【登場人物紹介】
静どん......占い仙人から「被り物占い」を伝授されたOLさん。
細木数の子先生..あの有名な某占い師の子で、静どんの師匠。
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「あ〜。まだ、お正月のボ〜が治らないわ〜。これって、時差ぼけかしら?」
大きなあくびをしている静どんの携帯電話がなりました。
「ボ〜..ボ〜...」
「あら、電話までボ〜って言ってるわ..って、これバイブレーター機能じゃん」
「はいはい、こちらは静どんですが..どなたですかぁ」
「どなたって聞かずに..あたしの番号を携帯電話に登録しておいておくれよ」
聞きなれた占いの師匠の、細木数の子先生の声が聞こえてきました。
「あっそうかぁ。そうしておけばよかったんだわ。だったら、せんせ〜番号教えてください。」
「何言ってんのよっ、そんなのマニュアルを読んだら登録できるわよ。」
「あの本って、読んでたらすぐに眠くなっちゃうのよね〜。んじゃ、おやすみなさ〜い」
「そこで寝てしまったら、お話出来ないでしょ。ちょっと相談したいことがあるから、お店に来てよ」
「はぁ〜い」
「珍しいわ〜。先生の相談ってなんだろ?」静どんは、ワクワクしながら数の子先生のお店に向かいました。
お店に着くと、勢いよくガラス戸を開けました。
「せんせ〜。相談事ってなんですかぁ〜」
お店の中では、数の子先生がチラシの山を前にして、腕組みをしているではありませんか。
「あらあら、こんなに広告が溜まっちゃって..何を買おうとしてるんですか?」
「静どん、よ〜く考えてご覧。お店の前はTV局なのに、芸能人がこのお店に来ないじゃないの」
「うんうん。そう言えば、あたし達もTVに出て有名になる筈でしたねぇ」
「そうよ。考えてみたら、何一つ目的を達成してないことに気付いたの」
「さすがっ、せんせ〜。それでそのチラシを見てたのね。」
「へっ?..もう、私の考えてることが判ったの?」
「当然ですよ。収入が増えないから特売品だけを買って生活しようとしてるんでしょ?」
「あちゃ〜..それだったら、普通の主婦と同じでしょ。違うわよ。チラシを作ってお客を集めるのよ」
「なるほど〜。それでそんなに、たくさんのチラシの見本を集めたわけですね」
「そこで静どんにお願いなんだけど..芸能人が見て、ここに寄りたくなるようなチラシを作って欲しいのよ」
「お安い御用ですぅ。じゃあ、今から家に帰って、ちょちょいのちょいと作っちゃいます」
「おやっ、そんなに早く作れるの?」
「せんせ〜。今の時代は『すしのこ』って、便利なものがあるんですよ」
「それって...ちらし寿司を作るんじゃ?」
「エヘヘ...まずお腹を満たしてから、作りますから〜」
やがて..なにやら大きな巻物を抱えた静どんが戻ってきました。
「おや、静どんもうチラシが出来たの?」
「いえいえ、チラシはやめて手巻きにしてみました〜」
「大きな巻物って..そっかぁ〜ポスターを作ってきてくれたのね」
「せんせ〜。こんなのでどうでしょう」
静どんが巻物をクルクルと広げると、こんな文字が書かれていました。
『TV局前の美人占い師の店から、とても嬉しいニュースです。
番組制作でお悩みの方は、TV局前の『美人占い師の店』においでませ。
今なら、高視聴率間違いなしの番組作りのヒントを教えます。
これであなたの番組は、高視聴率間違いなし!! オホホホホ』
「ん〜。なるほど〜芸能人を呼ぶより、悩んでいる番組制作者を来させるのね」
「あたし達の番組を作らせる方が、手っ取り早いと思ったの〜」
「じゃぁ、早速お店の前にポスターを、貼っておいてね」
「はぁ〜い」
ポスターを、お店の前に貼り出して、数時間後のこと..
トントン.トントン..「ごめんくださ〜い」と、玄関から声がします。
「はぁ〜い...ガラガラ..」と、静どんが玄関を開けると..
年のいったイタチのような顔をした男が立っていました。
「あらっ?どこかで見た顔のような...」静どんは、首をかしげました。
「表のポスター見たんですけど、番組作りの相談に乗って欲しいのですが..」
そういえばこの男..お店の前のTV局に出入りしていたような..
