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日本以外の刃物は、切れ味をいかに長持ちさせるかを追求したため、より堅い金属を開発しました。確かに良く切れるのですが、磨耗して切れなくなった時研ぐのに大変な努力がいります。その点、伝統的な日本の刃物の大部分は、“研ぐ”という事を前提として開発されました。 堅い鋼を薄くしてそこに軟らかい軟鉄を張り合わせることによって刃物の強度を付け、なおかつ研ぎやすくしたり刃裏を透いて(平刀やかんなの刃など)、砥石に当たる面積を少なくすることによって、堅い鋼の部分を真っ平に仕上げるよう工夫をしています。また、同じ鋼を鍛練することによって、より堅くしなやかなものに作り上げています。 しかし刃物が切れるのは、あくまでより堅い鋼をいかに鋭く研ぐかにかかっていますので十分に研いで使って下さい。 刃物は研がなければ決して切れません。 その研ぎ方には、刃物か砥石を手で動かして研ぐ伝統的な方法と、機械を使い砥石を動かして研ぐ方法があります。伝統的な手研ぎの方法ですと、木彫家の場合には「研ぎ三年」と言って、何十種類の刃物を十分研ぐには毎日研ぎだけをしていてもそれ位の熟練が必要です。また毎日の刀の手入れだけでも何時間も必要になり、つい手を抜いてしまいがちです。特に趣味で彫っている方には苦痛になります。 そこでもっと楽な方法と機械研ぎが盛んになりました。しかし荒研ぎはまだ良いのですが、仕上げ研ぎは革やバフなど柔らかいものを使うと凹む為、丸っ刃になってしまいます。そこでの対策としては、あまり力を入れずに時間をかけて、ゆっくり研ぐようにすると良いです。砥石は天然のものと人工のものとがありますが、天然の砥石は非常に値段が高く、安い手頃の物は不純物が混ざっていたり、品質が一定しないのであまりお勧めできません。その点人工の砥石は何万も出さなくても良い物があります。必要な砥石は、荒研ぎ用の#1000以下の粗砥石。中研ぎ用の#1000〜#2000の中砥石。仕上げ用の#5000以上の仕上げ砥石の三種類を揃えておいた方が良いです。仕上げ研ぎ用に機械を使う人は研磨材に青棒を使うと良いです。 粗砥石は、刃が欠けたり、形や丸っ刃を直すときに使いますが、あまり頻繁に使うと刃の減りが早まりますので、最小限にした方が良いです。 中砥石は粗砥石の後で使うか、少しだけ刃が欠けた時に、また錆が浮いた時に使います。しかし大きく減らすとき、中砥石などの細かい砥石を使うと時間がかかって丸ッ刃になる大きな原因になりますので、適切な砥石で研ぐようにして下さい。 仕上げ砥石は中砥石の後に使うか、少し切れが止まった程度のときに使って下さい。決して粗砥石のすぐ後には使わないで下さい。刃の減りが遅い為にいつまで経っても研げません。 刃物の角度は、原則として材料が軟らかいものには鋭角に、堅いものには鈍角に研ぎます。丸っ刃とは、刃全体の角度とは違い、刃先だけがより鈍角になって研げてしまった場合の事を言います。この時往々にして徐々に角度が鈍角になって、曲面に見えるためそのように呼ばれています。このようになると鈍角の為切れ味が悪くなり、また滑って材料に食い込まなくなってしまいます。刃物が研げると言うことは、砥石の細かい粒子が金属を削り取って減らしているのです。そのため粒子が粗ければ粗い程深い溝ができます。同時に山も高くなって波トタンのようになってしまいます。このため刃先がノコギリのようになり、物に当てた時尖った先が折れ、切れなくなります。そこでノコギリ状になったものをできるだけ細かい粒子の仕上げ砥石で研ぎ、表面の溝を少なく平坦にし、刃先を直線状にします。この時、刃表だけでは何もなりません。刃裏も同じ様に研いで平坦にして下さい。ただし、刃裏が丸っ刃になるとますます切れなくなりますので、柄を持つ手に力を入れず軽く持ち、刃を押さえる手に力を入れて平らに研いで下さい。 新しい刃のときに、十分に研いで鏡面状にしておくと、刃表を研いでいる段階で刃先が減って刃裏の丸っ刃が無くなります。刃の返りの事が気になりますが、そもそも刃の返りとは先程の山の部分が繋がって出来ることなのです。ですから仕上げ研ぎの粒子を細かくすればするほど山が低くなり、鏡面状にすれば返りは起こりません。鏡面状態でも、実際には目に見えない溝がありますので研ぐときには刃先に対して直角に、削る時と同じ動きで研いだ方が切れが長持ちします。あまりピカピカに光っていると滑って切れないというのは単なる迷信です。真っ平らにピカピカに光っている刃物が一番良く切れます。また薄肉彫りのように、抉るように彫る時は少し丸っ刃に研いだ方が良いです。
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