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| 2000年秋 | ||
| ある一人の男がサンフランシスコ国際空港に降り立った。 その男は、2つの目的を胸に秘めているが、外観からはその様子はまったく窺い知れない。 それもそのはずだ。 その男は、ある機関から、極秘命令を受けて、東洋のはるかな、ちいさいな島国から、やってきたのだ。 その男にしても、もちろん「私はある極秘命令でここにきました」なんて、他人に言えるはずもない。 たとえ、言ったとしても、SFOで、日本語を理解する人が果たして何人いるか。 さて、そんな、私はごく普通の旅行者よ。とその男は人に見せるために、到着当日はありふれた観光客と化していた。 ホテルは、ケーブルカーの発着所に近かったら、写真を撮ったり、付近をふらついたり。 ユニオンスクエアのまん前にある、由緒正しい格式高いホテルだった。 夕食は、ガイドブックをみながらステーキハウスで安めのワインなどをのみながら、過ごしていた。 食事をしながらその男は考えた。 それにしても、9月だというのに、ここは寒い。 待ち歩く人が皮ジャンなどをきているのが、わかる。 あまり寒いと今回のミッションに影響してしまう。 なんとか、暖かくならないものか。 明日は、暖かくなってほしいものだ。 少々のワインではまったく温まらない。 ホテルにもどったら、熱めのシャワーでも浴びようか。 |
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| その男は、翌朝ホテルからタクシーを拾って、駅に向かった。 タクシーの運転手は、明らかに出稼ぎとわかる風情をしていた。 ヘイ!ニッポンジン。どこまで行くんだい? (あれ、こいつ、俺のこと、ニッポンジンだといいやがった。なぜ判ったんだ。) まーーーーいいか。 ヘイ!ドライバーよ。 駅までさ、そこからは極秘命令を受けてるので、サンノゼなんて口が裂けてもいえないぜ。 ヘイ!ニッポンジン。サンノゼまで100ドル出せよ。 つれてってやるぜ。 おおおおっ!!俺がサンノゼまで行くのをどうして知ってるんだ、こいつは。 敵のエージェントか。 ヘイ!ドライバーよ。 友が待ってるから、駅までで良いのだ。 判ったか。ドライバー。 |
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| アドビのビルに飛行機が隠れた。 なんてでかい街なんだ。 東洋の、ごみがたくさん落ちているトキオとは、ずいぶん違うぜ。 お、ジョーダンの実物大の写真か。 でかいな。 お、ビートルも走ってるぞ。 ところで、昨日の心配もなんのその。 今日はあまりにも天気が良くて、ここは暑くて、ミッションが何であるか忘れてしまった。 さて、なんであったかな。 しばらく考えよう。 |
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| 町並みに清潔さ 簡素さは、格別なモノであった。 いままさに、世界の知識をリードする街。 またハイテクのみならず、いろんな面での世界のリーダとしての、 役目・プライドがそこにはあるからかもしれない。 この街の雰囲気にふれたとたん私の心はぶっ飛んだ。!!!!! それにしても今日は良い天気だ。 湿度がないから、さわやかだ。 こんなさわやかな空気と、カリフォルニアの新鮮な思考 なにより、自負が良いインセンティブになっている。 その事実を目の当たりにして、やはり勝負にはならないな。と。 あきらめの境地でもないが、さて移動だ。 せっかくはるばるここまで来たんだから、何はともあれ、スタンフォード。 サンノゼにしても、ここ(スタンフォード)にしても、何もかもでかい。 でかいのは、なにも街の規模だけに限らず、きっと心自体がでかい。 (のだろう) 実は、スタンフォードでは人に道を聞いた。 大学構内であるが、とにかくでかすぎて、どこになにがるのやら。 自転車を止めた女の子がいたので、ある場所をきいたら、なんと。 彼女はその場所まで連れていってくれたのだ。 目的の場所は(極秘事項だから言えないが)それほど離れた所ではなかった。 とりあえずお礼を伝え、何気なく見ていると、彼女は自転車の所にもどり、 カギをハズしているではないか。 さっき、私が見た光景。彼女は自転車をおりたのではなく、授業を終え、帰ろうと していたところであったのだ。 あ〜〜〜〜〜感謝! 彼女のおかげでミッションが無事終了したのは言うまでもない。 それにしても、かわいい人だった。 知的生産・・・・を行うために必要なのは何も設備だけではない。 (事は私が、言うまでもない) だが、思考などに息詰まった場合、周りの雰囲気がその解決に大きな役割を することは副次的な効果として認められる。 そのようなハード的な環境にソフト的な環境が相乗的に効果を生み出す。 んだろうな。 私が構内を歩いている間も、日本人(だろう)と何人かすれ違った。 なんと生き生きしているのだろうか。というのが私から見た感想である。 輝いてさえいた感じがする。 緑の多さと、ゴミのなさ。 アトラクションのない○ィズ×ーランド見たいな綺麗さ。 あこがれが、またさらに強くなった。 私の環境を考えると、到底かなうモノではないが、金銭的な問題(と学力) が解決さえ出来れば、留学したい。 私風情にも、キット良い学問をする事が出来る。 そんなこんな(突拍子もない)感想を痛切に。 