第三回『銀幕日記』

『メリーに首ったけ』


1998年アメリカ映画
原題;THERE’S SOMETHING ABOUT MARY
監督;ピーター&ボビー・ファレリー
主演;キャメロン・ディアス、マット・ディロン、ベン・スティラー

結婚するなら「男はつらいよ」を観に行ったときに、同じところで笑える人をかみさんにしなさい。親戚のおばさんは、呪文のように何度も俺に話してくれた。例えはともかくも、さしてピントはずれじゃなかったことに、最近になってようやく気付いた。

どういった場面で笑うかは、その人の教養や感性、育った環境など、根本的な部分に大きく左右される。いくら気持ちが良くても、ここぞのタイミングで一緒に笑えない奴とは結局のところ、心底分かり合うことはできないのではないか。極論を言えば、男女にかぎらず相手を信じられるかどうかは、同じ笑いを共有できるか否かに依ると思う。

そこでこの作品だが。ちっとも笑えない。

高校時代に知り合った学校のアイドルが忘れられず、13年後に探し出して追っかけ回すというお話。観た後には、暴力的に甘いアメリカ菓子を、むりやり頬張らされたような嫌な感じが残る。いくらキャメロン・ディアスがいい女だからといって、言い寄る男すべてが変質者か詐欺師というのはあんまりである。凄く良心的に取るとマリリン・モンローのピンクコメディ路線を狙ったのかもしれないが、完全に失敗している。美形のAV女優がするような役柄にはほとほとうんざりさせられた。エロ目的で観るには露出度が少ないし、質の低い笑いを求める人だけがビデオで借りれば良いだろう。おそらくコメディ好きのアメリカ人にも軽蔑される作品だと思う。

この監督、年子の兄弟らしい。確信犯で、これまで何本かこの手の作品を作ってきたという。俺は下品なものも、ナンセンスなことも決して嫌いではない。むしろ好きな方かもしれない。しかしである。これはあまりに品がなくて、下らない。「ジム・キャリーはMR.ダマー」が映画初監督作品である。おそらくジムを通じて、無理矢理ディアスに出演を取り付けたに違いない(彼女の映画デビューは、ヒット作「マスク」の歌手役)。彼女も哀れだが、お人好しすぎる。こうして書くと、俺が彼女の熱烈なファンのようで恥ずかしいが、気の毒なだけである。ラストには少し気のきいたシーンもあるのだが、わざわざエンドロールで説明的な部分を流したりしている。いやらしいというか、姑息な感じがつくづくいただけない。

これだけけなしておいて面目ないが、実はワンシーン、不覚にも笑ってしまった。足の悪い設定で松葉杖を使っているリー・エバンスが、床に落ちた鍵を一人で拾おうとあたふたする。かなりベタなシーンだったが、そのパフォーマンスは面白かった。好みの問題だが、好きな部類の芸である。この映画が評価されるとすれば、その場面のみである。

笑いは文化だ、とつくづく思った。

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