テーマ「楓さんの女優?:涙そうそう

 

最近、とても映画出演が面白くなってきた楓さん。

楓さん「今は、どんな映画が上映されているのかしら?」

ボ〜と新聞を眺めているところに、ヒロツがやってきました。

 

ヒロツ「楓さん、早く仕度をするとです。今日は映画のオーディションに行くとですよ」

楓さん「あらまっ..でも、今まで撮った映画って、一度も上映されてないのよ」

ヒロツ「そんなものは気にしないで、たくさん出演してたらそのうち当たりますよ」

楓さん「そんなものかしら??」

ヒロツ「そんなことより、今回の映画は、観客を感動の渦に巻き込んでるらしいですからね」

楓さん「それって..もう上映されてるってことね。また、パロディかしら?」

ヒロツ「さぁ?...取りあえず話しを聞きに行くとですよ」

楓さん「は〜い...」

 

ヒロツと楓さんがやって来たのは..古ぼけてあちこちに雨のシミがある建物の前です。

 

楓さん「あら〜..この建物って、何かトホホな感じだわ〜」

ヒロツ「よくわかったとです。ここは、途方もない映画を作ることで有名なトホホ映画の建物ですから」

楓さん「東宝映画じゃなかったのね..でも、あのシミは気になるわ〜」

ヒロツ「女の人は、シミが気になるものですよ」

 

そんな立ち話をしていると、建物から出てくるのは女性ばかり。

しかもなぜか、泣きながら出てくるではありませんか。

 

ヒロツ「みんなオーディションを受けて、落とされた人達でしょうか?」

楓さん「もしかしたら、面接官が虐めているのかも..それだったら許せないわっ!」

ヒロツ「今日は、お願いだから暴れないでくださいよ〜」

 

二人は受け付けを済ませ、応接室に通されましたが...

応接室は建物の外観同様に、シミだらけ..床とソファはグッショリと濡れています。

 

つづく

 

面接官「ようこそ『涙そうそう2』のオーディションへ」

楓さん「えっ..今泣ける映画で大好評の『涙そうそう』の続編だったのね」

ヒロツ「楓さん、これは期待できるとですよ〜」

面接官「お蔭様で映画館の観客席は涙の洪水で、溺れかける人も居るくらいですからね」

ヒロツ「それで、安易に続編を作ることになったんですね」

面接官「そうなんですよ。続編では観客の涙が枯れるほど、搾り取れと社長が言ってるものでね」

楓さん「それで..続編はどんなお話なのかしら?」

面接官「全編、主人公が泣きじゃくるシーンなので、嫌でも観客がもらい泣きするという設定です」

ヒロツ「やっぱり、発想が安易なような気がするけど..」

面接官「オーディションですから、楓さんにはここで泣いてもらいます。泣きっぷりがよかったら採用です」

楓さん「ん〜難しいかも〜。あたしは泣いたことが無いもの〜。どうしたら泣けますの?」

ヒロツ「そんな時は、頭の中で想像するとです」

楓さん「なるほど〜。『涙そうぞう』するのね。ちょっとやってみるわ」

 

ヒロツの助言で、目をつぶり何かをイメージする楓さん。やがて..ポタッと..

 

面接官「ありゃ?..それって、よだれじゃないですか?」

ヒロツ「楓さん、一体何を想像したとです?」

楓さん「今夜は久しぶりに焼肉にしようかと考えたら、よだれが出ちゃったわ」

ヒロツ「こんなときは、悲しい事を想像しないといけないとですよ」

楓さん「しまったぁ〜..じゃぁもう一回..」

 

また目をつぶり、何かを想像する楓さん。

やがてその目からは、大粒の涙がボロボロとこぼれてきました。

 

面接官「おおっ、さすがに女優さん..見てるこちらもなぜか悲しくなって涙が出てきた」

ヒロツ「(小声で)楓さん。今度はどんな悲しいことを想像したとですか?」

楓さん「あたしの家の裏に住む、大好きなお爺ちゃんのことを..」

ヒロツ「大好きなお爺ちゃんが、亡くなったときのことを思い出したんだ〜」

楓さん「いえいえ..そのお爺ちゃんが飼ってるウグイスを貰えることになってたんだけど..」

ヒロツ「ほう..そのウグイスが逃げてしまった..とか??」

楓さん「お爺ちゃんたら、ウグイスを連れて夜逃げしちゃったの〜。ウグイス鍋が食べたかったのにぃ」

ヒロツ「はうぅ..その涙は獲物を逃がした、悔し涙だったとですかぁ」

楓さん「うん。..もう悔しくって悔しくって..ウワァ〜ン」

ヒロツ「面接官には、理由を言えない涙とです..」

 

訳もわからずに、もらい泣きだけをしていた面接官は、チラリと時計を見て..

 

面接官「さて、今日のオーディションは楓さんでおしまいです。結果は、後日郵送しますからね」

ヒロツ「これで帰ってもいいとですか?」

面接官「最後の人は、この部屋の掃除をしておいてください。ほっとくとカビが生えちゃいますからね」

楓さん「あら、運が悪いわ〜。これって..あたしが『なぜ・せいそう』?」

ヒロツ「きれいに清掃したら、面接官さんに好印象を持ってもらえるとですよ」

楓さん「それもそうね..ヒロツさん、あたしと一緒に清掃手伝ってくれたらステーキをご馳走するわよ」

 

思いもかけなかった楓さんの言葉に、ヒロツの目から、大粒の嬉し涙がこぼれました。

 

ちゃんちゃん♪

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