第二回『銀幕日記』

『ウエディング・シンガー』


1998年アメリカ映画
原題;WEDDING SINGER
監督;フランク・コラチ
主演;ドリュー・バルモア、アダム・サンドラー

うだつの上がらない二人が引かれ合い、真実の愛に目覚める姿に、観客は安心するのだろう。こんな奴等がうまく行くなら、俺だって、私だってという論理である。ちょっと結婚に焦っている小娘が、金と地位のある軽率男を振って、しがない純朴野郎と一緒になるという古典コテンのストーリー。しかし嫌いじゃねえんだよなあ、この手のラブロマンス。分かっちゃいるけど、感情移入してしまう。一番弱いジャンルなので、大甘の二重丸。

「E.T.」の後、アル中、薬中の人生経験がドリュー・バルモアをどのように成長させたのか知らないが、近来稀に見るカマトト娘の登場である。近作では随分洗練されてきたようだが、この作品を観る限りにおいて、スタイルはあまり良くない。好みの問題だろうが、全体的にぽっちゃりしていて(ちんちくりんな体型)、ポヨポヨ歩く姿は田舎娘そのものである。さりとて美声かというと、お世辞にも魅力的とは言えないようなしゃがれ声。

ところがである。初々しくて良いのである。その長所とは到底思えないところにむしろ、安心感さえ感じてしまう。さらに物腰は軟らかく、上品な育ちの良さまで漂わせている。朝の連続ドラマに出てくるような彼女は、はすっぱな娘を見慣れた俺に「世の中、捨てたもんじゃねえな」とまで思わせた。

この作中でのキスシーンは、評判に違わずなかなかいい(なんでもその年のMTVムービー・アワードのベストキス賞を受賞、同主演の「25年目のキス」もおそらくこの流れの企画だろう)。ここでは予行練習のつもりでしたキスが、二人に自分達の感情を気付かせる重要な場面になっている。アメリカ人にとってのキスなんて挨拶みたいなものだと、これまで勝手に思い込んでいた。確かにそうしたスキンシップの表現はあるようだが、神経質な外人も多いらしい。生活習慣が違うとはいえ同じ人間のこと、当たり前だ。

ボンクラ小僧がTV「サタデーナイト・ライブ」での当たり役という、アダム・サンドラー。主人公のウエディングシンガーを演ずる。これまで世評では随分と馬鹿にされてきたらしいが、この作品で一挙に評価を高めたらしい。芝居はお世辞にも巧いとは言いがたい(特にアップになったときの演技は、ひどくもどかしい)が、「天は二物を与えず」。使い方は逆だがこの男、歌がなかなか上手い。この役だからこそのキャスティングと思われる(なんとグラミー賞の候補に、2度もノミネートされたことがあるらしい)。眠たげで表情が乏しい分、歌う姿はとても魅力的だ。幅のある役柄はこなせそうもないが(もしかすると、これだけ?)、彼のキャスティングは大成功だった。

全編に80年代のヒット曲が流れ、さほど洋楽を聞かない俺にも懐かしく楽しめた。

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