○ ―追加経済対策― 「 安全網 」の再構築こそ
( 出典 ; 平成20年10月10日 朝日新聞社説 )
「 財政の健全化はきわめて重要だ。 しかし、現在の日本には、景気回復が最優先課題だ 」
8年前、「 経済国難 」といわれた小渕内閣の時代に、堺屋太一経済企画庁長官が国会の経済演説で述べた言葉だ。 最近そっくりな言い回しを、麻生首相をはじめ政府・与党から聞く。
補正予算案が衆院を通過したばかりだが、麻生首相は追加の経済対策をまとめるよう指示を出した。
米国発の世界的な金融危機は、まだ全体像を計りがたい。 米国をはじめとして世界の景気は、これから深刻な打撃を受けるだろう。 経済の悪化はまだ入り口の段階にある。 危機を脱出し、経済を立ち直らせるには、何年もかかると考えておいた方がいい。
輸出主導で戦後最長の景気回復を保ってきた日本経済も、手痛い影響を受けざるを得ない。 私たちはそれくらいの覚悟をもって、この負の圧力に立ち向かっていかねばならない。
こうした状況で、国民の不安を抑えるための政策を検討し実行するのは政治の役目である。 しかし、麻生政権の考え方は、まず減税や公共事業など財政出動による旧来型の景気対策ありきと見受けられる。 その財源には、国債の増発も「 場合によってはやむを得ない 」とされている。
公共事業や減税を大盤振る舞いした小渕内閣の路線へ逆戻りしたようだ。 「 困った時の常備薬 」。 そんな皮肉を言いたくもなる。 バブル不況から脱出するために景気対策を連発した結果、国だけで550兆円もの国債残高が積み上がり、財政が身動きできなくなってしまった。
財政に余裕があるならまだ分かるが、使える財源はごく限られている。 今回の不況はまだ始まったばかりで、先が長く底も深そうだ。 なけなしの財源は、いちばん効果的なときに有効な方法で使わねば意味がない。
いま取り組むべきなのは、少子高齢化が本格化していくのに備えて、社会保障を組み替え、維持していくことではないか。 「 安全網 」の再構築なしに国民の安心は得られない。 遠回りのように見えるが、それが結局は内需を充実させることにつながるに違いない。
民主党の前原誠司前代表は衆院予算委で、道路財源を社会保障へ大胆に振り分けるよう求めた。 雇用や老後など不安が高まりそうな分野の「安全網」を強めるこうした手だてこそ重要だ。
金融危機のあおりで資金繰りが厳しくなってきた中小企業へ、信用保証で資金を回す。 雇用確保や内需型への転換に努力する企業に対し、応援する政策も有効かもしれない。
薄く広く予算や減税をばらまくのではなく、効果があがりそうな分野へきめ細かく対策を打つ。 そうした対策づくりを求めたい。
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