顔じゅうにフサフサとひげを生やしたかのような虫が、こちらを見ています。強そうな、でもずいぶんと年を取ってしまっているような、そんな印象を受けてしまう姿です。これは「シオヤムシヒキ」というムシヒキアブの仲間です。ハナアブなどと比べると、体が大きくてがっしりとしており、肢(あし)が発達しています。それもそのはず、実はこのアブ、他の虫を食べるハンターなのだそうです。その肢で獲物をしっかりと捕まえて移動するため、体ががっしりとしているようです。それを知るとひげだらけの顔も、途端にライオンのように力強く見えてきました。もう一つはヘビイチゴの実です。直径一センチほどの果実ですが、近くで見ることで鮮やかな赤と表面のツブツブが鮮明に感じられ、なかなかの迫力でした。それに圧倒されてか、つい味見するのをためらってしまいました。どうやら毒ではないそうなので、この次はゆっくり味わってみたいと思います。
「建物の脇の林に、珍しい花が咲いている」と聞き、すぐにカメラを持って外に出ました。建物から出て数十歩、林に入ってすぐのところにその花がありました。地面から膝の上あたりの高さまでまっすぐ伸びた薄茶色の茎。先の方には十数個の黄緑色の花をつけています。右の写真ではそれらの花の形が、折れて丸まった様な形をした筒状の花であることが分かります。そして驚いたことに、この植物は根元付近にすら一枚も葉がありませんでした。 聞くところによると、この植物は「オニノヤガラ(鬼の矢柄)」と言うランの仲間なのだそうです。矢柄は「竹かんむりに『幹』」という字でも表され、別名「箆(の)」とも言います。矢じりと羽以外の矢の主要な部分をなしているもので、まさにシンプルでまっすぐ立ち上がったこの植物の茎の姿を表していると思います。 地味な色だったせいもあるのですが、地面からスッと伸びたこの珍しい植物にまったく気づきませんでした。身の回りの自然の変化に対して、さらに敏感にならないといけないな、と思い知らされてしまいました。 今回の目的は霧ヶ峰での自然観察会に向けての下見です。これまで霧ヶ峰の自然に関して詳しく勉強してきたわけではないのですが、インタープリターとして自然の魅力を伝えるまたとない機会と考え、観察会への参加を希望しました。そのためにも、事前にこのあたりの自然をしっかりと見ておきたいと思い、出かけたのでした。車を止めて散策路を歩くと、まず目に入るのがこの黄色い花、ニッコウキスゲです。鮮やかではないですが目立つ色といい、握りこぶし程の大きさといい、この花は一面に広がる草原の中で点々とその存在感を主張しているようでした。代表的な花として説明することになるので、道脇に咲いている花をよく見ておきました。花弁に縦方向の隆起が走っており、柔らかい印象を与えてくれます。 おまけとして、シシウドの葉を歩いていた虫もご紹介します。体長一センチちょっと、白くゴツゴツした体で着実な足取りで移動しているこの虫はヒメシロコブゾウムシといいます。この仲間は特に体表が硬いのですが、さらに驚かすと葉からポロリと落ちて死んだフリをしてしまう用心深さを持ち合わせています。体を守るために翅(はね)を作りかえてしまっているので、飛翔することができません。見た目もさることながら、いきなり飛んだり跳ねたりしないので、じっくりと見てかわいがることのできる虫と言えますね。
