ちょっと怖い話
御輿(みこし)の下敷き - 06/08/05
勇壮な御輿が、町中を練り歩く様子が、TVニュースの画面に映っている。
昨夜の様子だ..
でも、このあとに数名の若者が御輿の下敷きになり、重傷を負ったことが悔やまれる。
町の老人の元に、この事故原因を探る為に新聞記者が訪れた。
記者「こんな危ない祭は、中止すべきだったのではないですか?」
老人「何を言うかっ!よそ者に、そんなことを言われる筋合いはないっ!」
記者「でも、昨日も事故が・・」
老人「この町の若者は...御輿を担いで初めて大人になれるのじゃ」
記者「お爺ちゃんも、そうして育ってこられたのですか?」
老人「あたり前じゃ..いつも怖い思いをしながら、御輿を担いだものじゃよ」
老人の目が、ふと遠くを見詰めていることに記者は気付いた。
記者「怖い思いって..やっぱり、昨日のような事故の経験もあったのですか?」
老人「ワシの御輿の下敷きの話を聞きたいのか?」
記者「そんな体験をお持ちでしたら、是非お聞かせ下さい」
老人「あれは..ワシが初めてこの町に来て、小学校に上がったばかりの年じゃった」
記者は、老人の口から語られる事故の体験を、聞き漏らすまいとメモを取り出した。
老人「御輿と言っても、ワシの小さな身体から見上げれば、大きな化け物くらいの大きさに感じられたのじゃ」
記者「その年齢だと、そうでしょうね。..御輿というものは、それまでは知らなかったのですね」
老人「ワシが産まれた町には、そんな風習がなかったものでな」
記者「なるほど。さぞビックリされたでしょうね」
老人「ビックリなんてものじゃなかった。..御輿がグングン迫って来た時には、ちびってしもうたわ」
記者「そして、昨日のような下敷き事故に遭われたんですね」
老人「馬鹿者めっ!誰が事故に遭った話をしとるんじゃ?」
記者「あれっ?御輿の下敷き体験の、お話をされていたのでは?」
老人「勝手に決めてるのは、お前だけじゃ。ワシは『御輿を知った時期」の話をしておるのじゃ」
そして、老人の話は、延々と明け方まで続くのであった。