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梅田北ヤード「国際コンペ」は
移転決定を印象づける世論操作だ |
2002年10月2日、毎日新聞社主催の「梅田北ヤード再開発シンポジウム」が開かれ、大阪市計画調整局長の岩本康男氏やニュースキャスターの福島敦子氏ら5名のパネリストたちが、「梅田北ヤードのまちづくり」について語り合った。
その内容たるや「梅田北ヤードにカジノを誘致し、24時間眠らない街にしたらどうか」(大阪国際会議場社長・山下和彦氏)「容積率を緩和するので、どんどん高いビルを建ててほしい」(前出・岩本氏)「自由の女神のようなシンボルも必要では」(毎日新聞・斉藤行巨氏)など、「バブリーな夢物語」を延々と3時間も繰り広げた。
当人たちは「まちづくりのコンセプト」を考える国際コンペに思いっ切りエールを送ったつもりだろうが、ちょっと待った! あなたたちの「夢物語」は全て仮定の上での話ではないか。多額の税金とマスコミを使った、一方的な「国際コンペ」に異議あり!
■あきれた再開発シンポ
全くあきれてしまった。天下の毎日新聞が主催し、前記4氏以外にも、国立民族学博物館教授の石森秀三氏、国土交通省都市総合事業推進室長の松田秀夫氏など、そうそうたるメンバーがパネリストのシンポジウムである。
もう少し真面目な、腰の座った議論がされるかと思っていた。しかしそこで語られたのは「バブルの夢よもう1度」というものであり、「誰がそのビルを建てるお金を出すの?」「カジノなんか誘致して眠らない街にしたら、梅田は犯罪と青少年非行の温床になってしまうよ」。思わず失笑し、反論が口をついて出るような「提言」ばかりだった。
■ド派手に動き出した「国際コンペ」
ここで問題の「国際コンペ」について少し解説しよう。この「国際コンペ」は大阪府、大阪市、都市基盤整備公団、JR鉄建公団、関西経済連合会、大阪商工会議所の6団体で作る「大阪駅北地区国際コンセプトコンペ実行委員会」が主催する。6団体主催だが、実質的に主導しているのは大阪市だ。
このコンペは開発事業者を決めるものではなくて、梅田北ヤードのまちづくりを考えるコンセプトコンペ。審査員は安藤忠雄氏らそうそうたるメンバー14人で、賞金総額は2000万円。コンペの宣伝費、審査員の報酬も含め、これらは税金から支払われる。先の9月1日から一般公開で登録受付が始まって、9月末現在で1600件、79カ国から応募があるというから驚きだ。作品受付は今年の12月からで03年3月に審査結果の発表となる。
■吹田の環境アセスを無視して
「西日本で最後に残された一等地」「関西経済の活性化の切り札」などとマスコミも大々的に報道する中、もう既に梅田貨物駅が「更地になってしまったかのような」印象を与えつつ(それが本当のネライ?)、コンペが「勝手に」行われるわけだ。
しかし梅田貨物駅の移転については、5者協定に基づいて吹田市で環境アセスが行なわれているのである。吹田市長、あるいは摂津市長が最終合意しなければ移転はできない。79カ国、1600件を超える応募者たちが、一生懸命「更地になった」梅田北ヤードのまちづくりについて考えてくれるそうだが、もし移転できず「貨物駅が残ったまま」になれば、その「コンセプト」はご破算だ。 仮にも税金を使って公共機関が行うコンペである。そうなれば「世界的な信用失墜問題」にならないか。それでなくても大阪市は「オリンピックわずか6票」で世界から失笑を買っているのだ。老婆心ながら、恥の上塗りをするようなことにならねばいいが、と願う。
■言いたい放題のバブリーな夢物語
さて、シンポは主催者である毎日新聞・斉藤氏の司会で始まった。まず「シンポの応募状況」を聞かれた大阪市・岩本氏は「79カ国を超えた。長野オリンピックが72カ国の参加だったので、長野には勝った(笑)」と発言。全く懲りてないのだ。大阪市の赤字5大3セクの一つ、大阪ドームの社長でもあるこの人にとって、市民の血税を使うことに対する「痛み」は全然感じておられないようだ。
次に「東京と大阪の街の違い」について問われた福島氏。「女性の目から見て梅田駅は煩雑で清潔感がない。トイレなどが汚いと、女性は訪れる気がしない」。そりゃーあんたは高級ホテルに泊まっているから、それと比較して「汚い」と感じているのかもしれない。大きなお世話じゃ、と毒づきたくなるのを我慢して聞いていると、「北ヤードはイタリアのような街にしたらいい。高層ビルの1階を個性的なファッション店やワインを飲ませるバーにして…」。
