ここまでのあらすじ:
「静岡県を有名にしたい」との、知事から相談を受けた楓さん。
早速、色んな企画を提案して知事を喜ばせました。
そして、今日はヒロツのアイデアで「静岡県も楓さんも有名になる筈」の映画撮影の日です。
撮影所に向かうバスの中で、楓さんとヒロツが話しをしています。
「今度の映画って、原作は『ボクとオカンと時々オトン』だったわね」
「うん。でも、脚本兼監督には、今、日本中が次回作を期待している人の周囲の人に依頼したとです」
「周囲の人ってのが気になるけど..でも、今日から撮影なのに台本も貰ってないのよ」
「そういえば、そうでしたねぇ..まぁ、あの人は感性で撮る人だと評判でしたけど..」
「へ〜。感性で映画が出来るとはね。..一体誰なのかしら?」
「ロケ現場に行けば、わかるとですよ...あっ、あそこですよ」
二人を乗せたバスが到着したのは、風光明媚な静岡某所です。
ロケ現場には、すでに沢山の見物人の真中で、スタッフが打合せをしています。
二人がスタッフ達の方に歩いて行くと、それに気づいた、やけにニヤケた男が迎えてくれました。
ヒロツ「この方が、今回の監督さんとですよ。楓さん」
楓さん「あっ..このニヤケぶりは見たことあるわ。あなたは、二谷幸喜さんでしょ」
楓さんに名前を呼ばれた男は、一層ニヤニヤしながら..
男 「二谷幸喜はボクの叔父さんですよ。ボクは甥の「煮足(にたり)香喜」と言います。ヨロシク」
楓さん「あらら..また、パロディ映画にならなければいいけど..」
ヒロツ「本物の二谷さんからは「今は忙しいから代わりに甥を紹介します」と言われたとですよ」
楓さん「でも、このニヤケた人に映画が撮れるのかしら?..心配だわ〜」
煮たり「大丈夫ですよ。ボクの師匠のマイケル・ムーア監督だって無名時代があったのですから」
楓さん「マイケル・ムーアって..誰なの?..知らないわ」
ヒロツ「アメリカで有名なドキュメンタリー映画監督とですよ。と、するとこの映画はドキュメンタリーとですか?」
煮たり「もちろんですよ..でも、一応こんなあらすじなんですけどね、見ておいて下さい」
煮たり監督は、おもむろに「脚本」と書いた一枚のメモを広げました。
「脚本:(楓さんの主演):ボクとオカンと時々オトン」
イギリスの母子家庭に育った(ボク)は、静岡の大学に留学してホームスティをしている。
ホームスティ先の女主人(オカン:楓さん)と、ある日食事のおかずのことで大喧嘩をしてしまう。
このことが原因で(ボク)は、ホームシックにかかってしまう。
困ったオカンは、ボクを励まそうと、ホームパーティーを開いてくれたのだが..
静岡の名産品をふんだんに使ったパーティーは、日本全国に新たな食文化を生み出すのだ。
ヒロツ「脚本って..本当に、これだけとですか?」
煮たり「なんたって、ボクはドキュメンタリー映画ですから、これで十分なのですよ」
楓さん「でも..オトンは誰なの?」
煮たり「あっ、忘れてた..まぁ、撮影中に時々考えることにしましょう」
楓さん「イギリスから来た留学生役の男の子は、どこに居るのかしら?」
煮たり「あそこに居る、緑の髪の青年がそうです。呼んでみましょう..お〜い」
監督に呼ばれた青年は、ピョンピョンと飛び跳ねるようにやってきました。
楓さん「なんか..バッタみたいに跳ねてるけど大丈夫かしら?」
やって来た青年を監督は、隠し持っていた補虫網で捕獲しました。
煮たり「彼がイギリスからやって来た、オダギリス・ジョン君ですよ」
楓さん「あらっ、日本のオダギリ・ジョーとえらい違いだわ」
ヒロツ「なんだか、キリギリスっぽいとですよ」
ジョン「ミナサン、イギリスハ エエトコデッセー。イッペン キテミナハレー」
煮たり「大学の観光学科で学ぶ、本物の留学生を見つけてきました」
楓さん「この映画の趣旨には、もってこいの人物みたいね」
煮たり「さて、食卓のセットも出来あがったようですから、始めましょう」
監督に促されたジョンは、食卓に座りました。
