テーマ「雀帝さんの秘境温泉巡り(1)

 

ある日のこと、雀帝さんの館に、首にベルをぶら下げた虎がやってきました。

 

トラ  「おこんにちわー、雀帝さん」

雀帝さん「これは珍しい..いつも雀しか出入りしない館に、虎がやってきたぞ」

トラ  「雀帝さんは大のトラファンだから、甲子園からきましたでぇー」

雀帝さん「それはありがたいけど..一体何の用ですか?」

トラ  「おっと..もうお忘れですか?ネコまんまのキリ番プレゼントを持って来たにゃん」

雀帝さん「ありゃっ..トラがネコ言葉になっちゃった..でも、あんた誰?」

トラ  「これは失礼しまふた..オイラはこういうものです..」

 

名刺『トラベル企画 代表トラ締役 フーセンの寅』

 

雀帝さん「なるほど。それで首にベルを付けていたのか。でも、フーセンの寅って何?」

トラ  「ジェット風船みたいに、全国各地の秘境の温泉を旅してるものですから..」

雀帝さん「そんな姿で..?。よく今まで捕獲されなかったね」

トラ  「いえいえ、酔っ払ったらすぐにトラ箱に入れられてますから〜」

雀帝さん「それだったら、トラ箱から出してあげる人の気がわからんわ」

トラ  「そんなことより、温泉旅行をどこにするか選んでくださいにゃ」

雀帝さん「ん〜。寅さんのお薦めはどこなの?」

 

フーセンの寅は、カバンの中からゴソゴソと手作りのパンフレットを取り出して..

 

トラ  「静岡県の小田原市に『昔、金太郎が湯治をした』という、足柄温泉がありますけど..」

雀帝さん「そんな温泉初耳だなぁ..第一、子供のくせに湯治なんて生意気過ぎやしないかい?」

トラ  「まあまあ、そんなに怒らないで..ここの温泉のキャッチ川柳がありますよ」

雀帝さん「ほう、どんなのかな?」

トラ  「誰でもが 足から入る 足柄温泉...ウマイッ」

雀帝さん「そんなの当たり前じゃ〜..そんなだじゃれより効能を書かんかいっ!」

トラ  「効能はね..クマと相撲をとっても負けない、強い体になれるそうですよ」

雀帝さん「いまどき、そんな人おらんぞ..他にお薦めの温泉は?」

 

トラ  「九州の別府温泉なんて、いかがですか?」

雀帝さん「おっ、それって有名過ぎて、秘境の温泉じゃないでしょ?」

トラ  「以前は有名だったけど、なぜか温泉のお湯の温度が下がったもので..今は秘境の温泉ですよ」

雀帝さん「お客が減ったということ?」

トラ  「そうじゃなくて、下がったお湯の温度が気持ち良かったのか、蚊が大発生しましてねぇ」

雀帝さん「そりゃ、迷惑な話だねぇ..それでそれで?」

トラ  「温泉に入りに来たお客みんなに、旅館が電気蚊取り器を持たせるくらいですから」

雀帝さん「電気蚊取器って..なるほど、別府温泉は、今ではベープ温泉になっていたのか」

トラ  「痒み好きな人には堪らないと、評判ですけど..ここにしましょうか?」

雀帝さん「いやいや、そんな趣味ないし..他にないの?」

 

トラ  「んじゃ、これが最後のお薦めですよ..温泉と名物料理とがセットになってる所がありますけど?」

雀帝さん「それだ〜。最後に持ってくるとこなんざぁ、にくいねぇ〜。どこどこ?」

トラ  「えへへ..九州の指宿温泉ですけど..あれっ..おかしいなぁ?」

雀帝さん「どうしたの?」

トラ  「最近、新しい温泉を開発したらしいんですけど..その資料が無いんですよ」

雀帝さん「いいよいいよ..そこに決めるから、ボクが資料を持って返ってくるよ」

トラ  「ほんとにいいんですか?」

雀帝さん「うんうん。指宿温泉って有名なのは「砂の蒸し風呂」だったよなぁ..楽しみじゃ〜」

トラ  「そうですかぁ〜..じゃ、これがチケットですから..いってらっしゃ〜い」

 

早速、雀帝さんは手ぬぐいと風呂おけを片手に、九州の指宿温泉へと飛びました。

ふうせんの寅から貰ったチケットを見ると..

チケット『イブスキ温泉 燻製屋旅館 宿泊券』と書いてあります。

空港に出迎えに来ているのは..なぜかハムの形をしたトラックではありませんか^^;

荷台には仕入れしてきたのか、豚や鶏が走りまわっています。

ちょっと不安になった雀帝さん..トラックの運転手に聞いてみました。

 

雀帝さん「このトラックは「燻製屋旅館」さんの出迎えの車?」

運転手 「あれっ、お客さんはスズメって聞いてたのに..人間でしたか?」

雀帝さん「スズメって...名前に一文字入ってるだけなのに..あのトラめっ」

運転手 「まぁいいや..とにかく荷台に乗っておくれ。すぐ出発しますよ」

雀帝さん「はーぃ」

 

やがて、到着した燻製屋旅館で..

仲居さん「お客さま..用意が出来ましたのでお風呂にお入り下さい。新開発の温泉入浴客第一号ですから」

雀帝さん「それはありがたい..やっぱり入浴後は名物料理が出るんですか?」

仲居さん「そりゃぁもう、たっぷりと召し上がっていただけますとも..」

 

仲居さんに案内された浴室は、とてもいい香りが充満しています。

すでに先客が埋まっているのか、二つの小山から湯気が立っていました。

 

雀帝さん「ほう、砂かと思ったら木のチップで蒸すのかぁ..これが新開発なんだな」

仲居さん「このお二人の間に、埋まってくださいな。熱が均等になりますからね」

雀帝さん「ありがとう..こりゃ気持ちいいな。眠ってしまいそうだ」

仲居さん「ご自由にどうぞ...オホホホ」

 

ウトウトし始めた雀帝さん..

でも隣の先客が何故か気になり始めたので、さりげなく声をかけてみました。

 

雀帝さん「おたくはどこから来られたのかな?」

返答がありません..不思議に思ってよ〜く見ると..なんと右には豚、左には鶏が埋まっているではありませんか。

そのうち木のチップが熱くなり、雀帝さんの体からも煙が出てきました。

雀帝さん「おいおい..ここの温泉って...いぶす気かぁ〜〜!?」

 

ちゃんちゃん♪

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