ちょっと怖い話
番町皿屋敷 - 06/08/14
ひなびた寒村の村外れに、その古い屋敷はあった。
村の言い伝えでは「この世に恨みを残して死んだお菊という娘が、夜な夜な皿を数えたという屋敷」。
村で生まれた若者は、成人式を迎えるまでに、新月の夜に一度は、肝試しをするのが慣わしなのだ。
そうすることで、この屋敷の秘密を知った若者は、屋敷の存在を認めるという..。
この村に夏休みのある日、都会からやってきた4人の若者のグループがやってきた。
この話は、彼らが偶然知ることになった、この屋敷の驚くべき秘密を記録したものである。
見るからに悪ガキそうなリーダー格の男Aが、村のバス亭に着くなり叫んだ。
「おいっ!今夜はでっかく花火で盛り上がろうぜっ!」見かけは悪いが、さすがまだ若者である。
「でも、山に向かって花火打ち上げたら、山火事にならないのか?」と、まだあどけなさの残る男Bが言った。
「そんなことになったら、叔父ちゃんに怒られるよぅ」と、半べそになる男C。
傍で聞いていた女Dが言った「ここは、C君の叔父さんの田舎だもんなぁ」
男A「大丈夫だよ。持ってきた花火に打ち上げ花火は無いよ。線香花火だけだもん」
男B「そんな花火で、でっかく盛り上がるんかいっ!」と鋭いつっこみ一発。
女D「そんな花火より今夜は肝試しをしようよ。村外れにお屋敷があるんでしょ、C君」
男C「だめだよ。あそこは怖いところだから、絶対に近寄ったらダメ!っていわれてるんだよ」
女D「じゃあ、C君以外のみんなで行きましょうよ」
男A「そうだな〜、みんなで行けば怖くないかもな。C君は一人で残ってて、何かあったら警察に駆け込んでよ」
男C「そんなの余計に怖いじゃないかっ!..みんなが行くなら僕も行くよ」
こうして、夜の「肝試しが」決まってしまった。
早速一行は、村に一軒しかない食堂に入りこの屋敷の情報を集めることにした。
食堂を営む老夫婦が、久し振りのお客を笑顔で迎えた。
男A「お婆ちゃん、村外れのお屋敷のこと教えてよ」
その言葉を聞くと、お婆ちゃんの笑顔がみるみる曇り、イヤイヤをするように首を振りながら店の奥に姿を消した。
「あんたたちは、あの屋敷で・・よもや肝試しをするつもりじゃないだろうな」と、爺ちゃんが怒気を込めて若者達に言った。
男A「そんなつもりは無いですよ。でも、ちょっと興味を持っただけですから」
お爺ちゃんは、ホッとした様子になって
「そうかぁ、そんならええけども..命が惜しかったらあの屋敷には近づかないほうがええぞ」
若者達は、思わず顔を見合わせた。
男A「そんなに危険なんですか?」
「そうじゃ..昔に比べて今はとても危険じゃからな..」
それ以上のことは、お爺ちゃんの口から聞くことはできなかった。
やがて、暗闇の夜が来た。冷静な男Bが、こんな提案をした。
男B「怖がってても始らないから、僕たちは都会ではケンカに強いグループみたいに振舞おう」
男C「それはいい考えだ。さしあたって番長はA君に決まりだね」
女D「そうすると、あたしは姉御と呼んでおくれ」
男A「番長か..なんか強くなった気がするぞ..みんな、あの屋敷に乗り込むぞー」
一同「エイエイ・オーーー!」
一同は、やがて屋敷の前に着いたものの、そのまがまがしい姿に悪寒を感じずにはいられなかった。
男B「番長は、先頭に立って下さい。みんなはその後に続きますから」
男A「う、うん。。。ちゃんと付いてきてよ。心細くなるから・・」
男C「怖いよ〜。帰りたいよ〜」
女D「なんて情けない男達なの、早く行きなさいよ。姉御は後ろを守るわ」
屋敷の中に、おずおずと入ると、中で何やらカチャカチャという物音がする。
男A「何か居るぞ..あの音は..お皿の音だ..」
一同「ひぇぇぇ..」
腰がひけながらも、さらに一同が奥に進む。
暗闇で慣れた目で何かを見つけた男Aが叫んだ
「あっ!出たっ〜猿が皿を舐めてる〜」
二番目を歩いていた男Bが、恐怖を吹き飛ばそうと、大声で尋ねた。
男B「ここは・・・番長・・猿屋敷ですかぁ?」
後日、この村ではこの屋敷を、山に住む猿達の餌場に屋敷を使っているとパンフレットに書いてあった..らしい。