「さて、撮影を開始しましょう」監督は、一枚のカンペーを二人に示しました。
シーン1:食事のおかずのことで大喧嘩になるシーン
「全てアドリブですから、頑張ってください。スタートッ!」監督の合図で、カメラが回り始めました。
楓さんは、ジャンの前にお皿を置き、その上にキュウリと、スイカと、ナスを置きました。
「さあ、お腹いっぱい食べてね」
にこやかに野菜を勧める楓さんにジョンが怒りだしました。
「オカン、マタ ヤサイダケカイッ!ボクハ キリギリスト チャウネンデ〜」
「何言ってるのよ。野菜だけは沢山食べさせるように、ジョンのママから頼まれてるのよ」
「デモ イツモ ナマヤサイヤンカ リョウリシテカラ ダサンカイッ!」
「そんな面倒臭いこと出来んわ〜。嫌だったらママを呼び寄せて作ってもらいなさいっ」
楓さんの剣幕に驚いたジョンは、うつむいてしまいました。そして涙を食卓にポロポロとこぼします。
「ママ〜 モウ オウチニ カエリタイネン〜」ジョンは、か細い声で呟きました。
「あらら..困ったわ〜。ジョンがホームシックにかかっちゃった..」途方にくれた表情の楓さん。
その時、監督の声が響きました。「カァ〜トッ!」
「いやぁ〜いいですねぇ。役者が良いと撮影も順調だ〜。んじゃ、次のシーン行きま〜す」
シーン2:ホームパーティーを提案するシーン
楓さんは、ジョンの肩に手を置いて言いました。
「ジョンちょっと言い過ぎたみたいね。アンタの緑の髪を見てると、絶対に野菜は生で食べると思ってたのよ」
「ヤッパリ..モウイチネンモノアイダ ナマヤサイシカタベテナイカラ カミモミドリニナルワイナ」
「知らなかったのよ〜。じゃぁジョンの為にホームパーティ開くから、許してくれる?」
「オオッ..ホーパーチィハ イギリスデ ママガ ヨク ヒライテクレトッテン。タノンマスワ」
「ジョンも、お友達も呼んでくれば賑やかになるわ〜」
「ソレヤッタラ コレカラヨビニイッテクル〜。デモ...」
「でも?」
「マタ ナマヤサイヤッタラ..イヤヤ〜」
「大丈夫よ。腕によりをかけて、いかにも日本の静岡らしいメニューを作っておくから」
「ワーイ..ホタラ チョックラ イッテキマ〜ス」ジョンは、友達を呼びに家を出て行きました。
またまた、監督の声が響きました。「カァ〜トッ!」
「いよいよ物語は、クライマックスですよ。んじゃ、次のシーン行きま〜す」
スタッフによって食卓のセットに、大きなお鍋と静岡の名産品がいっぱい運び込まれました。
「むふふ..日頃の主婦としての腕の見せ所ね」自信ありげに、楓さんが呟きました。
シーン3:ホームパーティーのシーン
(撮影の合間に、楓さんが静岡県の名産品をポイポイとお鍋の中に入れてしまいました)
やがて、大きなお鍋が沸騰してくると、あたりには不思議な匂いが漂い始めました。
ジョンが、2人の留学生友達を連れて帰ってきました。
ジョン「オカン イマカエッタデー。ショウカイシマス。シシ・ドジョウ ト ペコマロ デス」
楓さん「いらっしゃい。でも二人とも誰かに似てるわね〜。誰だったかなぁ?」
ドジョウ「ボクは俳優の『宍戸錠』に似てるって言われますけど..何か問題でも?」
ドジョウは、ジュルルと唾を飲みこみました。
ペコマロ「ボクは『彦麿』ですけど..何か問題でも?」
ペコマロは、大きな目玉をグルグル回しました。
楓さん「問題は無いけど、グルメレポーターみたいな友達ばかりじゃないの〜」
ジョン「カレラハ グルメレポーター ニシュウショク オ キボウシテヤンネン」
楓さん「あらら、本物の味がわかると言う訳ね。ファイトが湧いてきたわ〜」
ジョン「トコロデ パーチィノ リョウリハ ナンデスカ?」
楓さん「今夜は、静岡名物の『闇鍋』よ〜」
ジョン「ハテ?..ヤミナベ トハ ナンジャロカ?」
楓さん「ん〜。英語では『ブラックホール鍋』だわね。何が入ってるか解らないから楽しいのよ」
ジョン「ホホウ..ソレハ タノシソウヤンカ」
楓さん「でも、ルールがあるので守ってね」
