第3回ご隠居横丁句会

(2004年11月18日午後7時開会、10時過ぎ散会、銀座杉林)

参加者:内藤呈念先生、高橋なには橋先生、荒谷たそがれ先生、吉田鉄井先生、井上青軸
兼 題:「時雨」「山茶花」「落葉」(持ち回りで青軸が出題)
提 出:兼題3句に当季雑詠2句を加え5句
選 句:各人5句=秀句2句には講評

兼題の部

呈念選
@ 傘を打つ音のかそけき時雨かな (鉄井)
<評>時雨を耳でよくとらえた。「かそけき」がしぐれる感じをうまく表現している。かそけ
きの軽い音が良い。
A 残菊の闇触るるより艶めける (なには橋)
<評>残菊は重陽の節句すなわち9月9日を過ぎて残った菊をいう。盛りを過ぎて捨て置か
れる菊をしっかり観察し、句の響きも耳に心地よい。ホトトギス調の佳作。
・ 初しぐれ末子心は伊予にあり (青軸)
・ フルヘッヘンド灰を落葉の塚とする (青軸)
・ さざんかのちるや赤白白白白 (なには橋)

なには橋選
@ 塾帰り子らの背中もしぐれゆく (青軸)
<評>子どもの背中にかかる時雨にあわれを感じてけっこうである。
A 雲呑の箸から逃げて冬に入る (呈念)
<評>雲呑がまことにうまそう。寒さに入るころの感じがよく出ている。
・ 目つむりて鳩の顔掻く小六月 (呈念)
・ 双手あげ落葉を浴びてゐる漢 (呈念)  <漢=やから>
・ 山茶花やエチュードいつもひつかかり (呈念)

たそがれ選
@ 山茶花の八重のほぐれて落ちにけり (青軸)
<評>山茶花についてあまり詮索したことがないが、落ちる花びらをほぐれてというのが、
感じがよい。
A 石蕗の思ふほか永きいのちかな (青軸)
<評>石蕗はその辺に生えている草だがよく観察していて確かにそうだと思わせる。はかな
さへの共感に共感を覚える。
・ 傘を打つ音のかそけき時雨かな (鉄井)
・ 塾帰り子らの背中もしぐれゆく(青軸)
・ 残菊の闇触るるより艶めける (なには橋)

鉄井選
@ 野仏にしぐれとりわけやはらかく (呈念)
<評>秋は五感が感じる季節。時雨がこう降っていると感じる力がすごい。やわらかくとい
う言葉は人間への温かさを感じさせる。
A さざんかのちるや赤白白白白 (なには橋)
<評>独創的。視覚的な美しさだけでなく口に出した時の「白白白白」の響きも感じがでて
いる。
・ 山茶花の実を拾う子ら朗らかに (たそがれ)
・ 囲碁殿堂主なき幕開け涙雨 (たそがれ)
・ 雲呑の箸から逃げて冬に入る (呈念)

青軸選
@ さざんかのちるや赤白白白白 (なには橋)
<評>山茶花がこのように散ることはあり得ないと思うが、色彩といい、仮名と漢字の使い方
といい実にうまい。すべてが見事に決まっている。
A ひとひらの落葉は空へもどりけり (なには橋)
<評>ひとひらのという言葉の、その軽い感じがいい。
・ 雲呑の箸から逃げて冬に入る (呈念)
・ 傘を打つ音のかそけき時雨かな (鉄井)
・ 残菊の闇触るるより艶めける (なには橋)

提出句一覧

呈念
・ 野仏にしぐれとりわけやはらかく
・ 山茶花やエチュードいつもひつかかり
・ 双手あげ落葉を浴びてゐる漢     <漢=やから>
・ 目つむりて鳩の顔掻く小六月
・ 雲呑の箸から逃げて冬に入る

なには橋
・ 初しぐれ仰ぎて濡るる伏見かな
・ さざんかのちるや赤白白白白
・ ひとひらの落葉は空へもどりけり
・ 残菊の闇触るるより艶めける
・ 田中正造の遺品石ころ芋を煮る

たそがれ
・ 恩遇の御霊を鎮む時雨かな
・ 山茶花の実を拾う子ら朗らかに
・ 春草の「落葉」に染まる小紋かな
・ 伊豆の海落葉が招く魚影かな
・ 囲碁殿堂主なき幕開け涙雨

鉄井
・ 傘を打つ音のかそけき時雨かな
・ 冷気ごと服にしみこむ時雨かな
・ 山茶花のいつはじけたか大輪に
・ 山茶花のとうろうの灯に似て咲けり
・ 紅に黄に街よ色づけ落葉言ふ

青軸
・ 塾帰り子らの背中もしぐれゆく
・ 初しぐれ末子心は伊予にあり    <末子=ばっし>
・ 山茶花の八重のほぐれて落ちにけり
・ フルヘッヘンド灰を落葉の塚とする
・ 石蕗の思ふほか永きいのちかな

