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自由帳


 7   小説、漫画で読む鉱物と砂金
更新日時:
2007/03/14 
※アラスカ物語  新田次郎著
新田次郎氏はNHK大河ドラマ武田信玄の原作者と知られています。主人公の安田恭輔(フランク安田)は実在の人物である。
明治元年、宮城県石巻で生まれた安田は外国航路の船員になり、やがてアラスカに留まりエスキモーの社会にとけ込みます。
やがてユーコンの流域で膨大な砂金と金鉱を発見し巨万の富を得ますが彼はそれを食糧不足や疫病で滅亡に瀕したエスキモーを救うために使います。
読んでいて大変感動的な物語ですが、それとは別に、安田の家族が砂金のたまり場を発見するくだりは何度読んでも興奮してしまいます。
 
※風の王国   五木寛之著
青春の門、生きるヒントなどのベストセラーを手がけているので、知らない人はいないでしょう。風の王国の様な伝奇ものも五木氏の得意分野です。この小説の中には鉱物の話が幾つかある。一つは二上山のサヌカイトや金剛砂のはなし、中華料理屋の主人がスプーンで一掬い砂を白い皿の上に広げ、サファイアを探す話。じつは私もこれが好きで1日やってても飽きません。心に幸せがないと見つからないとか・・。また、主人公の父親の仕事が鉱業所の地質調査の下働きで休みの日は伊豆のあちらこちらの山や廃山を探して歩きスピロテフ石など珍しい石を好事家に売りにいっていたというのも興味深い。実際に福島県石川や足尾銅山の標本などは鉱夫が持ち出してコレクターや大学の先生に売りに行くことも珍しくなかったようです。こうして得たお金は大概は酒代に化けていたとかいう話しをよく聞きます。
 
※傷追い人  画=池上遼一 作=小池一夫
昭和50年代、ビックコミックで劇画界のゴールデンコンビによって描かれたもの。傷追い人というタイトルも夢追い人から、もじったものだと思われます。
母親と恋人を謎の組織によって殺され無実の罪で投獄された茨木圭介の復讐を描く作品。日本の政治家、警察にも影響力をもつ謎の国際的秘密組織GPXにより恋人と母を殺された圭介は服役後、唯一彼等の目が届かないブラジルに渡りガリンペイロとなり復讐のため資金となる金鉱を探す。
物語の中では、ブラジルのガリンペイロ達の生活がリアル?に描かれているのに驚かされます。道具に関してもデッサンが精密だ。さすがリアリストの池上氏である。大型のハイバンカーにはエキスバンドメタルが入っているし、圭介はバテーでパンニングをしている。
物語後半、圭介はアメリカ屈指の財力を背景にGPXに対し最後の戦いに挑むのだが結果は・・・・そしてGPXの正体は?・・・・・
スピーディなストーリー展開、リアルな絵、11巻一気に読めてしまう傑作である。
平成には復刻版も出たが原在入手困難になっている。
 
龍−RON− 村上もとか作
赤いペガサス、六三四の剣で知られる村上氏の劇画、今でも連載は続いており30巻以上に及んでいますが、砂金の話は10及び11巻に見られます。
主人公、押小路龍が四国で砂金を掘る話があります。伯父の「砂金採りなら北海道が本場や、四国ではあまり聞いたことあらへんな」というセリフがあることからしても作者は、四国で砂金が採れるが、メジャーでないことは知っていたと思われます。
また、道具についてもカッチャ、カナテコ、金ザル、布ネコ、揺り板などが主人公達によって使われています。メッカイとゆり板をリュックに固定して移動する姿も違和感がなく漫画を書く前にちゃんとリサーチしていることがうかがえる。(ただし、ゆり板の持ち手が左右逆なのだけが少々気になったが)
さて最後は台風による川の増水で、砂金を失い命の危険にさらされるが、そんな中、金色に輝く露頭を発見します。しかし露頭を技師に調べさせた伯父は、愚か者の金と呼ばれる黄銅鉱であることを告げる。最初はガッカリする龍だが、伯父はそれが大変優秀な銅鉱床であることを告げ、龍たちは大喜びするのであった。
多分、漫画の中で揺り板とカッチャを使う絵が出てくるのは、後にも先にもこれだけかもしれません。
 
