テーマ「chievoさんの研修:眼力(メジカラ)調査

 

4月から社内研修に明け暮れているキエボさん。

ある日のこと..キエボさんの机の上の電話が鳴りました。

 

電話を取ると「もしもし、ワシだが...」と、聞き覚えのある社長の声です。

「あっ、ワシさんですか。ボクはゾウさんの方がもっと好きですけど..」

「こらこら..わが社は引越し屋さんじゃないんだから。トボケたこと言ってないで、ちょっと来なさいっ!」

 

社長からのお呼びとわかったキエボさん。

「これは、きっと綺麗なお姉ちゃんの居るクラブに連れて行ってくれるんだ」..お得意の早合点です。

 

社長室のドアを開けると..何か思い詰めたような社長が手招きをしています。

 

「社長、ボクだったらお店でナンバー3の女の子でいいですから〜」

「一体、何の話じゃ?」

「だって、正社員になったら、社長の行き付けのクラブに連れて行ってくれるって約束でしょ?」

「なんて気が早いんだ。正社員になるのは7月からでしょ。まだ10日早いわっ!」

「そこをなんとか..早めていただけませんか?」

「ふむ..それなら、これから研修の最終課題を与えよう..それをクリアしたら考えてもいいぞ」

「やったぁ〜...これでボクも、両親に自慢ができます〜」

「クラブに行くのは、自慢しない方がいいと思うけど..」

「エヘヘ...それで最後の研修の課題って、何ですか?」

「実は....」

 

社長の話の要約

昨夜も行き付けのクラブに行ったが、お気に入りのホステスの言葉が、気になって仕方がない。

キエボくんの今回研修課題は、このホステスが言った言葉の意味を調査してくることだ。

期限は、今日一日。調査の為の交通費は会社持ちだから、都内ならどこでも歩き回って調査すること。

 

「なるほど〜。そのホステスは、社長のお気に入りの、ナンバー2のあの子ですね」

「そうなんじゃ..最近の若い子の言う言葉は、よくわからんからなぁ」

「で、何て言ったんですか?」

「『男の魅力は、なんたってメジカラよね〜』だとさ。キエボくんはメジカラを知ってるか?」

「はてっ?..よくわかんないけど..野鳥の唐揚げか何かでしょうか?」

「なるほど〜..メジロの唐揚げだったら、メジカラか..って、保護鳥やんっ!」

「今のは適当に言ってみました..でも、この件はボクがシッカリ調査してきます」

「おっ、頼もしくなったねぇ。調査に必要だったら総務課に寄ってSUICAカードを貰って行きなさい」

「はぁ〜い。いってきま〜す」

 

キエボさんは、総務課のお姉さんのところにやってきました。

「スイカとカートを下さいっ!」

「あら..これはお得意さんからお土産に貰ったスイカなの。3時にみんなで食べるのよ」

「でも、社長が『総務にあるスイカとカートを持って行きなさい』って言ったんだもん」

「社長も、よく見てるのねぇ〜。今度から隠す場所変えなくっちゃ。仕方ないわ。はいどうぞ」

「ありゃ..これはとびっきり重たいスイカですねぇ...ヨッコラショ..っと」

 

大きなスイカを荷物カートに乗せたキエボさん...ついでにこのお姉さんに聞いてみました。

「メジカラを捜しているんですけど、知りませんか?」

「それって..映画に出てきたゴジラのロボットのことじゃないかしら?」

「へぇ?あれってメカ・ゴジラじゃなかったっけ?」

「ロボットだから、関節なんてネジから出来てるでしょ」

「な〜るほど。社長がきっと『ネジから』と、メジカラを聞き間違えたのかな?」

首をかしげながら、キエボさん..やがてビルの1Fに来ると、受付けのお姉さんが

「暑いのに、ご苦労様です..」と声を掛けてくれました。

 

「そうだ、この人ならメジカラを知っているかも」そう考えたキエボさんは、お姉さんに聞いてみました。

「メジカラを捜しているんですけど..どこに行ったら良いんですか?」

「メジカラ?..何だか目に関係する言葉みたいだけど..そうだっ!」

「おおっ..解りましたか?」

「いえいえ解らないけど..社長の飼いネコの目がいつも夜になると光ってたわよ。一度聞いてみたらどうかしら?」

「なるほど〜。早くも手がかりみっけかも..」

 

早速、キエボさん、スイカが乗ったカートを引きずりながら社長宅へと向かいました。

「こんなに重いのに、なんでスイカを連れてるのかな〜」

 

やがて社長宅に到着したキエボさん。庭で昼寝をしているネコを見つけました。

「ねえねえ..何で君の目は夜になると光るのかなぁ?」

 

昼寝を邪魔されたネコは、面倒臭そうに応えます。

「そんなもん知らにゃいっ..ネコだけちゃうし..夜の動物園に行ったら、一杯光ってるよ〜」

「へぇ〜そうなんだぁ..例えばどんな動物なの?」

「どんなって..雌鹿たちかな〜」

「おおっ..それって『雌鹿ら』だね...これでわかったぞ..」

「わかったって..何がわかったんにゃ?」

「メジカラの意味だよ..」

「メジカラ?..それって、社長の奥さんがいつも言ってるよ」

「あらら..んじゃ、奥さんにも聞いてみなくっちゃ..」

 

