ちょっと怖い話
異星物 の襲来!? - 06/09/06
蒸暑い夏の夜..男は自宅の寝室で眠っていた。
深夜の暗い窓ガラスに突然に照明が当たって、一瞬昼間のような明るさになった。
眠っていた男は、本能的に異様な感じがして飛び起きた。
状況がよくわからないままに、音も無く光は消え、窓は何事も無く漆黒の闇に変わった。
「いったいなんだい、今の光は?」
隣に寝ている妻に問い掛けたが..
「そうだった..あいつは、友達と旅行に行ったんだった。すると、目撃者はこの家で俺だけか」
そう、男の妻が朝の出掛けに言った言葉が蘇ってきた。
「あなたが帰るころには、私は温泉に浸かってるからね。何かあったら、電話してね」
妻とは、そんなやりとりがあった。
「今の光は、何かあったことになるのかな?でも、原因がわからないのに電話できないし..」
男は考えた末に、やはり妻には知らせずに、寝ることにした。
気分が高揚しているのか、目を閉じてもなかなか眠りにつけそうもなかった。
「仕方無い..トイレにでも行くとするか..」
暗闇の中を電灯のスイッチを手探りで探しあて、スイッチを入れたが...
なぜか電灯は、点灯しなかった。
「んっ?..さっきの光のせいで、電気がおかしくなったのか。これって、映画の『未知との遭遇』みたいじゃないか?」
若い頃SF映画の好きだった男は、唯一思い出せる映画の一場面と、自分の状況を重ね合わせていた。
「もし、そうだとしたら..さっきの光は宇宙船が出したものだったのかも知れないぞ」
そんなことを一人でつぶやきながら、トイレに向かおうとすり足で寝室から廊下に出た。
すると、真っ暗闇の廊下の先から..
「カサッ..カサッ..」と、音が聞こえることに気づいた。
男は足を止めて、様子をうかがうように暗闇を凝視した。
どうやら、音は廊下をこちらに向かって、来るようだ。
「カサッ..カサッ..カサッ..カサッ」
こちらに向かって進んでくる音の数が、さきほどより明らかに増えてきた..
「おぃおぃ..冗談じゃないよ。こんなときに異生物かよ」
恐怖心を膨らませながら、男は一瞬、家の間取りを考えていた。
廊下の途中にはトイレがあり、その先には炊事場があるはず。
しかし、今夜はとても蒸暑いから炊事場の窓を開けていた。
「しまった、やつらは炊事場の窓から入ってきたんだ..」
慌てた男は寝室に逃げ込み、やつらが入ってこれないようにドアを閉めた。
やがて、あの足音はドアの外までやってきていた。
男は、こらえきれなくなって、妻に電話をかけた。
「はぁ〜い」妻の眠そうな声が受話器から聞こえてくる。
「大変だ〜。警察に電話してくれ〜」
「こんな夜中に何言ってんの?怖い夢でも見たの?」
男の気持ちも知らず、妻は不機嫌そうに言った。
「さっき光が当たって停電してる。今、異星物が家に侵入して俺を捜してるんだ。このままじゃ、宇宙船で連れてかれるよ〜」
「どうして異星物ってわかったの?」
「姿は見てない。炊事場の方から、やってきたんだ。カサカサカサって団体で..」
「炊事場?それってもしかしたら...」
「何だ?何か知っているのか?」
「たぶん..あなた、あたしの言うことをよく聞いてね。言い忘れてたことがあるの..」
「聞いてるさ。何だその言い忘れた事ってのは?..俺が宇宙船に乗せられる前に言ってくれ〜」
「昨日のことだけどさぁ..あたしの叔父さんから宅急便が届いたの..言ってなかったわよね」
「そんな話しは初めて聞くぞ..あっ、やつら..ドアをカリカリ齧りだしたぞ〜」
「それが、そのカサコソ・カリカリなの〜」
「なんとっ!..異星物が送られてきたのか..さては、お前の叔父さんは宇宙人だったのか?」
「そんな訳ないでしょ。叔父さんは三重県の伊勢で漁師してるんだから。それは大きい伊勢海老なのよ〜」
「なぜそんなものが..」
「生きた伊勢海老なのよ。あなたは調理できないし量も多いから、あたしが来週旅行から帰ったら食べようと思ったの。」
「そんなこと言って安心させようとする気持ちは解るけど..ドアを開けたら最後、俺は連れてかれるかも知れんぞ」
「なんて妻の言うことを信用しない人なのっ!..それと、もう一つ言い忘れたことがあったわ」
「それは、なんだぁ?..」
「深夜から電柱を立て替えるから、その辺一体は停電するって広報車が回ってたの」
「広報車..停電..伊勢海老カリカリ...すると、あの光は何だ?」
「知らないわよ..電柱工事のための照明だったんじゃないの?」
その瞬間、工事が終わったのか、電灯がついた。
男が恐る恐るドアを開けて廊下を見ると、見事なヒゲをピクピクさせた大きな伊勢海老が遊んでいた。
男が恐れていた異星物は..来週食べる予定の..伊勢の名物だったのだ。