環保センター勉強会  2000年9月28日

テーマ なぜ中国の環境問題はこれほどひどいのか

1)悪化しつづける中国の環境

 1999年中国環境状況公報から
「全国の環境汚染悪化の動きは全体から見れば基本的には制御され始め、一部の地区や都市では改善も見られる。しかし同時に環境観測の統計結果も明らかにしているが、各汚染物排出総量はいまだ大きく、汚染の程度もいまだ相当高いレベルにあり、一部の地区では環境は悪化しつづけ、相当多くの都市の水、大気、騒音、土壌の環境汚染はいまだ深刻である。農村の環境はある程度低下し、生態系悪化の激しい勢いは今なお有効に制御できていない。一部の地区の生態系破壊の程度はいまだ激しく、全国の環境の情勢はいまだ相当厳しい」

2) 環境問題に対する中国の取り組み

 『中国の環境保護システム』から

(1) 時期は決して遅くなかった

日本;「高度経済成長→公害発生→公害反対運動の展開→公害対策→環境保護」という、法整備や環境行政組織整備を中心とする公害対策・環境保護への中央政府の取り組みは、経済発展と環境汚染に遅れて、受動的に進められてきた。

中国;法制定が経済発展段階と比べて相対的に早いこと、根拠を「憲法」に据えたこと、公害問題だけでなく環境問題全般を法制化の起点としたことが中国環境保護法整備の特徴。行政組織の整備が経済発展段階と比べて相対的に早いこと、中央から末端までの組織網の形成を目指すことが特徴。これらは、欧米や日本の公害問題発生を教訓にして早め早めに手を打つ姿勢が感じられる。

(2) 先進性さえ持つ環境対策
 環境対策は、直接制御の手法と経済的手法の組み合わせが基本である。これは中国もすでに採用し、市場経済への過渡期でさえ汚染者負担の原則を導入し、日本に先行して環境影響評価を制度化、中国の国情にあわせて環境保護目標に関する責任制度を導入したことなどから、中国の環境対策は先進性さえ持っているともいえる。

(3) 国策とした意気込み
 中国の2つの国策;人口爆発の抑制、環境保護。人口抑制は1981年に、環境保護は1983年に国策に定める。

(4) 環境保護の成果
? 国有鉱工業企業を中心とするいくつかの汚染物質排出量をある程度抑制できた。
? 都市部のいくつかの環境指標に改善が見られた。
? 自然保護に関するいくつかの指標に改善が見られた。
? 環境汚染のひどい技術が淘汰され、企業が大量に閉鎖された。
? 公害処理設備が増加した。

(4) 環境宣伝への取り組み(非政府)
環境雑誌や環境新聞の種類の多さ

3)解決に向けての動き(日中比較)

<日本の特徴>
・住民の意見が反映されやすい地方自治体で臨機応変に環境対策を開始
・マスコミによる政府や汚染企業への強烈な批判(環境軽視の議員の落選、不買運動など)
・社会正義の実現に燃えた弁護士団の意気込みが支えになって裁判闘争
・環境保護の民間団体の活躍、市民運動の一環

<中国の特徴>
・ 中央政府が環境保護にやる気を持っている
  地方政府や一般大衆が消極的。
・中央集権体制なので強権的対策が打てる
・環保NGOの芽生え

4)中国独特の環境問題の温床
さまざまな問題が有機的に絡み合っていて、決定打が打てない
「環境保護システム仮説」(他に発展途上国仮説、経済優先仮説がある)

<貧困・資金不足問題>
 中国が難しいのは、発展と環境保護を同時に進めなければならないこと
 先進国で用いられている「発展が先、環境は後」「高投資、高技術」モデルは、中国では使えない。
 環境投資の資金調達では、大幅な調達漏れが見られる。これも

<人々の意識(法律観念、環境意識、利己主義、文化程度)>
 法律はあってなきが如し。人治から放置への脱却が必要。
 自分の行動が国や地域にどのような影響をもたらすのかという自覚が弱い。
 自分の行動が環境を破壊しているという認識が薄いし、たとえ認識があっても、自己の行為によりもたらされる結果を考えられないし、さらにたとえわかったとしても金儲けを優先してしまう。
 都市部では、環境破壊が進んでいるという認識は広がってきている。しかし経済的犠牲が強いられるようになると、とたんに消極的になる。
 市民運動の弱さ;政治体制の原因もあり、市民運動の制度が確立されていない。また、一般大衆自身が、自己を無力なものとみなす傾向が強い。大衆が、環境保護の責任は政府にあるとみなす、責任転嫁をする割合が多いという調査もそれの表れであろう。市民社会の到来には、「自己責任」が不可欠。ただし環境保護分野に限れば、政府自身が大衆参与の必要性を認め、積極的に奨励していることから、環境保護運動が中国式市民運動拡大の突破口になる可能性がある。また市民運動が成果を収めるためには、「横のつながり」強化が不可欠であるが、これも相対的に弱い。
 環境情報の公開性;環境情報は一般に対しても公開されてきつつある。ただ、公開されたとしてもその意味を理解する人間が少ない。ダイオキシンを知らなくて、無頓着に発泡スチロールやプラスチックを燃やしてしまう人もいる。これは基礎的文化程度とも関係する。

<技術力の低さ>
 直接的な公害対策技術;煙突に脱硫装置をつけると、初期コスト、運営コストともにかさむし、管理能力に限界がある。故障したときのフォローができない。
 技術援助の際に必要なのは、先進技術ではなく国情に合う技術。往々にして、中国は国情に合わない先進技術を求めがち。

<行政管理の能力>
 環境保護対策に強制力が伴うことが少ない。他の省庁とのバランスから、環境保護局独自で何かを行うことが難しい。地方政府の消極性や人治で対策が実行されない例もある。

<不利な土地条件>
 歴史的に負荷の多い土地利用が原因。唐朝時代は、黄土高原は緑に覆われていたと言う。明清時代に、人口増加とともに森林伐採が進んで環境が悪化。
「森林破壊→保水性の低下→砂漠化、土壌流失、洪水や旱魃など災害の多発、気候の変化」という構図のため、一度森林破壊が自然回復力を超えたレベルまで進んでしまうと回復が難しい。

<制度間の整合性>
 例)排汚費;排汚費を払うより、環境対策施設の設置・運用コストが高いので、経済的インセンティブがかからない。さらに払わなくてもたいした罰則もないし、強制的に遵守させる手段がない。