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(H21年6月6日記載)
郷土の自然史発見 その4

現在もなお下流側の侵食作用によって成長している滝
龍頭ヶ滝と崖錐地形

位置:島根県江津市桜江町渡田

凝灰岩でできている急峻な滝とその斜面に系統的に刻み込まれた断裂、そして、その両側に発達した崖錐地形を観察できます。


国土地理院発行 1:25000地形図「川本」より
(図中の水色の矢印は、谷川の流れの向きを示しています。)

観察のポイント

写真1:龍頭ヶ滝全景

龍頭ヶ滝は、江の川の支流域にある落差がおよそ50m、平均斜度が70度のかなり急峻な滝です(写真 1)。

滝の斜面には、無数の断裂が見られ、これらの断裂は方向別に三つの系に分けることができます(図 1)。 そのうち、北北東ー南南西系の断裂と北北西ー南南東系の断裂は、滝を含む谷川の流域にも広く見られ、谷川はこれら二系統の断裂に沿って細かく屈曲して流れています。

龍頭ヶ滝の景観的な特徴は、滝斜面を流れ落ちる流水が途中途切れたように視界から見えなくなり、別のところから再び注ぎ出ているところです。
これは、滝斜面に発達している北北東ー南南西系の断裂面に沿って斜面上の岩盤が斜め下半分を残して剥離し、この剥離の縁をつたって流水が流れるようになったためです。 この剥離の縁は、長い年月にわたって流水により侵食されて溝状の窪みになり、正面からはここを流れる流水は見えません。 このため、滝斜面を流れ落ちる流水が途中途切れたように視界から見えなくなり、別のところから再び注ぎ出ているわけです。

龍頭ヶ滝とその流域の谷川には、暗青色の安山岩の岩片をところどころに含んだ凝灰岩が分布しています。
これは、約三千万年前に起きた火山活動の際に噴出した大量の火砕流が火山周辺の低地に厚く堆積してできたもので、凝灰岩には軽石がもとになってできた長径5mm~3cmの淡褐色や青灰色、黄灰色を呈するレンズ状の岩片がところどころに含まれています。
このレンズ状岩片の姿勢を計測してみると、南東側へ約25度傾いています。 レンズ状岩片の姿勢と地層の姿勢は、ほぼ一致しますから、龍頭ヶ滝周辺の凝灰岩層は南東側へ約25度傾いて分布していることがわかります(図 1)。

龍頭ヶ滝の滝斜面の両側も滝斜面同様に急峻な崖になっていて、この崖から剥離して落下した岩塊が崖下に集積して安息角以下の錐状の地形面をつくっています(写真 2)。 このような堆積地形を崖錐と言います。
崖錐地形が見られるということは、滝付近が今もなお激しい侵食を受けていることを示しています。

図1:滝の縦断面

写真2:滝の側に見られる急崖と崖錐地形
写真3:滝直下に見られる岩塊の集積

写真4:滝斜面を横断する断裂
写真5:東ー西系低角度の断裂系

考察

滝の形成には、地質的条件、地形的条件、気候的条件などが複雑に関係してくるものなので単純には説明できませんが、滝という地形は、多くの場合、谷が下刻作用と側刻作用でその幅と深さを拡大させながら、谷頭侵食によって谷頭を後退させ、その長さを増大させていく発達の過程で形成されるものと考えられます。

龍頭ヶ滝の場合、滝の形成に関与した条件として、以下の二つの条件が上げられると思います。

その一つの条件は、龍頭ヶ滝とその下流約200mまでの流域には、他の流域に較べ特に東ー西系低角度の断裂が狭い間隔で顕著に発達していることです(写真5)。 北北東ー南南西系高角度の断裂と北北西ー南南東系中~高角度の断裂に加え、東ー西系低角度の断裂との組合せによって、岩盤は六面体状にほぼ完全にブロック化されていて、容易に岩盤剥離などを起こしやすく、侵食されやすかったと考えられます。

もう一つの条件は、龍頭ヶ滝流域の谷川の出口付近を南東側から北西側へかけて断層が通っている可能性があることです(図2の青い破線のところ)。 この推定されている断層に沿って南東側から北西側へかけて谷川が流れています。 この谷川は、断層に沿っているために容易に侵食されやすく、この侵食によって龍頭ヶ滝流域の谷川の出口付近の標高がどんどん下がっていったことが考えられます。

以上の二つの条件によって、滝を挟んで上流側よりも下流側の方の侵食が著しく進行し、上流側と下流側で高低差が生じ滝が形成されたと考えられます。

谷川は、谷の下刻作用と側刻作用でその幅と深さを拡大させながら、谷頭侵食によって谷頭を後退させ、その長さを増大させて発達成長していきますが、十分に成長してくると下流側の方から次第に堆積環境に変わっていって、下流側ほど勾配が緩やかで上流側ほど勾配が急になっていくものです。
現在の龍頭ヶ滝流域の勾配の状況を見てみますと、滝より下流側の方が上流側よりも勾配が急な状況にあります(図 2)。 これは、つまり、龍頭ヶ滝流域の谷川がまだ十分に成長していないことを示しています。 これからも滝を含む下流域では活発に侵食作用が進み、まだまだ滝はその規模を増して成長していくと思われます。

龍頭ヶ滝は、現在も成長している滝であり、滝が形成されていく過程を現在進行形で見せてくれているものと言えます。



図2:流域に沿った勾配の変化





交通

国道9号線側にある上大貫地区から江の川の対岸にある渡田地区へかけて川越大橋がかかっています。 この橋を渡って渡田地区から南の方角へ谷川づたいの道を約1300m行くと左へ折れる道あり、この分岐点に「龍頭ヶ滝」の看板が立っています。 ここからさらに約300m行くと駐車場があります。 ここに車を置いて、谷川づたいの小さな道を徒歩で約700m行ったところに龍頭ヶ滝があります。

観光

地元公民館が主催でハイキングがときどきあります。 道路の各所に案内板が立ててあったり、駐車場もあったりして、ほとんど迷わずに目的地まで行けるように配慮されています。 ただ、龍頭ヶ滝とその下流約200mまでの流域では、落石が頻繁に起きていますので、注意が必要です。


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