ちょっと怖い話
病んだ都会!? - 07/08/27
今年のお盆のこと。
女は、やっと故郷の実家に辿り着いた。
何年ぶりの故郷だろう...
若い頃、この何も遊ぶところも何もない、へんぴな山奥の村に生まれたことを嘆いていた。
「絶対に都会に出てやる。あたしは、都会が似合う女になるわ」
そう心に決めていた女は、両親の止めるのも聞かず、東京の高校に進学した。
「あれから、もう何年も歳月が過ぎたのね」
女の頭の中に、これまでの出来事が浮かんできた。
高校は大学の附属だったために、大して努力もせずに大学生活を送った。
「都会に憧れていた女」は、毎日が楽園かのように遊び歩いたのは当然のことだった。
やがて、都内の一等地にある外資系企業の外人社長の秘書として就職した。
しかし、この社長..子供の頃から、とても「古い時代の日本」に憧れていたらしい..
生活パターンが180度、しかも社長の趣味で服装や髪型メイクさえも変えなければならなかった。
学生時代は、昼前に起きてコンビニで食べるものを買い、それを持って友達の家に遊びに行くのが毎日のパターンだった。
就職と同時に、茶髪は黒髪に、派手な服は着物姿に..メイクは白塗りしか許されず、まるで芸者であった。
前任の社長秘書は、そんな屈辱感に耐えられず2日で辞めていったという。
「あたしも辞めようかな..」雑草の茂った庭を見ながら、女はポツリとつぶやいた。
土間で食事の支度をしていた母が、女の横にきて言った。
「憧れていた都会の生活は、どうだい?」
優しい母の言葉に、女の目に涙が溢れてきた。
「う、ぅぅ..かぁちゃん..都会なんて、おかしいとよ〜」
あんなに、都会に出たがっていた娘。きっと、都会の楽しい話しをしてくれると思っていた母は驚いた。
「何があったか、かぁちゃんに話してくれんのぅ」
「都会を知らない母に、話しても理解できないだろう」と思いながらも、女は話しを始めた。
その途端...
「ガラガラガラ...ピカッ...ドドーン」と、激しい雷と共に土砂降りの雨が落ちてきた。
「通り雨や..最近は異常気象なのか、一日一回はこんな調子なんよ」
「そうなんだぁ、うちがおった頃はこんな激しい雨はなかったとよ」
「それよか、話しの続きを聞かせんねぇ」
母に急かされるように、娘は再び語り始めた。
外の雷雨は、すでに落ち着き始めていた。
「と、いうわけなんよぅ..かぁちゃん・・・都会ってなんだろうねぇ」
話しを終えて、女の感情も少し落ち着き、母に尋ねていた。
問い掛けられた母は、娘にアドバイスが浮かんでこなくて困っていた。
ふと、窓を見ると..
さっきまで、窓を叩いていた雨は上がって、太陽の日差しが差し込んでいる。
「やんだとかい」母は、ポツリと窓に向かってつぶやいた。
「そうよねぇ〜。都会のあの異常さは、どこか病んでいるんだわ」
「へぇ?..都会では、悪い病気が流行っているのかい?」
娘には、母の言葉が「病んだ都会」と聞こえたのだった。