○ みどりの復興 ― 間伐の支援を広げたい ―
( 出典 ; 平成21年5月4日 朝日新聞社説 )
荒廃する森林をよみがえらせ次世代へ渡すには、木を間引く間伐が欠かせない。 これが全国に滞っている。
間伐材の売却代金に国や県からの補助金を足しても、作業道の開設、作業や輸送にかかる経費の方が高くなってしまうからだ。 その結果、間伐をしても伐採した木を運び出さず現場に放置する「 切り捨て間伐 」が増え、間伐実施分の6割までになっている。
そんな窮状を打開する仕組みを、東京の環境NPO「 オフィス町内会 」が考え出し、実施している。
間伐を支援するサポーター企業を募り、間伐材でつくった紙を買ってもらうのだ。 間伐費用の不足分を紙代に上乗せするので、普通の紙より10%ほど割高になる。 そうすれば、製紙メーカーに間伐材を市価の約2倍で買ってもらえる。 あらかじめ「 間伐に寄与した紙 」の予約注文を受け、売れ残る心配もなくす。 そんな仕組みだ。
このおかげで、岩手県岩泉町では間伐作業が経済的に成り立つようになった。 4年前に6社で始まったサポーター企業は70社までに増えた。 企業にとっては紙代が少し上がるだけなので、支援しやすいのが利点だ。
販売する紙は年間360トンを超す。 間伐面積は当初の1.8ヘクタールから25ヘクタールへ広がった。 この2月から岩泉町の隣の葛巻町が加わり、5月からは青森県三沢市も参加する。 成功を聞いて静岡県庁と浜松市がこの方式の導入準備を進めている。
「 オフィス町内会 」は18年前、職場から出る古紙の共同回収システムを考案し全国の先例をつくった。 当時はまだ、企業の古紙回収は手つかずだった。 初めは30社だった参加企業がいまは1200社に。 同様の活動は全国の50ヵ所以上へ広がっている。 扱い慣れた「 紙 」を仲立ちに、みどりの支援にも乗り出したのだ。
間伐材で作った割りばしの普及に取り組むNPOもある。 東京の「 樹恩(じゅおん)ネットワーク 」だ。 いま全国64の大学生協で年間1千万膳(ぜん)が使われている。 こうした間伐支援モデルを、森林整備の足がかりにしたい。
山主側も知恵を絞る。 京都府南丹市では森林組合が複数の山主の所有林を集約した。 高性能機械の導入などで経費を削減し、組合の経営も維持しつつ森林の再生に取り組んでいる。
林野庁によると、日本の森林面積2510万ヘクタールの4割を占める人工林のうち、間伐が必要なのは465万ヘクタールで、半分近くにのぼる。 日本は温室効果ガスの排出量を90年より6%削減することを約束しているが、3.8%分は二酸化炭素を吸収する森林に担ってもらう。 森林への期待は大きい。
低迷する林業を一朝一夕に立て直せるわけではないが、みどりを守り育てる試みをふくらませていきたい。
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