キリのサンフランシスコ。 かの地に着く前は、そんな感じであった。 だが、あまりにキリが立ちこめているとミッションが達成出来ない恐れもある。 今回のミッションはそれほどシビアなのだ。 天候に左右されてしまう。 だが、そんな杞憂もかの地に立ってみてまさに杞憂であった。 一人の男は、ミッションを遂行するために今日も、観光客と化して、朝早くから、 ケーブルカーにのって、フィッシャーマンズワーフまで出かけることにした。 朝靄の中、坂道をごとごと上っていくケーブルカーもまた風情がある。 男は観光客と化しているのだが、まだ朝が早いので乗客は少ない。 少し目立っているかもしれない。 だが、風景はすばらしい。 また運転手(とっ言って良いのか?)もなかなか風情がある。 男は思った。 こんなに感傷ににふけっている場合ではない。 何とかミッションを遂行するために、普通を装わなければ。 そこで、考えた。 フィッシャーマンズワーフについたら先ず、名物のクラムチャウダーを食べよう。 場所はピア39にある。 そうすればたとえ後を付けられているとしても、少しは誤魔化せる。 そして、写真だ。 幸いデジカメを持ってきているので、あちこちを記録しよう。 そうだ、今回のミッションのためにICカードを使った録音機も持ってきたんではないか。 これでケーブルカーの音でも摂るか。 そして極めつけは、ゴールデンゲートブリッジ観光だ。 これだけ観光客を装えば、疑いは少しははれるだろう。 だがまてよ。 つけているのが、CIAやFBIだったらそれだけで済むか? いや、きっとつけられているし、それだけで済むはずがない。 何か策はないか。 そうだ、ランバード通りの坂でも寄り道して、観光客を主張してしまえ。 これで、極普通の観光客が歩くところを、漏らしていないか。 このくらい歩けば、疑いも晴れるだろう。 でもフィッシャーマンズワーフのクラムチャウダーはうまかったな。 朝早くて、寒いからよけいうまかったぞ。 さて、ゴールデンゲートブリッジへ行こう。 バスは何処からのるんだ。 乗り場はそこだ。 観光客らしく、とまどって見せたりして。 なんとか、乗り継いで観光名所、ゴールデンゲートブリッジへ。 ミッションもなんのその。 アメリカって国は、何もかもがでかいが、この橋もでかい。 こんなもの何年も前の時代につくってしまうんだから、やはりすごい国だ。 でもでも、風が強い、っていぅ〜〜かぁ、強すぎ。 でもでも、エージェントらしくなくゴールデンゲートブリッジを渡って見せたりして。 途中、CIAかFBIかという感じの敵のエージェントにも出くわしたが、 そこは百戦錬磨のこの男。 なんなくすり抜けたさ。 あ〜〜、寒かった。 バスの中は暖かい。 それにしてもこのバス、都バスぞ、いやちがった飛ばすぞ。 速い早い。 追っ手をまいてくれるのかな。 でも、なぜそれを知ってる? まー我慢、我慢、平静を装い、終点まで。 ここからまた、フィッシャーマンズワーフまで歩いていこう。 海岸線に沿って、ウォーキング道がある。 ジョギングしている人もいる。 アメリカって危険だ、危険だって聞くけど、それほどでもないところもあるな。 なんて一人で感心。 さて、暖まったら、腹が減ってきた。 食事はここにしよう。 かに三昧・・・・・・ パスタとかにで、腹一杯。 でも、テラス席だったからここでも、寒かった。 ミッションを持ったエージェントとは誰も気が付きめー! これで安心、安心。 ほっと一息。 おお!もうこんな時間か。 夜のケーブルカーはどんな具合かな? 寒いのをこらえて、普通の観光客に見せるための、観光客しよう。 あーーー、今日も良く歩いたな。 お休み・・・・・・ |
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| なんのミッションを遂行したのか。 (この男自身も解らなかったが)翌日サンフランシス国際空港をお昼に出発するユナイテッド航空853便に、 この男の顔があった。 あれほどの事を成し遂げたエージェントとしての厳しい顔つきから放たれた、「のほほん」とした 「あきれかえった顔」の男が乗っていたことは、CIAかFBIかのエージェントはとうに掴んでいたが、 この男がアメリカで何をしでかしたのか、証拠を掴むことが出来なかったのでほったらかしにされただけであった。 スチワーデスが食事や飲み物を持ってきても、あまり食べずにただただ眠りこけるこの男には、 ミッションの重さが充分わかりきっていた。 今回はそれとなく、でもなんとなく遂行した【超、超重要なミッション】であったが、 この男はいともたやすくそれを成し遂げてしまったのだ。 |
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| ジェットエンジンのうなりと少しの揺れを伴う9時間ほどの睡眠で、男はまた日本の戻ってきた。 成田では、耳に聞こえる懐かしい日本語にホンの少しの戸惑いを見せたりしながら、次回渡米までには、 もう少し英語をしゃべれるようになりたい・・・・ などと夢みたいな、本当に夢を見ているような。 今回もまた、無事終了した。 |
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| でも、ミッションって、一体何だったんだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! | ||