第1章 黒潮ハンティング

 『う〜〜〜んんん...混合しちゃっててよくわからんねぇ。』アクアシャトル(曳航タイプのCTD)が混合層より浅い70m深までしか潜らないので,そのデータから我々が黒潮に入ったのかどうかを判断するのはスマートとはいえなかった。
 夏場であればこの辺り(伊豆諸島周辺)は成層しているため,アクアシャトルでも黒潮と沿岸水とのフロントが判るはずだが,季節は秋。連日の悪天候も手伝い混合し,さらに黒潮の蛇行により
海域の表層では沿岸水と黒潮の水が入り組み合い混乱域のようである。
 幸運にもADCP(ドップラー効果を利用した音響式・流向流速計)は黒潮とおぼしき強い東流れを捕らえていたので,我々が黒潮付近にいるということは明らかであったが,黒潮のどこにいるのかが分からなく困っていた。
 そこで,『XBTを打とう!』(XBT:使い捨ての水温計測器で船から投入し数百メートルの深さまでの水温を鉛直に測定する測器)ということにしました。

〜XBT投入〜
 『こちら,研究室。XBTランチしてください。』
 「ガガガ...こちらデッキ,ランチ了解。ランチしました。...ピッ」
 『こちら研究室。ランチ確認。投入まで待機してください。』
 「ガガガッ...了解しました。」
 『XBTレッコ』「レェッッコ」 ピンを引き抜くとXBTのプローブは筒から滑り落ち,水温を計測しながら海中へと沈んでいきます。
 研究室ではXBTのデータがリアルタイムでパソコンの画面に映しだされます。『う〜ん,ここまで混合してるとアクアシャトルには難しいねぇ...』と誰かがつぶやきます...沈黙...今までの8時間ほどのアクアシャトルでの観測は無駄だったのか...まあ,後悔してもしかたないですよね。事実を受けて機敏に方向修正をするのがサイエンスです。

 黒潮の位置をつかむために,『のまま南下しながら何本かおとしてみましょう。』ということにしました。
 さて,問題です。XBTのファイル形式はバイナリーデータで,あなたの研究室では昔々に誰かが作ったPC98用の化石のようなプログラムを使用してファイルをテキスト化して使っていたのですが,そのプログラムを持ってくるのを忘れてしまったようです...。計測で使っているPC88互換機の286マシンでリプレイすることはできるのですが,いくつかのプロファイルを比較したり断面図を作ることはできません...

 チーフあなたの腕の見せどころみたいですね。頑張りましょ。

第2章〜MATLABでデータを読み込もう〜