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アメリカムシクイ類 (WOOD-WARBLERS)(アメリカムシクイ科)は、小型で、非常に活動的で、鮮やかな色彩の歌い手。嘴は、まっすぐで細く、先が尖っている。春から初夏(7月まで)の雄は、良く見えさえすれば、かなり容易に識別される。雄は囀るので、春と夏に見られる鳥の殆どは、繁殖羽の雄。翼の縞と、特徴的な頭の模様に、まず注意するとよい。殆どの種類の識別の決め手となる囀りのパタ−ンに注目。
秋の鳥と春の雌は、最初は識別が難しい。殆どの雌の模様は、春の雄との類似性が幾らかあるが、もっとくすんでいる。秋の羽毛の比較は、294〜295ペ−ジを参照。
北米のアメリカムシクイ類は、16属に分類される。同じ属の鳥は、体形や嘴の形といった体の構造や体色の他に、習性にも幾らかの類似性がある。例えば、カマドムシクイ属(カマドムシクイとミズツグミ類)は、アメリカイソシギのように体を上下に動かし、餌を探して地上を歩く鳥を包括する。また、カオグロアメリカムシクイ属は、地上で餌を採る比較的動きの鈍いアメリカムシクイから構成される。ウィルソンアメリカムシクイ属の各種は、翼で虫を捕らえる。
営巣期の間は、それぞれが好む棲息域の中あるいはその近くから離れない。渡りのときは、混群をつくる。カラ類やエボシガラ類とは頻繁に群れる。殆ど全種が、森林の周辺、生け垣、果樹園、および森林の沼地の中や、小川沿い、あるいは砂漠のオアシスにさえも、出現する。渡りは主として夜だが、早朝、木のてっぺんから500フィ−ト以内の高さの所を飛んでいるのが見られる。殆どは、メキシコ、中央アメリカ、あるいは西インド諸島で越冬する。
熟練者は、鳴声をちょっと聞いただけで、アメリカムシクイ類の半分以上を識別できる。チュッチュッというような声を、例えば、カオグロアメリカムシクイ、キヅタアメリカムシクイ、あるいはクロズキンアメリカムシクイのように独特な声のもので覚え、次に、各人の地域で普通に見られる鳥で学ぶと良い。識別できなくても、チュッチュッというような声の相違が認識できれば、秋の混群の中に珍種が混じっているときに注意を向けることができる。
アメリカムシクイ類は、殆ど虫しか食わない。殆どのアメリカムシクイは、地上か、地面から10フィ−ト以内のところに営巣する。しかし、木の上のほうに営巣する種類もある(アメリカムシクイ属の幾らか、およびアサギアメリカムシクイ類)。卵は、ふつう4〜5個。
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●アメリカムシクイ類(WOOD-WARBLERS) は、声を震わせて歌うことはないが、殆ど全種が独特な明るい声で囀る。多くの種類は、2つかそれ以上の特徴的な囀りのパタ−ンがある。よくあるのは、独特な言い回しで終わる長い囀りと、聞き分けるのがもっと難しい更に短い囀りである。後者は、夏の終わりによく聞く。ソノグラムには、概して独特なほうの囀りを示した。東部種の多くは、秋、太平洋岸に現われる。
シロクロアメリカムシクイ BLACK-AND-WHITE WARBLER
落葉樹林に普通。白黒のアメリカムシクイは、本種と、ズグロアメリカムシクイ(284ペ−ジ)と、ノドグログロアメリカムシクイ(282ペ−ジ)のみ。これらのうち、頭頂を通る白い縞があるのは本種だけ。また、主として木の幹や大きめの枝に沿って餌を採る習性があるのも本種だけ。この習性は、アメリカムシクイよりゴジュウカラ(234ペ−ジ)のほうに似るが、止まる姿勢が異なる。頭頂の縞はどの羽毛にもあるが、雌や幼鳥は頬が黒くない。地上に営巣する。鳴声は、細くてかんだかい笛のような声。毎分4回。
オウゴンアメリカムシクイ PROTHONOTARY WARBLER