「TV局の方なら、大歓迎ですわ..でも、あなたは誰ですか?」
「ご挨拶が遅れました。私は『古イタチ』と申します。TV局でプロデューサーをしてます」
「フルイタチ..?...あっ、誰かとお顔が似ていると思ったら『報道ステーション』に出てる人だわ」
「あれは、古館一郎..イタチと名前が付くだけで、よく間違えられるんですよ」
「なるほど..それで、お年寄りだから古が付いてるんだわ」静どんは、とても感心しました。
「いえいえ、名前は子供の頃から変わってませんよ」ちょっと不機嫌そうな古イタチです。
「そんなことより、その相談事なのですが..」古イタチは、話を始めました。
「色々と他局の人気番組を参考にして番組制作をしているが、視聴率が上がらないんです」
「例えば、どんな番組を作ったの?」
「『オーラの泉』って番組があるでしょ」
「おおっ、美輪明宏と江原啓○さんだわ。あの人気番組を作ったの?」
「いやいや、あの番組にあやかろうと思って『オイラの泉』って番組を考えたんです。そしたら..」
「そしたら..?」
「出演に泉元○を決めていたのに..初回からドタキャンされて潰れたんです」
「それって..なんとなく判るような気がするわぁ」
「おかげで、来週の放送枠がポッカリ穴があいちゃってて困ってるんです」
「だったらやっぱり、番組を考えるには独創性が必要ですわ。こんなのどうかしら?」
「これは有り難い。教えて下さい。」
「それは..」
静どんの提案
視聴者は、芸能人と一緒に楽しめる、視聴者参加番組を求めている。
その番組とは..今はやりの「クイズ番組」と「旅番組」を組み合わせたらよい。
クイズ番組で頭の良さを競い、優勝者には好きな芸能人と旅行に行けるというのはどうか?
翌週は、その旅行の様子を放送すれば、視聴率が稼げるのは間違いない。
それを聞いた古イタチ、バシッとひざを叩きました。
「イテテ..強く叩きすぎた..その企画、戴きました」
「決断はやっ!」
「でも、参加する視聴者を集める時間も無いし..」
「ご心配なく..提案者の責任もありますから、あたし達が出ますわ」
「おおっ、すると残るは芸能人だけですね」
「イケメン俳優がいいんだけど..出てくれるかしらねぇ」
「早速、TV局に戻ってヒマな芸能人を捜してみます。また連絡しまぁす」
古イタチは、慌ててTV局に帰っていきました。
それまでの一部始終を、横で見ていた数の子先生は感心して言いました。
「さすがに静どんだわ〜。これで静どんの思い通りになったじゃないの〜」
「エヘヘ..これで私達TVデビューできますよ。せんせ〜」
二人は大喜びです。
「でも、クイズ番組で優勝するって..静どん、大丈夫なの?」
「あっ、忘れてた..あたしクイズは苦手だったの〜」
「あちゃ〜、そんなことだと思ったわ。だったら絶対に優勝する方法があるよ」
「えっ..どんな方法なの?」
「静どんが、お得意の被り物をすればいいのよ..あのね..」
数の子先生は、静どんに話を始めました。
数の子先生の話
ギリシャ神話では、フクロウは『知恵の神様』と言われている。
一羽だけ、このお店のある公園に住み付いているフクロウが居る。
フクロウを捕獲して、静どんの頭に乗せておけば答えが閃く筈。
それを聞いた静どん..
「へぇ〜。そうだったんですか..んじゃ、今から捕獲してきま〜す」
フクロウを探しにお店を出て行きました。
「あとは、あの古イタチさんから、連絡待ちだわ..どれ、お昼寝しましょ」
数の子先生は、店を閉めて昼寝を始めました..
夜になって古イタチから、数の子先生に電話がかかってきました。
「早速、明日収録することになりましたから、お二人でTV局のスタジオに来て下さい」
「はいはい」
古イタチからの電話を切った数の子先生は、静どんに電話をしました。
「静どん、『知恵の神様』は見つかったの?」
「せんせ〜。バッチリですよん。フクちゃんって名付けて、今、手なづけててるとこなの〜」
「よかったわ〜。じゃぁ明日連れて来るのよ」
「あ〜い」
静どんの電話口の向こうから、バサバサ、キイーキイーと、鳥が暴れてる音が聞こえます..
翌日のこと..
TV局に、静どんと数の子先生がやってきました。
静どんが持っているコンビニのレジ袋の中からフクロウのフウちゃんが顔を出しています。
静どん「今日の番組の題名って、何だったかしら?」
数の子「そう言えば聞いてなかったわねぇ..あっ、あの張り紙は?」
数の子先生の指差す方向に、張り紙を見つけた静どんが近寄って見ると..