※のらくろ  田河水泡作
昭和6年から16年まで連載されました。
最初は、「のらくろ二等卒」から始まり「のらくろ大尉」までの軍隊時代と除隊後の「のらくろ探検隊」があり、これは大陸に渡り金鉱を探す話になります。
とくに参考になる部分はありませんが金かと思ったものが黄銅鉱だったという話もあり、黄銅鉱がいかに、紛らわしいものであるかは、結構知られていたことが分かります。
また、面白いと思ったのはメノウの話です。のらくろ達、探検隊が川でメノウを見つけ、大喜びで採取します。そのうち川よりも土の中の方が大きなものがあることに気が付き、さらにリュックにいっぱい詰めます。探検隊は、意気揚々と出発し、しばらく歩いていく路、道ばたに大きなメノウがゴロゴロ転がっているのを見て、探検隊の面々は「こんなにあると値打ちがないね」「珍しくなくなった」「僕はこんなもの捨てる」とメノウを全て捨ててしまいます。そして最後に一言「ない所にはないものでも、ある所にはあるものだね。まったく・・・」。鉱物採集をやっていると、こういう事って結構ありますね。
 
※パタリロ!  魔夜峰央作
20年くらい前から連載が始まり、今も続いていている。
主人公パタリロは南海の浮かぶ小国マリネラの国王である。世界有数の産出量を誇るダイヤモンド鉱山を有しているのだがパタリロはダイヤモンドを独自で市場価格を無視して独自にダイヤを輸出しているため国際ダイヤモンド輸出機構から殺し屋を送り込まれたりするのだが・・・
作者はダイヤ及び他の宝石の流通、特性、伝説についてもかなり詳しい知識を持っているらしく時々感心させられることがある。
現実にも世界中の鉱山のダイヤはイギリスのデピアス社によって全て集められ流通量と価格を調整されている。ただ殺し屋は飼っていないだろうが。
ストーリーの中に一つ興味深い話があった。英国情報部のバンコラン少佐が「なぜ宇宙ロケットなんか持っているんだ?」とパタリロに聞いたとき、「月面には酸素がないから隕石が衝突したとき高温と圧力でダイヤが生成されて、それが月面に転がっているかもしれないから拾いに行くんだ」と答えたところだ。
私の知識ではこの話に現実味があるのかどうかは分からないが、なかなか夢があって面白い話だ。
 
※ ムカデ戦記
戦国自代の甲斐の金山衆を描く珍しい劇画。武田の金山衆が鉱山の水抜き坑を作る技術を応用し、敵の城の井戸水を抜いたり、櫓の下や石垣の下を掘り抜きわざと落盤させ破壊をするといったエピソードが、上手に物語の中に取り込んであり感心させられる。
けど多少気になるのが坑内の岩盤を砕くために彼等が岩の上に草を置いて火をつけるというエピソード。この採掘法は「焼き堀り」と呼ばれ秋田県の延沢鉱山などでよく使われた技法で、現在も焼き掘り跡が保存され一般公開されています。
参考なまでに、正確な方法は岩盤の前に薪を置いて火をつけ、岩盤が高温になったところで水をかけて一気に冷却、それにより脆くなった岩盤を削るというものです。
余談ですが、物語の中で松山城から上杉への書簡連絡に犬を使っていますが、松山城を支配していた太田資正は世界で初めて軍用犬を採用したと言われています。原作者の博学ぶりには感心させられました。
 
※武田三代   新田次郎著
アラスカ物語と同じ新田次郎氏による武田家にまつわる短編集です。
中でも「武田金山秘史」は大変興味深い。物語は黒川金山の衰退、穴山梅雪が武田家に背くまでの心の変化、黒川における武田家の埋蔵金について息もつかせぬ物語がつづいていきます。おいらん淵は、実は現在知られている場所とは違うところをさしており、そこには今も隠し金が眠っているという。このネタは隆慶一郎著の「甲州金」にもネタとして使われているが、果たして実際はどうなのでしょう。


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2007年の砂金堀り


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