森林地帯の沼地や小川沿いに普通。どの羽毛でも光沢があり、頭が金色で、翼は青灰色で模様がないことで、識別される。嘴は暗色で長く、尾の上面の一部と尾の全下面が白いことにも注目。水から遠く離れたところではめったに見られない。水面から少し上に位置する木の穴に営巣する。囀りは、上がり調子の不明瞭な大声で、澄んでいる。毎分6〜8回。
チャカブリアメリカムシクイ SWAINSON'S WARBLER
森林地帯の沼地やトウの茂みに棲息するが、普通でない。山地のシャクナゲの茂みでは極めて局地的で、稀。模様がない茶色の背面、一様な錆色の帽子、および模様がない下面が識別点。フタスジアメリカムシクイや雌のノドグロアメリカムシクイ(282ペ−ジ)に類似する。また、背面が茶色の他のアメリカムシクイは、下面に筋模様がある。大きな嘴に注目。雌雄も幼鳥も類似。活動的でなく見るのが難しい。囀りは、不明瞭で澄んだ5声で、ミナミミズツグミ(288ペ−ジ)を連想させる。毎分5〜8回。
フタスジアメリカムシクイ WORM-EATING WARBLER
普通でない。落葉樹が生える斜面に棲息するが目立たない。頭にはっきりした縞があり、背面や翼は茶色で模様がなく、下面は黄褐色で模様がない。どの羽毛でも、これらの特徴によって他のアメリカムシクイと識別される。ほっそりした嘴以外は、ヒメドリに似る。しばしば大枝に沿って歩く。地上に営巣する。鳴声は、チャガシラヒメドリ(338ペ−ジ)に酷似するが、それより高く、ふつうもっと速い。毎分4〜6回。
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キンバネアメリカムシクイ GOLDEN-WINGED WARBLER
ハイイロカバや他の落葉樹の若木の茂みや、荒れた牧草地に棲息するが、普通でない。雄は、カラ類に似るが、翼の一部と頭頂が黄色。雌と幼鳥にも常に雄の模様が薄くあるので、識別できる。翼の縞が黄色で、かつ咽が黒または灰色のアメリカムシクイは、本種のみ。目立つ所に止まりながらうなり声で囀る。典型的な囀りは、1声のあとに3〜5声が低音で続く。毎分6〜10回。ズィズィズィズィズィ− (zi-zi-zi-zi-zeee) と囀ることもある。
アオバネアメリカムシクイ BLUE-WINGED WARBLER
10フィ−ト以上の背丈の若木が散在する古びた牧草地に棲息するが、普通でない。黒く幅の狭い過眼線と、翼の白い縞が識別点。胸に筋模様がない鮮やかな黄色のアメリカムシクイの殆どは、翼に縞がない。キイロアメリカムシクイ(278ペ−ジ)は同じ時期に渡りをする普通種だが、その雌と幼鳥は、翼が本種ほど対照的でなく、尾に黄色い斑がある。うなり声の囀りは、最初の音同士がキンバネアメリカムシクイに似るが、他の高音が、もっと震えるような音質である。毎分5〜8回。
●混血(HYBRIDS) が、上記2種が共に棲息する所で局地的に現われる。色々な異なった体色が現われる。典型的な混血は、ブリュ−スタ−アメリカムシクイ、およびロ−レンスアメリカムシクイとして知られている。下面の殆どが白で翼の縞が黄色い(ときたま白い)前者の方がよく見られる。咽が黒く下面が黄色い後者は、極めて稀。キンバネアメリカムシクイの雌が前者に、また、クロズキンアメリカムシクイ(292ペ−ジ)の雄が後者に、それぞれ間違えられる可能性がある。前者の胸が純白なことがある。混血は、囀りが、一方の親と同じこともあるし、両親の組合せであることもある。
ムナグロアメリカムシクイ BACHMAN'S WARBLER
最も稀な森林地のアメリカムシクイ。湿気のある落葉樹林に極めて局地的。雄は、黒い頭頂と咽の間に、黄色い額と顔があり、目の周りには黄色い輪がある。尾に白いところはない。それ以外の羽毛は、黄色あるいは黄色っぽい額、灰色の頭頂、および白い下尾筒。このような特徴の類似種はいない。同じ棲息域によくやってくるクロズキンアメリカムシクイ(292ペ−ジ)は、囀りや鳴声が全く異なる。本種は、地上20〜40フィ−トから上の森林の中で囀るが、音質は、キンバネアメリカムシクイのズィズィズィズィズィ−と同じである。絶滅した可能性がある。