先日に引き続き、霧ケ峰高原を訪れました。今日は当日一緒に観察指導を行う方々とコースをまわりました。「目合わせ」と呼ばれるこの機会を通して、説明内容を深めあうことができました。また、当日に対する緊張感も高まり、よりいっそう気を引き締めることができました。この写真はコース序盤の見どころ、ニッコウキスゲの咲き乱れる草原です。各所に黄色い花が点々と咲いている様子が分かるかと思われます。とは言え、今年の花の数は多い年の三分の一程度だとか‥‥一面に咲き乱れる年にぜひとも訪れたくなりました。 ここで一緒にまわった方から珍しいものを紹介して頂きました。写真下中央の暗い色をした花です。どうやらニッコウキスゲの中でまれに咲く「ムラサキスゲ」と呼ばれる種類なのだそうです。別の種類なのか、突然変異なのか、よく分からなかったのですが、花弁が紫色がかっていて、中央にニッコウキスゲの持っている黄色が縦の筋として表れています。その色あいには思わず目を奪われてしまいました。 こうして咲いている姿もごくまれにしか出会えないそうなので、散策路から十メートルほど先にある対象に向かって、みんなで必至に腕を伸ばしてシャッターを切りました。まさに、「望遠レンズの付いたカメラが欲しいと思う瞬間」でした。一面に咲き乱れる花々の中に「変わり種(だね)」がいるというのも、アクセントになって楽しいものだと思いました。
昨年と同じ目的で近くの山に登ってきました。一年ぶりに登った山は天候にも恵まれ、夏の高山に咲く花々が各所に見られました。そして、昨年と同じ種類のチョウに再び会うことができました。ミヤマモンキチョウです。平地にごく普通に見られるモンキチョウと、雌雄の色(雄が黄色で雌が白色)や黒い紋の入りかたがほぼ似ているのですが、翅(はね)の周囲や体表の毛がピンク色を帯びているのが特徴で、その色合いがとても美しいチョウです。ダケカンバの林をぬけ、標高1,800メートルを越えたあたりから、ヒラヒラと飛び回っている姿が見られるようになりました。 写真は今回の登山でよく目に付いたマルバダケブキの花に止まっているところを撮影したものです。これまでにないくらい、このチョウの特徴であるピンク色がよく分かる写真が撮れたと思います。この地域の人々の保護への努力が報われたことで、チョウの警戒が少しずつ薄れ、このように近づくチャンスが増えたのであれば、とても良いことだと思われます。
今日も山に登ってきました。先日は快晴で日差しが痛いほどでしたが、今日はうって変わって曇り空。朝早いせいもあり、風が吹くと少し肌寒い感じです。下山する頃になって太陽が見えるようになり、日なたが暖かくなってきました。先日ご紹介したチョウたちも、気温が上昇するにつれ姿を見せるようになってきました。 標高二千メートルを超える山頂付近に群生しているチシマザサの葉上に、きれいな虫がいました。体長一センチくらいで、緑に輝く体表は側方に赤が入り、まさに「玉虫色」。そう、これはタマムシの仲間でキンヘリタマムシと言うそうです。全体的に無数の黒い点が見られ、翅(はね)に細かい縦スジが入っているため、残念ながら、輝き方は「本家」タマムシに劣ってしまっていますね。 標高が高く生き物が少ない山頂の環境にも、いろいろ発見があるものですね。また山頂を目指す楽しみが増えました。
目の前のアザミに似た花‥‥基部の膨らみも含めて、なんと握りこぶしほどもある花です。まずその大きさに驚いたのですが、写真後方に同じ花がいくつも咲いているのが分かるでしょうか?ちょうど胸くらいの高さに位置していて、少し下の方から撮ってみると、空中高く林立する未来の建物のように見えてしまいます。実はこれ、たまたま通りかかった山沿いの畑で撮影しました。つまり、「農作物」というわけですね。これだけの数がまとまっているのも納得して頂けるかと思います。そして、肝心の正体ですが、付近に農家の方がおらず、いまいち決め手に欠けるものの、アーティチョークと呼ばれる野菜の一種ではないかと思われました。 ヨーロッパではこの大きな花が咲く前、つまり、つぼみの状態にあるものを茹でてサラダにしたりするそうです。この写真のように既に花が咲いてしまっているものに関しては、どのような使い道があるのか分からないのですが、このように日本でも栽培されているところを見ると、今後近いうちに、何らかの形で食べる機会がやってくるのかもしれませんね。 |