『クイズIQサボリでドン!』のスタジオはココ
静どん「なんか、題名までパクリまくってる感じだわ〜」
そこにやってきたのは、古イタチ。
「やぁ、お揃いで登場ですなぁ..すぐに収録が始まるから、スタジオに入って下さい」
静どん「でも..共演する芸能人の方に、ご挨拶したいんですけど?」
イタチ「その方だったら、もうスタジオでスタンバってますよ」
静どん「だったら、あたし達もスタジオで、スターバックスコーヒー飲みま〜す」
イタチ「いやいや、そのスタバじゃないんですけど..」
古イタチの案内で、スタジオに入った静どんと数の子先生キョロキョロしていると..
『芸能人席』と書かれた席から、ハコフグの帽子を被った青年が「よろしくお願いしまぁ〜す」と、甲高い声をかけてきました。
静どん「あっ..あれはサカナくんだわ〜。そうでしょ?古イタチさん」
イタチ「それが..あの方はサカナくんに似た、チャカナくんです。でも、内緒にしておいて下さい」
静どん「あちゃ〜。だったら芸能人じゃなくって、芸人さんじゃないの?」
イタチ「なにしろ昨日の今日だから、まともな芸能人が集まらなかったので..でも、優勝したら、本物のの芸能人と旅行に行っていただきますから」
静どん「怪しいものだわ..でも、それを信じて頑張りますわ」
静どんは、そっとフクロウのフウちゃんをレジ袋から出して頭の上に乗せました。
やがて..番組の収録が始まりました。
そこに髪が部分的に白くなった司会者の男が、咳き込みながらカメラの前に出てきました。
「ゴホゴホッ。これはどんな番組なんだ?ゴホゴホッ」
静どん「あらっ、見たことのある人だわ..でも、名前が思い出せないのよねぇ」
数の子「あの人って、日曜日の朝のTVで見たことあるわ..関口宏じゃないの?」
静どん「きっと自己紹介するから判るかも〜」
男はカメラが回り始めているにも関わらず、ブツブツと愚痴を言い始めました。
「出演者がフグとフクロウの帽子を被ってるなんて、俺は魚も鳥も動物は嫌いなのに..ゴホゴホ」
ひとしきり、愚痴を言ったあと..
「出題は私『咳愚痴 ひどし』です。早速『クイズIQサボリでドン!』の始まりじゃ〜」
静どん「なんだぁ、この人も偽物だったわ..」
数の子「こんな知恵があるんだったら、視聴率も偽装したらいいのに..」
【アシスタントのナレーション】
このクイズは、皆さんのサボリ気味のIQを刺激する視聴者参加型の『なぞなぞクイズ』です。
今日の視聴者代表は、占い師チームさん。対する芸能人は魚博士のサカナくんです。
視聴者の方が3勝したら素敵な有名芸能人と『思い出に残るかも知れない一日』を過ごす権利が与えられます
占い師チームさん、頑張ってねぇ〜。
静どんと数の子先生は、思わず「は〜い」と答えました。
咳愚痴「今日のゲストは魚博士のサカナくんにちなんで、水族館の魚に関するなぞなぞです」
「これって、絶対に視聴者に優勝させない企画じゃないの?」と、静どんが小声で呟きました。
「大丈夫よ。フウちゃんがいる限りはね」数の子先生は自信ありげに答えました。
静どん「でも、あのサカナくんの帽子って..本物の魚っぽくないですか?」
「そう言えば..」数の子先生は、少し不安な顔になりました。
「まず、第1問..
水槽の中で、ネコのようにニャァニャア鳴いている魚とは何でしょう?」
静どんの頭の上で、フクロウのフウちゃんが目をバチクリしました。
その瞬間、答えが閃いた静どんが答えようとすると..
「はいっ..ネコザメちゃんで〜す」なんと、サカナくんが先に答えてしまいました。
咳愚痴「正解ですっ..まず1問目は芸能人が取りました。その調子です」
数の子「静どん、サカナくんの帽子のハコフグが笑ってるわよ」
数の子先生が言うとおりハコフグがお腹をよじらせてピチピチ跳ねてます。
静どん「何か不調だわ〜。次の問題はあのハコフグを見てよっと」
「次は、第2問..
水槽の中で泳ぐ魚の中には、とても謙虚な魚がいます。
それは、他の魚の泳ぐ進路を邪魔しないという、その魚とは何でしょう?」
サカナくんの頭の上で、ハコフグがプ〜と膨れると..