確かにそれもいいだろう。しかし大阪の庶民生活は今、不況でどん底。失業率全国ワースト2位なのだ。「そこで遊ぶ金がないんじゃ!」とツッコミを入れたくなる。
■極めつけは「24時間遊びの街」
極めつけは大阪国際会議場社長・山下氏だ。「世界から観光客が来る街にすればいい。ファッションならミラノ、音楽はウイーン。大阪はさしずめエンターテインメントだ。そのためにはカジノの誘致も考えたらいい。24時間眠らない街にして元気ある大阪を」。
この人はパチンコや競馬などで多重債務に陥り、犯罪に走る人々が急増しているのを知っているのか。24時間眠らない街に若者たちが繰り出して、それで「この国の将来を担う人材」が真っ当に育つとでも思っているのか。今でも青少年にとって誘惑がいっぱいの街なのに…。
■もうお金がない。大阪市の本音ポロリ
「夢物語」がひと通り語られたあと、司会者が「北ヤードの土地はおよそ1000億円といわれている。問題はそのお金を誰が出すか。本当なら大阪市などの公的機関が出せばいいのだが」とフリを入れると、「今まで舞州を埋め立てたり、O―CATを作ったり。(税金を)先行投資してきた。もうお金がない」(大阪市・岩本氏)とホンネがポロリ。「市民から寄付をもらえば」「個人向けの地方債を発行せよ」など、とうてい実現不可能な「方策」まで飛び出る始末。
山下氏などは「例えばクアラルンプール市にやらせて、その見返りに日本からマレーシアにODAを積んでやったらどうか」という「奇策」まで。皆さん好きなように「コンセプト」を語ったあと、司会者が「これで終了します」。シンポジウムなのに、会場からの質疑応答もなしで終わろうとする主催者。
■吹田市民を犠牲にするな!
この瞬間、会場に詰めていた「公害道路いらない。梅田貨物駅移転反対市民連絡会」のメンバーが立ち上がった。「質問があります。みなさんの発言は全て『仮定の話』です。もし梅田貨物駅が移転できなかったら、北ヤードは更地になりません。まちづくりのコンセプトというなら、更地になった場合、梅田貨物が残った場合、その両方を想定して行わないと不公平です」。「ここは移転問題を話し合う場ではない」と逃げる司会者。「吹田の市民にとっても、喜ばれる北ヤード再開発にしたい」と言いながら、残りの質問者をさえぎって大慌てでシンポが終了した。
移転問題を棚上げにしながら「吹田市民に喜ばれるまちづくり」もあったものではない。あなた方の「夢物語」と引き換えに、吹田市民の健康や暮らしが犠牲になろうとしているのだ。マスコミを使った世論操作…。国際コンペの真の目的はそのあたりにある。あきらめず、だまされず、吹田の街を守っていこう。
■吹田市も市報で世論誘導?
「大阪市の国際コンペと同じような手法」と批判されても仕方のないことが、わが吹田市で起きた。
2002年10月1日付の「市報すいた」。見開き2ページを使って「吹田操車場跡地におけるまちづくりのイメージ(案)」が掲載された。
市民からの反対意見書が1万1千通も出たことや、吹田市議会でも慎重に議論されていることなどをいっさい報道せず、既に梅田貨物駅の吹田への移転が決まったかのような記事の内容。34万吹田市民に「移転はもう決まったこと」「いまさら反対しても遅い」と思わせたかったのか。
■環境悪化を防ぐ方策も示さず
「新しいまちづくりに取り組んでいきます」と題して、操車場跡地開発後の「美しい街並みイメージ」まで掲載されているこの市報、1日1000台もの大型トラックが通るトラック専用道路(公害道路)のことは地図にも入れていない。「南北地域の分断を解消」「JR岸辺駅の橋上化」などについては報道するものの、操車場跡地から遺跡が発掘されたことや、環境悪化を防ぐ具体的な方策については、何ら触れられず。
環境アセスを行っている大事なこの時期に、あえてこのような報道をすること自体、市民ばかりでなく、市議会、環境影響審査委員などの「感情を逆なで」するものではないか。阪口市長の言う「情報公開」とは、自分たちに都合の良い情報だけ「公開」することなのか。市長は本当に1万1千通の反対意見書に目を通したのか。
「子どもがゼンソクで苦しんでいます」「トラックのみちわだいはんたいします。ようちえんのみんなもこまります。みんなふつうのくうきだとおもってすってしまう」…これらの切実な声に耳を傾けてこそ、自治体の長ではないか。猛省を求めたい。
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