○ 森は海の恋人
( 出典 ; 平成18年1月18日 朝日新聞(夕刊) ”窓”論説委員室から )


                 森は海の恋人

 自然環境を考える時、森と川と海はこれまで別々に語られてきた。 この三つのつながりが大切だというのは最近の考え方だ。
 きっかけの一つに、宮城県のカキ養殖(ようしょく)業者の畠山重篤(はたけやましげあつ)さんたちが89年から始めた取り組みがある。 「森は海の恋人」を合言葉(あいことば)に、「牡蠣(かき)の森を慕(した)う会」をつくって、気仙沼湾(けせんぬまわん)に注ぐ大川の源流域に木を植え続けている。 漁師が山で植林をする運動は、いまでは全国各地に広まった。
 森林の腐葉土(ふようど)からしみだした栄養豊かな水が川に流れ、海に注ぐ。 その水でコメがつくられ、貝も魚も育つ。 だが、現実には山は荒れ、田んぼでは農薬が使われる。
 3年前に発足した京都大学フィールド科学教育研究センターは、森と川と海の関係を学問的に解明しようと「森里海連環学(もりさとうみれんかんがく)」を掲げた。 川ではなく里にしたのは、人間の生活も視野(しや)に入れるためだ。 畠山さんは「夢のようだ」と喜ぶ。
 昨春、センターは畠山さんのほか、長野県で里山再生を進めている作家のC・W・ニコルさんに、非常勤の「社会連携(けんけい)教授」に就任してもらった。 全学共通科目の「森里海連環学」という講義では、畠山さんが体験を語り、何人かの学生は「連環学発祥(はっしょう)の地」ともいえる畠山さんのカキ養殖場を訪ね、実習をさせてもらった。
 縦割りの研究から統合へ。 森林や海洋生物の専門家だけでなく、将来は法律や経済など文系からの参加も検討している。
 自由な学風が伝統の京大で、さて、何が生み出されるのか。             (大峯伸之)


 

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