ちょっと怖い話



雪山で遭難 - 06/08/01

 

「雪山登山で、夫婦二名が下山途中で遭難している模様です」

『真実を伝えることが責務である』そんな信条を持つ新聞社に勤める男に、そんなニュース速報が入ったのは、昼前のことだった。

 

「たしか親爺とお袋と弟が雪山に行くって言ってたけど..まさか三人では..」

 

小さな胸騒ぎを覚えた男は、ニュースの内容を確かめるべく担当の記者に電話をいれた。

男「さっきの速報の件だけど、もっと詳しく教えてよ」

記者「あ〜。実はねぇ..一緒に登った息子さん一人が下山してきて地元の警察に駆け込んだらしいよ」

男「息子って..名前は?..それもしかして俺の両親かも知れない」

男の胸騒ぎが、現実のものとなって迫ってきた。

記者「じゃあこの件は任せるよ。今から電話番号言うから、直接現地に電話してよ」

 

記者が伝える番号を乱暴にメモし、デスクの電話をとった。

電話の向こうは、地元警察のようで、騒然とした雰囲気が受話器越しに伝わってくる。

男「もしもし、一人で下山した男の人をお願いできませんか?..俺..俺はその男の兄です」

やがて電話に出てきたのは、聞きなれた男の弟の声だった。

 

弟「やぁ兄さん、どうしたの?」

男「どうしたのって?..親爺とお袋が遭難してるって、お前が警察に駆け込んだろ」

弟「あ〜そのことか..困るんだよなぁ..ここの人達つてそそかしくていけないや」

男「じゃあ、遭難って...してないのか?」

弟「そ〜なんです。....なんちゃって」

男「冗談はいらんぞ..どういうことだ?」

弟「だって..親爺とお袋が下山の途中で、兄貴に嫁が来ないって..ケンカしだしてさぁ」

男「うっ..そんな関係ないことでケンカを...そ、それで?」

弟「兄貴のどこに原因があるかって..相談し始めたから、アホらしくなって先に山から下りてきちゃった」

男「そりゃあ、もっともだなぁ..あの二人いつもヘンなところで気が合うからなぁ」

弟「山から降りたら、登る時に挨拶した、おまわりさんに見つかっちゃって..『残りの二人は途中で相談してます』って言ったらこんな騒ぎになっちゃった」

 

男「わかった..でも俺は..この話しだけは真実を読者に伝えないぞ」



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