらず、大変なパニックが発生した。安心感・信頼感がいったん崩れると、その修復に は、多大の時間と困難性を伴うことを、肝に銘じておくべきである。
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