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マミジロアメリカムシクイ TENNESSEE WARBLER
アスペンやトウヒの森林に普通。春、下面全体が白いのは、本種とル−シ−アメリカムシクイ(276ペ−ジ)のみ。嘴がほっそりして、背面が緑色っぽい鮮やかな色であることで、ヒメドリ類と識別される。モズモドキ類(262ペ−ジ)にも似るが、それより体がほっそりしていて、嘴がとても細い。雌は、頭頂がオリ−ブ色がかった薄緑色で、下面がうっすら黄色味がかっている。秋は、背面が緑色っぽい鮮やかな色で、下尾筒が白く、翼の縞と目の周りの輪がはっきりしないことが、識別点。春は、木の高いところから下に来ない。鳴声は、チュッチュッ鳴くような大きな声で、声の間隔はまちまち。終わりのところでさらに速くなる。毎分6〜9回の囀り。
サメズアカアメリカムシクイ ORANGE-CROWNED WARBLER
特徴がない。西部で普通。冬場のゴルフ場沿いを除けば、東部では稀。低い木や潅木の密生地で頻繁に餌を探し回る。頭頂の点はめったに見えない。どの羽毛でも白い部分がないことに注目。胸の側面に非常にはっきりしない筋模様がある。この特徴は、マミジロアメリカムシクイ(下尾筒は白または白っぽい)と極めて類似する秋に特に有効な識別点。幼鳥の殆どは、色がマミジロアメリカムシクイの幼鳥に近い。極端な灰色亜種も図示した。囀りは、チュッチュッ鳴くような弱々しい震え声。
ズアカアメリカムシクイ NASHVILLE WARBLER
処女林伐採後に生える落葉樹の開けた森林や、トウヒが生える沼沢地に普通。青灰色の頭、目の周りの白い輪、鮮やかな黄色の咽、および翼に縞がないことの組み合わせは、北米に棲むアメリカムシクイでは、本種のみ。秋は、くすんだ色のハイムネアメリカムシクイ、ノドグロアメリカムシクイ、およびニシノドグロアメリカムシクイ(290ペ−ジ)を、本種と混同する可能性があるが、これらの顎や咽が鮮やかな黄色であることは決してない。雄の赤っぽい帽子は、隠れていることが多い。囀りは2つの部分からなる。前半の部分はシロクロアメリカムシクイ(270ペ−ジ)を連想させるが声が別れている。後半の部分(時々省かれる)はゆっくりした低音の震え声。毎分4〜6回。
オリ−ブアメリカムシクイ OLIVE WARBLER
茶褐色の頭と黒い過眼線が、雄の識別点。翼の幅広い白縞、および暗色の翼と尾にも注目。翼の幅広い縞と筋模様がない黄色っぽい胸は、西部のアメリカムシクイでは本種の雌のみ。雌の目の近くの黒みがかった部分を囲む黄色い三角形にも注目。標高8000フィ−トを越えるサトウマツやモミの森林の高い所に営巣するが、普通でない。短い囀りは、低音で不明瞭な大声を2〜5回。
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キムネズアカアメリカムシクイ VIRGINIA'S WARBLER
背面と翼が灰色で、模様がないのは、本種と下記に2種とサメズアカアメリカムシクイ(274ペ−ジ)だけ。サメズアカアメリカムシクイの目の周りには白い輪でなく、過眼線がある。本種は、腰と下尾筒が黄緑色であることで、ル−シ−アメリカムシクイや大型のコリマアメリカムシクイと識別される。標高6000〜9000フィ−トの潅木が密集した林に普通。囀りは、キイロアメリカムシクイ(278ペ−ジ)を連想させる。
コリマアメリカムシクイ COLIMA WARBLER
西テキサスのチソス山地にあるブ−トスプリング(6500フィ−ト)およびメキシコに隣接域で、オ−クやカエデなどの若木が生える落葉樹林に、局地的に棲息するが、稀。酷似するキムネズアカアメリカムシクイに比較して、大きくがっしりとしていて嘴が太い。春の雄は、胸は大部分が灰色であることで、キムネズアカアメリカムシクイと識別される。雌や幼鳥は、腰と下尾筒の黄色が、キムネズアカアメリカムシクイほど緑色っぽくなく、オレンジ色に近い。囀りは、チャガシラヒメドリ(338ペ−ジ)を連想させるが、それより格段に音楽的で、やや低音の分離した1〜2声で終わる。
