○ 「限界集落」流域管理、下流の都市にも役割
  ( 出典 : 平成19年10月21日朝日新聞 ―10月18日京都府綾部市で開かれた「全国水源の里シンポジウム」
   《主催・全国水源の里シンポジウム実行委員会》における大野晃長野大学教授の基調講演要旨― )

 95年までの35年間に、人口5万人以上の自治体の93%で人口が増えた。1万人未満の自治体は92%で人口が減った。 大きく二極に分かれている。
 65歳以上が人口の半数を超え、支出増で財政維持が困難に陥る自治体を「限界自治体」と定義した。 2000年時点で30年後に限界自治体になると予測されたのが144。 三位一体改革による地方交付税の減額もあり、小規模自治体の限界自治体化は加速している。
 自治体を支えているのは集落だ。 国土交通省の昨年の調査では過疎指定の6万2273集落のうち、7878集落が限界集落。 90年代は西日本中心だったが、全国に広がっている。 県庁所在地でさえ、市町村合併によって限界集落が増加している。
 限界集落が増えると何が失われるか。 一つは、農村の神楽など伝統芸能や文化の喪失。 二つ目は日本の原風景と日本人に固有の叙情性や感性の喪失。 そして、山の荒廃だ。 耕作放棄地が増大し、山林は放置される。 保水力の低下した山は、渇水問題や鉄砲水による水害をは発生させ、下流域の都市住民や漁業者の生産と生活に大きな障害を生む。 流域社会圏の中で、下流と上流が互いに果すべき役割を考え、流域環境を共同で管理していくことで展望が持てる。
 限界集落のお年寄りに行政は町へ下りろというが、それが幸せか。 買い物や金の出し入れなど最低限の生活、「ライフミニマム」を支える拠点を設置して、豊かな老後を送る手だてを考えるべきだ。 また、55歳以上が半数以上の「準限界集落」を再生する「予防行政」が、地域づくりのポイントになる。
 国は、山の面積に応じた目的税・森林環境交付税を早く創設すべきだ。 山の保全の仕事に若い人がつく。
 自分達の地域を自分達でどうしたらいいか。 根底には住民の主体形成の問題がある。 高知県の旧十和村(現四万十町)では女性たちが3年間勉強会をやり、有志がさらに1年かけて話し合い、政策提言の発表会をやった。 一部に予算がついて農産物の販売所ができ、そこを拠点に活動が活発化した。
 綾部市の条例を機に、限界集落をめぐる問題に全国の自治体が取り組み、国の施策に結実させていくことが大切だ。

 ( 参考 ) 限界集落 連携の道 〜自治体集い政策提言へ〜
     ( 出典 : 平成19年10月21日朝日新聞 )

 過疎と高齢化で存続が危ぶまれる「限界集落」がここにきて注目されている。 18日には限界集落を抱える自治体の首長らが再生を目指した全国協議会を年内に設立することを決めた。 参院選挙大敗の反省から地方重視を掲げる福田政権も「地方の疲弊」の象徴として支援策の検討を始めている。
 背景には事態の広がりと深刻化がある。 過疎指定自治体を対象にした昨年の国の調査で、全国で高齢者が住民の半数を超す集落が7878集落。 消滅の可能性がある集落は2643に上った。
 18日に京都府綾部市で開かれた「全国水源の里シンポジウム」には、その処方箋を求めて全国の51市町村と13府県から首長や職員ら約850人が詰めかけた。
 各地の取り組みの報告や議論の後、限界集落を抱える自治体が情報交換し、国や都道府県に政策提言する「全国水源の里連絡協議会」(仮称)を年内に設立する大会アピールを採択した。
 増田総務相が再任後の9月末、初めての視察先に選んだのも中国山地の山あいにある島根県邑南町(おおなんちょう)の限界集落だった。 政府が9日に発足させた地域活性化統合本部で限界集落への対応も取り上げ、11月中にまとめる「増田プラン」に盛り込んで来年度予算に計上させる構えだ。

 

<トップページに戻る>    <資料のインデックスに戻る>