……………………………………………………
席題の部

席 題:「熱燗」「鷹」「七五三」=鉄井さん出題
提 出:今回は6句めやす提出、多寡は自由。
選 評:6句選、上位2句に講評。

呈念選
@ 鷹一羽身じろぎもせず澪標 (青軸)
<評>自然のきびしさに耐え、身じろぎもせず澪標の杭にとまっている姿が印象的である。
A 足指に草履食い込む七五三 (鉄井) 
<評>小さい頃の草履の感触を覚えていたのだろうか。実感が伴っている。
・燗酒に若気の至り封じ込め (たそがれ)
・腕より鷹とび立てば海へゆく (なには橋)
・燗酒につい千鳥足ボレロかな (鉄井)
・しあはせの形に写る七五三 (青軸)

なには橋選
@ 囚はれの鷹は尾羽根をしごきをり (呈念)
<評>囚われの鷹は哀れなようだが、実は根性を持ってて、哀れだけではないのかも知れな
い。尾羽根をしごくにその感じがでている。
A 足指に草履食ひ込む七五三 (鉄井)
<評>小さな子。痛々しい風景。抱き上げればいい。でも抱き上げない。耐えている大人の
視線を思った。
・鷹一羽身じろぎもせず澪標 (青軸)
・鷹渡るとふ大空を見上げをり (呈念)
・七五三トルコマーチの歩みかな (鉄井)
・千歳飴引きずっている七五三 (呈念)

たそがれ選
@ 鷹一羽身じろぎもせず澪標 (青軸)
<評>自らをひとり恃む姿。孤独で高貴さを感じさせる。
A 腕より鷹とび立てば海へゆく (なには橋)
<評>鷹匠の腕から放たれた鷹。海へ行く状況は分からないが、広がりを感じた。
・鷹が爪突き刺す如しホロヴィッツ (鉄井)
・ブルースの絡みて苦し燗酒や (鉄井) 
・燗酒に酔ひてくすぶるポロネーズ (鉄井)
・しあはせの形に写る七五三 (青軸)

鉄井選
@ 燗酒のうらめしき朝恋しき夜 (青軸)
<評>酒飲みの実感をよくぞうたって下さった。まさにこの感じ。
A 囚はれの鷹は尾羽根をしごきをり (呈念)
<評>こちらも自分の心境をいって下さった。いつか見てろとぎらぎらした句。私もあと1
年半現在の職場にいるわけですが、尾羽根をしごきつつ頑張りたい。
・七五三父なすことのなきならひ (なには橋)
・燗酒に若気の至り封じ込め (たそがれ)
・熱燗の猪口大きめや寄席のあと (なには橋)
・熱燗や耳たぶさはるくせがつき (呈念)

青軸選
@ 七五三父なすことのなきならひ (なには橋)
<評>父親というものはこんなだよなあと。まさにこの感じです。
A 囚はれの鷹は尾羽根をしごきをり (呈念)
<評>鷹という鳥の生態をよく現している。
・足指に草履食ひ込む七五三 (鉄井)
・燗酒に酔ひてくすぶるポロネーズ (鉄井)
・鷹柱世の中デフレスパイラル (呈念)
・鷹の爪赤さも辛し麻婆豆腐 (鉄井)

提出句一覧

呈念
・ 熱燗や耳たぶさはるくせがつき
・ 鷹の目のはるかかなたをとらへをり
・ 鷹柱世の中デフレスパイラル
・ 囚はれの鷹は尾羽根をしごきをり
・ 鷹渡るとふ大空を見上げをり
・ 上げ取れて松の廊下や七五三
・ 千歳飴引きずつてゐる七五三

なには橋
・ 熱燗の猪口大きめや寄席のあと
・ 腕より鷹とび立てば海へゆく    <腕=かひな>
・ 将軍の鷹は那須野を舞へりけり
・ 七五三髪を小さく結ひにけり
・ 七五三父なすことのなきならひ
・ 七五三仕立て直しの母の衣

たそがれ
・ 燗酒に若気の至り封じ込め
・ 熱燗よ永き別離を埋めてくれ
・ ふるさとはお城自慢の鷹匠町    <鷹匠町=たかじょうちょう>
・ おまえさん夜鷹にゃ見えぬ粋づくり
・ めぐみさん北で忘れぬ七五三

鉄井
・ 燗酒に酔ひてくすぶるポロネーズ
・ 熱燗の湯気に酔ひけり鳥鍋や
・ 燗酒につい千鳥足ボレロかな
・ ブルースの絡みて苦し燗酒や   <苦し=にがし>
・ 熱燗のいつしかぬるむ午前二時
・ 鷹の爪赤さも辛し麻婆豆腐
・ 鷹が爪突き刺す如しホロヴィッツ
・ 七五三飴の甘さも懐しき
・ 七五三トルコマーチの歩みかな
・ 足指に草履食ひ込む七五三

青軸
・ 燗酒のうらめしき朝恋しき夜
・ 熱き燗心冷たき乙女なり
・ 燗酒を勧めて楽しき夕なり
・ 鷹柱伊良湖にかける命かな
・ 鷹一羽身じろぎもせず澪標
・ しあはせの形に写る七五三

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