ル−シ−アメリカムシクイ LUCY'S WARBLER
メスキ−トの生えるところに普通で、通常、木の穴に営巣する。上記の2種に似るが、どの羽毛でも下尾筒が白いことで識別される。腰が栗色のアメリカムシクイは本種だけ。幼鳥の腰は、ほんの僅か栗色。鳴声は、音楽的な一連のチュッチュッ鳴く声(コリマアメリカムシクイに似る)のあとに、もっと低い不明瞭な声が4〜8声つづく。
アサギアメリカムシクイ NORTHERN PARULA
標高に無関係に、落葉樹や針葉樹の成熟した森林で、普通。南東部の川の沼地でよく見られる。東部のアメリカムシクイで、咽が黄色く背面が青いのは本種だけ。背面に黄色い部分があり、小型で、目の周りに幅の狭い輪があり、翼に幅広い白縞があることにも注目。サルオガセモドキがあれば、そこに巣を作る。鳴声は、上がり調子のうなるような震え声で、終わりで急に音が下がる。毎分6〜7回。
ミナミアサギアメリカムシクイ TROPICAL PARULA
南部でのアサギアメリカムシクイに相当する。夏場、リオグランデ渓谷に棲息するが、普通でない。体色も囀りも習性もアサギアメリカムシクイに似る。雄は、よく目立つ黒い顔面と、まるではっきりしない錆色の胸で、識別される。雌の翼の縞は、アサギアメリカムシクイより小さく、目の周りに輪はない。
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●アメリカムシクイ属(GENUS DENDROICA) は、広い分類(278〜286ペ−ジ)で、翼には縞があって尾には斑がある、種として樹上で生活するアメリカムシクイを包含する。
キイロアメリカムシクイ YELLOW WARBLER
ヤナギの茂み、果樹園、郊外の潅木林に普通。黄色い胸のアメリカムシクイで、尾に黄色い斑があるのは本種だけ。どの羽毛にも白い部分はない。雄にある錆色の筋模様に注目。雌や幼鳥は、類似するクロズキンアメリカムシクイ(292ペ−ジ)と異なり、尾に黄色い斑があることで識別される。囀りは、約7声の澄んだ甘い声で、後半は前半より速い。典型的な最後の声は、不鮮明で上がり調子。毎分4〜10回。
シロオビアメリカムシクイ MAGNOLIA WARBLER
湿気のあるツガやトウヒの森林で普通。咽が黄色く、尾に幅広い白帯があるのは本種だけ。他のアメリカムシクイ属の鳥では、斑のついた尾羽がもっと少ない。腰が鮮やかな黄色で、翼の縞が目立つことに注目。幼鳥は、幅の狭い灰色の胸帯が独特である。囀りは、音質がキイロアメリカムシクイだが、それより柔らかく、約5声までである。毎分5〜8回。ソノグラムは下記。
ホオアカアメリカムシクイ CAPE MAY WARBLER
普通でない。トウヒやモミに営巣する。黄色い腰、栗色の頬、および翼の大きな白い部分が、雄の識別点。雌は、耳の後ろの部分と腰が黄色い。秋は、胸に細かい筋模様があり、腹と下尾筒が白く、腰がオリ−ブ色っぽい緑色で、耳の小さな部分が黄色っぽい(ふつうは見える)ことに注目。囀りは、それぞれ分離した細くて非常にかんだかい不明瞭な声を連続させる。毎分8〜12回。
キヅタアメリカムシクイ YELLOW-RUMPED WARBLER
海岸に沿って多数棲息する。特に大西洋沿岸で晩秋から冬にかけて多く、この時期に沿岸の低域の茂みで最も普通な鳥。北部や東部のトウヒの森、および西部の山地の針葉樹林に営巣する。腰が鮮やかな黄色で、側面の一部が黄色あるいはくすんだオレンジ色であることが識別点。北方と東部の亜種(マ−トルアメリカムシクイ)は、咽が白く、西部で繁殖する亜種(オ−ジュボンアメリカムシクイ)は、咽が黄色で、尾の白が腰に向かってもっと広がっている。寒い気候で飛んでいる虫が採れないときは、ヤマモモやアメリカツタウルシを食う。鳴声は、柔らかい声を震わせて歌う。毎分7〜11回。鳴声は、低音のチャッ (chuck)。ソノグラムは下記。