キエボさん、今度は社長の奥さんに聞いてみました。

「奥さん、メジカラって何ですか?」

「それはね..お掃除の基本なのよ」

「へぇ?お掃除ですか?」

「あたしもTVを見て覚えたんだけど..ちょっと待ってね」

 

社長の奥さんは、割り箸に布を巻きつけて、その上から輪ゴムをグルグル巻きました。

へんてこりんな棒が出来上がりました。

 

「奥さん、これは『うまい棒』みたいですけど?」

「違うわよ。これは『まづい棒』って言ってねTVの女優さんが考えたのよ」

「へぇ〜」

 

「この棒で掃除を実際にやって見るといいわ。こっちへいらっしゃい」

「はぁ?」

 

キエボさんは、奥さんにおトイレに連れていかれました。

「さぁ、この棒でコチョコチョすると汚れが良くとれるのよ〜」

言われるままにキエボさんは、便器を棒でコチョコチョしました。

「違うわよ〜。その棒はタイルとタイルの間の白い所をコチョコチョするものなのよ」

「はぁ?..でも、これって..一体何やってるんですか?」

「この白い所は目地って言うの。だからお風呂の掃除の基本は..目地からよ〜♪」

「はぅ..メジカラって、色んな意味があるんだ〜」

「わかったら、おトイレの掃除をお願いね..」

「は、はいっ」

 

社長宅のトイレ掃除をみっちりやらされたキエボさんが、帰ろうとすると..ネコがやってきました。

「どうだった?メジカラは解ったのかにゃ?」

「うん。でも、みんなの言うことが全部違うから困っちゃうよ」

「だったら、直接そのお姉ちゃんに聞けばいいにゃん?」

「そっかぁ。その手があったね」

 

ネコの助言でキエボさんは、ホステスのおねえちゃんに電話をかけることにしました。

「もしもし、キエボですけど、メジカラって何ですか?」

「あらっ、社長さんのお気に入りの新入社員さんね。その質問は社長の命令でしょ?」

「そうなんですよ〜。これ調べたら飲みに連れてって貰えるんですよ」

「まぁ素直だわ。じゃあ教えてあげるわ。メジカラは眼力って書くのよ」

「ふむふむ..それが魅力あるんですか?」

「眼力が生きてる男性から見られると、どんな女性でも胸キュンでメロメロになっちゃうわよ」

「そんな男性って、お掃除好きで、目が光ってますか?」

「よくよからないけど..たぶんそうじゃないのかなぁ〜」

「なるほど〜これでわかったっ!ありがとうございました...ガチャン」

「あっ..切れちゃった..もっとこの人のことを聞いて欲しかったのに〜」

ホステスさんは、壁に貼ってある市川海老蔵のポスターをウットリ眺めました。

 

キエボさんは、スイカのカートを引きずりながら、社長室へ戻ってきました。

「社長〜。メジカラの意味がわかりましたぁ〜」

「おおっ!..でかしたぞキエボくん。早速、報告をしてくれたまえ」

「エッヘン!..それでは報告します。メジカラの魅力とは..」

「おお〜。なんかドキドキしてきたぞ」

「ズバリッ!『明治から生きてる人で、目を光らせながら、まずい棒という道具でトイレ掃除をする男』です」

「ん〜。それが魅力的な男性だと、彼女が言ったのか?」

「はい。間違いありません」

「明治生まれだともう100歳前後だ。彼女はそんなに年上が好きだったとは..ウウッ」

「調査が終わったから、今からボクをクラブに連れて行って下さい」

 

社長は、寂しそうに首を横に振りながら...

「彼女の気持ちがわかってしまったから、気持ちの整理をするまで、あの店には行かないよ。」

「ええっ?するとこれからどうするんですか?」

「明治生まれは無理でも、トイレ掃除くらいは出来るところを見せようかと思うんだよ」

「なるほど〜。リベンキですね」

「それを言うなら、リベンジじゃ」

「エヘッ..じゃあ社長さん、頑張ってください」

「コラコラ..今夜のキエボくんには、このビルのトイレ掃除を一緒にしてもらうことにしたよ」

「へぇ?..ボクもトイレ掃除ですか?」

「当たり前でしょ..まずは、まづい棒の作り方から教えてもらわなきゃね」

 

二人は、明け方までビルのトイレ掃除に励んだそうです。

やがて、疲れのあまり二人の眼は、落ち窪んできました。

 

「さすがに、こんなに一生懸命やると、社長の目が光ってきましたね」

「そうだなぁ..メジカラって、トイレ掃除をすると付いてくるものなんだなぁ」

「じゃぁ、これからクラブに連れてって下さい」

「もう朝だからね..クラブは夜しかやってないから、また今度じゃ〜」

 

さてさて、キエボさんのクラブデビューの日は、いつになることやら..(笑

 

ちゃんちゃん♪

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