「闇鍋のルール」
鍋の中から箸でつまんだものは、美味しく食べきること。
食べた後は、必ず「美味しい感想」を述べること。
一同「はぁ〜い」
最初は、ドジョウがお鍋に箸を突っ込み、何か「黒く長いもの」を引き出しました。
ドジョウ「ん〜。これは何でしょうねぇ〜。パクッ」
楓さん「それは、浜松名物のウナギなの〜。今日は、お鍋でそのまま姿煮にしてみました〜」
ドジョウ「ウナギをパクつくのもおかしいけど...ん〜。生臭い〜よ〜」
楓さん「ほらほら、食べたら美味しい感想を言わなきゃ」
ドジョウ「ウナギの骨もそのままだし..これを飲み込む時のドキドキ感が堪りませんね」
楓さん「よしよし..素敵なドキドキ感だわ〜..次の方どうぞ」
指名されたジョンが、お鍋に箸を突き立てたら大きな丸い物が出てきました。
ジョン「ン〜。エライオモタイネンケド ナンヤロカ?...パクッ」
楓さん「それは、静岡名物の温室メロンなの〜。やっぱりお鍋で姿煮にしてみました〜」
ジョン「オカン イクラメイブツデモ メロンハ カワ ムカンカイナ。アツッ〜」
楓さん「グダグダ言ってないで、早く感想を言ってよ」
ジョン「クチノ ナカガ オオヤケドシソウデ ノミコムノニ ドキドキシマッセ」
楓さん「うんうん..やっぱりドキドキ感なのね〜..最後の方どうぞ」
ペコマロが、お鍋に箸を突っ込むと..なんと、小さなスリッパが箸につままれて出てきました。
ペコマロ「ん〜。きっと、これはスリッパ形のハンペンかな?..パクッ」
楓さん「そんなの入れた覚えないけどなぁ..あっ、ここに子供用のスリッパが片方有るわっ!」
ペコマロ「こっ、この味は....」
楓さん「どうなの?」
ペコマロ「これは、味の下駄箱やぁ〜。..立派にスリッパの味が染み出てるわ〜」
楓さん「ドキドキしないの?」
ペコマロ「次も順番が回って来ると思うと、ドキドキや〜」
楓さん「あらっ?..大事な魔法の粉を入れるのを忘れてたわ」
何を思いついたのか、楓さんは黄緑色の粉を大きな袋ごと鍋の中に放り込みました。
するとあたりには、刺激臭が立ち込め...みんなの目から涙が溢れ出しました。
ジョン「オカン ナニイレトンネン?」
楓さん「静岡と言えば『お茶』と『ワサビ』を出汁に混ぜるのが常識なのよ」
その時、監督の声が響きました。「カァ〜トッ!」
監督 「いや〜。みんなが感動の涙を流しているいいシーンが撮れましたよ〜」
楓さん「それはよかったわ〜。でも、やってる方は大変なんだから〜」
監督 「楓さん、今思いついたのですが..鍋にこのウドンを入れてくれませんか」
楓さん「あらら..ウドンを煮たりするのね..でも、意味があるのかしら?」
監督 「(ニタリと笑って)後でわかりますよ」
その後も撮影は順調に続きました。
闇鍋の中からは続々と静岡の名産品が出てきたので、ジョン達は四苦八苦しながら食べ尽くしました。
「カァ〜トッ!。終了〜!」監督の声で、撮影は終了しました。
監督 「いや〜。皆さん、ご苦労さんでした。この作品を観た観客は感動の嵐ですよ」
楓さん「そうだったらいいけど..」
ヒロツ「楓さん..映画の題名が少し変わったとです」
楓さん「ほぇ?..どんな題名になったのかしら?」
ヒロツ「監督が『ボクと オカンと ドキドキ ウドン』に書き換えたとですよ」
楓さん「確かにワサビまみれのウドンを食べた時、死ぬかと思って胸がドキドキしたわ」
ヒロツ「さすがに、とてもリアルなドキュメンタリー映画とですよ」
楓さん「お客さんの反応が、とっても気になるわ〜」
ふと見ると、監督とヒロツが何やら相談をしています。
楓さん「ヒロツさん、何を話してたの?」
ヒロツ「いゃ〜。監督に上映方法を頼んできたとですよ」
楓さん「上映方法って...?」
ヒロツ「日本で初めての試みをするとですよ..内容はまだ ヒ・ミ・ツ とです」
ちゃんちゃん♪
楓さんの主演映画「ボクとオカンとドキドキ ウドン」の反応やいかに..?
次回は、全ての企画の結末が明らかになる『結末編』です。