サカナ「はいっ..フグです..フグと言えば毒(退く)ですから〜」
咳愚痴「またまた正解です。あと1問で芸能人の優勝です。頑張りましょう」
静どん「わかったわ。あのハコフグが、サカナくんに答えを教えているんだわ」
数の子「だったら、あのハコフグを何とか出来ないかしらねぇ〜」
静どん「こうなったら、フウちゃんにお願いして...ボソボソ」
静どんにコッソリ指示されたフクロウのフウちゃんは、ハコフグ目指して飛び立ちました。
ガシッ!と鋭い爪で、ハコフグを掴むと、スタジオのどこかに飛んでいってしまいました。
「きゃぁ〜。ボ、ボクのハコフグちゃんが〜」サカナくんの叫び声が響きます。
咳愚痴「ゴホゴホッ。お〜、魚も鳥も居なくなって司会もやり易くなったぞ。ゴホゴホ」
静どん「これで邪魔者はいなくなったわ」
数の子「でも、静どん。『知恵の神様』も居なくなったけど大丈夫なの?」
静どん「う〜ん。そうだ」
静どんは、コンビニのレジ袋を取り出して..なんと頭から被ってしまいました。
数の子「一体どうしたんだい。静どん、まるで三蔵法師みたいだわ」
静どん「エヘッ、これがフクロウの代役をしてくれると思うの」
数の子「なるほど..それってレジ・フクロウって訳ね」
静どん「うん。さぁ次のクイズさん、いらっしゃい」
「次は、第3問..
魚の中には、とても力持ちが居るそうです。
水に沈んでいる石など平気で持ち上げるその魚とは?」
静どんが被ったレジフクロの耳がパタパタと動きました。
静どん「はいっ。それは石を持つから..イシモチという魚です」
咳愚痴「あらら..視聴者代表が初の正解です。サカナくん、どうした?」
サカナくんは、すっかり元気を失っています。
「次は、第4問..
サカナくんに、特別サービス問題です。
外国の国名が付いた名前の魚とは?」
サカナくん「ん〜と。...アメリカザリガニかなぁ」
咳愚痴「それは、魚ではありません。解答権は視聴者代表へ移ります」
「それは..モロコ(モロッコ)でしょ」静どんは勢いよく答えました。
その瞬間、あまりの勢いに頭に被っていたレジフクロが、飛んでいってしまいました。
咳愚痴「正解ですっ。お〜と、これで2問対2問です。最後の1問で優勝者が決まってしまいますよ」
「最終問題です..
水族館の中で、とても気合いが入った魚を見つけました。
さて、その気合いが入っている魚とは?」
サカナくんは、もう答える元気も失ってしまったようです。
レジフクロを失った、静どんもキョトンとしています。
「ここで答えられなかったら、優勝できないのに〜。せんせ〜どうしよう?」
静どんの悲鳴に、数の子先生が「何でもいいから、答えるのよっ」と怒りました。
そのアドバイスで決心した静どん..思いきって解答者ボタンを押すことにしました。
静どん「答えがわかんないけど押しちゃえっ..え〜い(ポン)」
咳愚痴「占いチームさん正解ですっ。いつも気合いが入ってる『エイッ』で、その魚はエイでした」
静どん「あらっ、当たっちゃった〜」
数の子「静どん、知ってたんじゃないの〜」
静どん「ううん。わかんなかったわ。せんせ〜が押せって言ったから押しただけなのに」
数の子「まぁ、それが静どんの強運なのよ。あたしはその運に賭けただけよ」
お互いを称えあってる二人に、司会の咳愚痴がやってきました。
咳愚痴「ゴホゴホ..視聴者代表が勝つなんて、制作者の意図がはずれちまったね」
静どん「やっぱり、そうだったのね。でも、おあいにくさまでした〜」
咳愚痴「はい、それじゃぁ、この紙に一緒に旅行に行きたい芸能人の名前を書いてね」
静どん「書いたらどうなるの?」
咳愚痴「なんたって芸能人のスケジュール次第だから、後日、迎えに行かせます」
静どん「今回は、せんせ〜の好きな芸能人の名前を書いてね」
数の子「あたしが書いて、いいのかい?静どん?」
静どん「だって、旅行編でもTVに映るんでしょ。あたしはそこでアピールするわ」
数の子「だったら..コチョコチョ..この人でお願いします」
数の子先生は、咳愚痴に名前を書いた紙を渡しました。
古イタチが..
「まさかと思ってたけど、本当に優勝されちゃった」と、残念そうにやってきました。
静どん「これってきっと、見てる人はハラハラドキドキだから、視聴率上がるわよ〜」
イタチ「二部構成で放送しますからね。次の旅の収録も頑張ってきて下さい」
静どん「ド〜ンと、まかしちゃって下さい」
ちゃんちゃん♪
さて、数の子先生が書いた芸能人の名前とは..
そして旅先で起こる事件とは..次作をお待ち下さい。