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二〇〇五年三月二十七日(日曜日) 浜離宮庭園から浅草釜飯「むつみ」
三月の定例句会は「花見句会」として上記コースで初めて吟行で催しました。
兼題は呈念先生からの「燕」の一つだけで、属目吟としました。
参加者は内藤呈念先生、荒谷たそがれ改め黄昏さん、吉田鉄井さん、青軸の四人。米原幌櫃さんから「燕」の題に四句投句がありました。
選句・講評は「むつみ」で行いました。五句提出。鉄井さんは六句提出されました。記録は黄昏さんが担当し、青軸がまとめました。
東京の桜の開花は前年より二週間も遅く、いわゆる花見とはほど遠いものでしたが、浜離宮では菜の花の絨毯、落ち頃の椿、前回の兼題「オオイヌノフグリ」も見られ、浅草では木蓮も満開などなど、それなりに「花見」を満喫できた一日でした。
呈念選
@春の川芭蕉に海舟江戸の旅 (黄昏)
〈評〉芭蕉庵に海舟銅像。どちらも江戸時代に活躍したゆかりの人物。そうした人物の足跡にちょっとだが触れた、今日の旅を「江戸の旅」とくくって端的に描いた。「春の川」という季題が今日の穏やかな晴天と舟旅をよくとらえている。
A菜の花の花粉も黄色く落ちにけり (青軸)
〈評〉咲き競う花にばかり目がゆくところ、足元の花粉に気づいた。それもやはり黄色いのである。写生の力に感心した。
・ゆうまぐれ空切り刻むつばめかな (幌櫃)
・背中しか見せぬ木蓮午後六時 (鉄井)
・春寒や海はかすみてゐたりけり (青軸)
黄昏選
@つややかな人のしとねに燕の羽 (幌櫃)
〈評〉燕の漆黒を「つややかな」と表現した。質感を巧みにとらえている。
Aゆうまぐれ空切り刻むつばめかな (幌櫃)
〈評〉「ゆうまぐれ」とはまた古風なことば。わが俳号の黄昏と同意であるので選んだ(笑い)。夕暮れ時のまったりした感じと、サッと飛び去るスピード感の対比が面白いと思った。
・降るほどのおしべの視線つばき咲く (鉄井)
・鳩ゆびの釣糸ほどけ春日かな (呈念)
・土の巣に子の五羽もゐてつばくらめ (青軸))
鉄井選
@落椿笑顔の首も二つ三つ (青軸)
〈評〉咲き誇っていたピンクの花が、首を切られたごとくに地面に落ちている。春の華やかな季節とは対照的な、不気味な残酷さをとらえていて、すごい。凄絶な美の定着に感心した。
A撥いくつ三味線草の咲き上がる (呈念) 「撥=ばち」
〈評〉この草はナズナ。実の形が三味線の形に似ていることから三味線草の名が付いた。ぺんぺん草とも呼ばれるこの小さな花について、少年の素直な視点をよくとらえている。
・鳩ゆびの釣糸ほどけ春日かな (呈念)
・橋の裏いくつも見上げ花の旅 (呈念)
・春の蝦蟇ひかれてかはきてゐたりけり(青軸)
青軸選
@芽柳や春色カーテン揺れてをり (黄昏)
〈評〉「春色カーテン」の発見に尽きる。吟行で生まれるべくして生まれた作品か。
A橋の裏いくつも見上げ花の旅 (呈念)
〈評〉「花の旅」も発見。今日の小さな旅の気分をよく表している。
・鳩ゆびの釣糸ほどけ春日かな (呈念)
・背中しか見せぬ木蓮午後六時 (鉄井)
・あやめからあやめに遊ぶつばくらめ (幌櫃)
提出句一覧
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呈念 ・燕来る今年も銀座七丁目 ・撥いくつ三味線草の咲き上がる 「撥=ばち」 ・つぶらとは小首傾げる鶲の目 「鶲=ひたき」 ・鳩ゆびの釣糸ほどけ春日かな ・橋の裏いくつも見上げ花の旅 |
黄昏 ・いい娘よつばめのいる家なごやかで 「娘=ひと」「家=うち」 ・三十路とて職場の燕を漁りかけ 「漁り=あさり」 ・特急つばめ青い車体は都会の色 「都会=まち」 ・芽柳や春色カーテン揺れてをり ・春の川芭蕉に海舟江戸の旅 |
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鉄井 ・真二つに青切り裂かん飛行機雲 ・電通ビルひたすら空を埋めんとす ・降るほどのおしべの視線つばき咲く ・キリストの磔に似てかもめ飛ぶ 「磔=はりつけ」 ・背中しか見せぬ木蓮午後六時 ・スプレーの壁画を生かす青テント |
青軸 ・土の巣に子の五羽もゐてつばくらめ ・春の蝦蟇ひかれてかはきてゐたりけり ・菜の花の花粉も黄色く落ちにけり ・落椿笑顔の首も二つ三つ ・春寒や海はかすみてゐたりけり |
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幌櫃(投句参加) ・あやめからあやめに遊ぶつばくらめ ・つややかな人のしとねに燕の羽 ・ゆうまぐれ空切り刻むつばめかな ・上見れば下、上、下のつばくらめ |
【呈念先生の講評】
・鉄井さんの「飛行機雲」で天を圧する電通ビルをとらえたのは新鮮。
・助詞「を」を入れると散文的になって、まずい。助詞はなるべく避けるのが得策。
・「特急つばめ」のように季題を使うのは邪道。
(青軸追記)鉄井さんの「飛行機雲」の句や「電通ビル」など、季語がないものがいくつかあり気にかかった。無季の句がいけないわけではないが、落ち着かない。とりあえず有季定型の枠の中で考えた方が上達すると思う、というようなことも言われていました。
・「ゆうまぐれ」は、旧かなで「ゆふまぐれ」とした方がよし。下の句が「つばめかな」 となっている点からも旧かなの方が照応している。
・「花の旅」のように「花のナニナニ」とするのは、俳句の技法のコツ。「花の道」「花 の宿など何でも座りがよくなる。
・落椿を首と見るのはステロタイプでいかにも感が強い。