(H21年1月18日記載)
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| 郷土の自然史発見 その1
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岩脈が自然の擁壁として働いてできた滝 大滝
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| 位置:島根県江津市桜江町坂本
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| 花崗閃緑岩でできている谷を幅約3.4mの安山岩の岩脈が横断しているところに高さが約20mの滝ができています。
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 国土地理院発行 1:25000地形図「川本」より
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| 観察のポイント
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 写真1:大滝全景
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第三紀以前の火成岩や火砕岩が広く分布している地域を踏査された経験のある方であればよく御存じのように、谷川を岩脈が横断しているところには滝や早瀬などが多く見られます。
大滝は、江の川の支流、坂本川の中流付近にあり、落差が約20mの滝です(写真1)。 滝を含む周辺地域一帯には、約三千万年前に桜江層群の流紋岩溶岩や同質火砕岩の層中へ広域的に貫入してきた花崗閃緑岩が広く分布しており、さらにその後この岩体を貫いて小規模に貫入してきた安山岩の岩脈も流域のところどころに分布しています。 大滝にも滝頂上部を露頭幅約4.5mの安山岩の岩脈が横断しており、北東側へ約50°の傾斜で傾いています(図1、写真2、3、4)。
坂本川流域には、北西ー南東系中角度の断裂系、北西ー南東系高角度の断裂系、北東ー南西系高角度の断裂系が分布しており、谷川はこれらの断裂に沿って流れています。 このうち、北西ー南東系中角度の断裂系は花崗閃緑岩中に顕著に見られますが、安山岩の岩脈中にはほとんど見られません(図1)。 この断裂系は、花崗閃緑岩のもとになったマグマが桜江層群中に広域的に貫入し次第に冷却され固結してからもなお高温の岩体であったため、その上位にあった流紋岩溶岩や同質火砕岩からの荷重を受けながら高温の状態から次第に冷却されるに伴って起きた岩体の収縮で生じた規則的な割れ(冷却節理)です。 流域のところどころに見られる安山岩の岩脈は、この節理面に安山岩質マグマが貫入してできたものです(図1)。
坂本川流域に分布する花崗閃緑岩中には、このような冷却節理の断裂が顕著に入っているため、断裂面より上側の岩盤が滑り台のようにして滑落した跡がいたるところに見られます(写真5)。 また、このような断裂のなかには断層としてズレを伴っているものもところどころに見られます(写真6)。
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 図1:滝の縦断面
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 写真2:滝頂上部を横断する岩脈
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 写真3:滝頂上部に見られる境界
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 写真4:滝頂上部脇の山斜面に見られる境界
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 写真5:断裂面上にあった岩盤が滑べって落磐した跡
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 写真6:谷川に沿って分布する断裂(破砕帯を伴う断層)
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| 交通
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| 国道261号線沿いにある「水の国ミュージアム」から、この脇を南北に流れる坂本川に沿う林道(舗装道)を北へ約1.5km行ったところにあります
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| 考察
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滝の形成には、地質的条件、地形的条件、気候的条件などが複雑に関係してくるものなので単純には説明できませんが、滝という地形は、多くの場合、谷が下刻作用と側刻作用でその幅と深さを拡大させながら、谷頭侵食によって谷頭を後退させ、その長さを増大させていく発達の過程で形成されるものと考えられます。
坂本川の発達の初期には、その谷頭はまだ江の川との合流付近にあって、そこから比較的侵食されやすかった北西ー南東系の断裂に沿って、次第に谷頭が現在の大滝付近にまで順調に伸びていったと思われます。 しかし、ここには幅の広い安山岩の岩脈が横断していて、「自然の擁壁」として上流側の岩盤の剥落を抑える働きをしたため、谷頭侵食の速度がここで急減してしまい、下流側での一方的な下刻・側刻作用の侵食が進行して、上流側と下流側で大きな高低差が生じ、滝が形成されたと考えられます。
滝にかぎらず、早瀬や淵、甌穴といった谷川に特徴的な地形は、流れが屈曲しているところ、幅広い岩脈や地質境界が谷川を横断しているところ、川床に部分的な硬軟の違いがあるところなどに多く見られます。 地形図や地質図をたよりに、あらかじめ滝や早瀬、淵などの位置を推測して野外を歩くと、いろいろな発見に出くわすことが多いです。
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| 観光
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 写真4:地元の公民館主催のハイキング
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以前から地元の公民館(川越公民館)の主催で、「水の国ミュージアム」を出発点にして「大滝」までを往復するハイキングが行われています。 年に一回、春または秋に行われています。 上の写真で赤い矢印で示している人物は、故反田一之館長です。 滝の頂上部付近の脇を林道が通っていて、このガードレールに当館が自作した看板が立っています。 この付近から滝を眼下に眺めます。 また、滝から上流50mくらいの範囲のところには甌穴や早瀬などもあります。
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