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上記タイトルで句会を開いたのでその記録をまとめました。ご隠居横丁は職場のある部署のある場所の呼び名です。
第2回ご隠居横丁句会(2004年10月7日18時半開会23時散会、銀座杉林)
参加者:内藤呈念先生 荒谷たそがれさん JUNJUN子改め吉田鉄井さん 井上青軸
(急な所用で出席できなくなった高橋なには橋先生が投句参加)
兼 題:「案山子」「無花果」「運動会」
提 出:兼題3句に当季雑詠2句を加え5句
選 句:各人5句=秀句2句には講評
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兼題の部
呈念選
@完熟を蜂と取り合ふ無花果かな (青軸) <無花果=むかか>
A月明やしをれて紅き酔芙蓉 (なには橋)
<評>@実を付けた無花果の木を見た人は少ないだろう。完熟の無花果には蜂や蝶が集まる。「取り合う」にリアリティーがある。A酔芙蓉は1日花。朝咲いた時は白花のような淡いピンクだが、時とともに色を深め夕刻にはほとんど赤に変わってしぼむ。1日2花というべき玄妙。観察が深い。
・胸厚き土佐の棚田の案山子かな (なには橋)
・幼子を案山子が守する田刈かな (青軸)
・運動会ヒーローだった過去がある (青軸)
たそがれ選
@幼子を案山子が守する田刈かな (青軸)
A無花果や子規を想ひて種を噛む (鉄井)
<評>@案山子の子守に山間部の稲刈りの光景がよく表現された。A子規は病床にあって食べ物に執着した。無花果を食べて子規を思う。子規への深い敬慕が見て取れる。
・秋天や南都の邪鬼の出開帳 (呈念) <出開帳=でがいちょう>
・ここに来て共に呑もうぞ野のかかし (鉄井)
・食ひ終へし無花果の種ぷちと噛む (なには橋)
鉄井選
@脱北の民安らけく案山子佇つ (たそがれ) <佇つ=たつ>
A運動会白線親子隔てけり (なには橋)
<評>@案山子を詠んで北朝鮮の民を思う。スケールが大きい。句境が広いといって良いだろう。時事を詠むと失敗しやすいが脱北と案山子が見事にマッチした。A競技者として参加している子と見守る親。そこには日常の親子関係とは違う関係が見える。親子を分かつ白線にそれを見たと言うのである。慧眼である。
・胸厚き土佐の棚田の案山子かな (なには橋)
・完熟を蜂と取り合ふ無花果かな (青軸)
・分校は今年限りや運動会 (呈念)
青軸選
@胸厚き土佐の棚田の案山子かな (なには橋)
A分校は今年限りや運動会 (呈念)
<評>@土佐と棚田と胸厚きの3つの語がぴったりかみあった。胸厚きで修飾される案山子が「土佐の」「棚田の」と畳みかけた上で最後に登場しすとんと落ちる。決まりすぎの感すらする。A母校が廃校になるのは寂しい経験である。分校最後の運動会は、地区総出の行事であろう。運動会がにぎやかであるだけに廃校の現実が切実さを持って迫ってくる。
・運動会昼は弁当競ひ合う (鉄井)
・局面のにはかに険し秋扇 (呈念)
・無花果のもつともらしく千疋屋 (呈念)
提出句一覧
呈念先生
・無花果のもつともらしく千疋屋
・分校は今年限りや運動会
・案山子立てて原田泰治の世界なる
・秋天や南都の邪鬼の出開帳
・局面のにはかに険し秋扇
たそがれさん
・腹張って「無花果」恋しでもいやだ
・無花果や割れてしたたり顔火照る
・運動会女子も馬上でさあかかれ
・覚えたぞへのへのもへじ案山子見て
・脱北の民安らけく案山子佇つ
鉄井さん
・無花果や子規を想ひて種を噛む
・運動会昼は弁当競ひ合う
・歓声にうねって揺れる十月の風
・ここへ来て共に呑もうぞ野のかかし
・「まだ寒くないよ」健気なかかしかな
青軸
・完熟を蜂と取り合ふ無花果かな
・運動会ヒーローだった過去がある
・幼子を案山子が守する田刈かな
・名月のわづかに欠けて昇りけり
・蜜柑畑三男三女を育てけり <蜜柑畑=みかんばた>
なには橋先生
・食ひ終へし無花果の種ぷちと噛む
・運動会白線親子隔てけり
・胸厚き土佐の棚田の案山子かな
・月明やしをれて紅き酔芙蓉
・秋鯖の空より碧くはねるなり
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席題の部
席題 「曼珠沙華」「ススキ」「月」「銀杏」
各題に複数句提出、各人計7句選(句の後ろ=以下は選んだ人)
呈念先生提出6句
・曼珠沙華宙抱くごと蕊を張り =青軸選
・彼岸花蕊の先なる金の粒 =鉄井選
・芒原暮色に沈み風を呼ぶ
・月天心ざわわざわわの曲流れ =たそがれ選
・半身に薄皮まとひ銀杏の実 =たそがれ、青軸選
・銀杏や底に沈みてエメラルド
たそがれさん提出6句
・征きし人礎かなし曼珠沙華 =青軸選 (礎=いしずえ)
・白き波ヤマトタケルのすすきかな =鉄井選
・すすき野や露伴が好いたたたずまい=呈念選
・仲麻呂に代りて望む奈良の月 =呈念、鉄井選
・さざなみに月の光やドビュッシー =鉄井選
・コンビニでおでんの銀杏もうひとつ
鉄井さん提出9句
・ちろちろと赤き舌泳ぐ曼珠沙華 =たそがれ、青軸選
・あの月を包みこみたい曼珠沙華
・手招きをされているようで山すすき =呈念、青軸選
・摘みてなお揺れてかなしきすすきかな=呈念、青軸選
・煮て焼いて蒸して喰おうか丸き月 =青軸選
・ローレライ濡れて見上ぐる青き月 =呈念、たそがれ選
・シューベルトおぼろ月夜に嫉妬をし
・輪をつけて指にはめたし銀杏や =たそがれ選
・殻割りて薄皮むきて唾のわく
青軸提出6句
・曼珠沙華罪深き色あせやすく =呈念、たそがれ選
・ススキの穂折りたる罰か長き傷 =鉄井選
・すすき折りて知りたる蛇笏の重さかな=たそがれ、鉄井選
・名月の罪色おびて昇りけり
・いま昇る軽き月うさぎ踊る =呈念、鉄井選 (軽き=かろき)
・銀杏の口に入る色エメラルド